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チャプター 20:憎悪

 とある住宅街の一角に建つ古めかしいアパート。その二階、一号室に籠田隆史は住んで

いた。薄暗い室内には淀んだ空気が充満しており、食べかけのインスタント食品や弁当に

虫が集る。

 一間の最奥に、籠田隆志(かごたたかし)は居た。

「あのアマ…………ちくしょう。なめやがって」

 念仏のように小言を呟く籠田は、目が血走り、顔が脂汗にまみれている。

 彼は大学在学中からプロのプレイヤーとして期待され、近距離の戦闘では抜群の勝率を

誇っていた。だが、籠田の自信を粉々に打ち砕いたのは、他でもない、菜々と瑞希のコン

ビ。何気なく素人いびりにやってきた籠田が喫したその一敗を境に、思い切りの良かった

彼のプレイはなりを潜める。そして、絵に描いたような転落人生を歩み、今となっては、

アルバイトで生活費を稼ぎながら就職活動に暮れる日々。

 しかし彼は、プロの世界を未だ諦めていなかった。その為には、菜々と瑞希に対する恐

怖心を払拭する事が最優先事項。もはや手段は選んでいられない。否、選ぶ余裕が無かっ

た。

 籠田の操作する端末はHTMIではなく、通常のパーソナルコンピュータだ。インター

ネットを使い、いかにも黒いサイトを巡回する。それら全てが、ネットワーク犯罪に関係

のある情報交流サイトだった。企業から顧客情報を盗む、特定のサーバーにバックドアを

仕掛けるなど、明らかに違法行為と言える書き込みが並んでいる。

「これは…………こいつだ」

 その中で籠田が目をつけたのは、コンピュータウィルスを用いたネットワークを持つ集

団の書き込みだった。堅牢なセキュリティを突破してきた実績を持っているらしい彼らは、

次にHTMIシステムを狙っていると書かれていた。

 現代の法律では、HTMIシステムに対して行う違法な通信には、重罪が課せられる事

になっている。人の脳と直結している一連のシステムが普及するに当たって新たに設けら

れた法律だ。それだけの犯罪行為に躊躇するのが常人である。

 しかし籠田は迷わなかった。チャンスとばかりにチャットルームへ入り、相手を挑発し

始める。もはや籠田の頭は菜々と瑞希に復讐する事で飽和しており、正常な判断などでき

よう筈もなかった。

「くく…………いいぞ」

 現実世界でのコミュニケーションが不得意な籠田も、仮想世界では饒舌だった。キーボ

ードを調子良く叩き、言葉巧みに相手の思考を誘導する。

「よし……よし!」

 いとも容易く挑発に乗ったハッカー達は籠田の思惑通り、HTMI社を次の標的にする

と宣言した。そして、成功の証明として医療用のアクセスキーを渡すよう話をつけた籠田。

彼らは自分の技術をひけらかす為や、スリルを目的として行為に及んでいる。籠田にとっ

て、御しやすい人間を口車に乗せる事は容易かった。

「フヒ……ヒヒヒ…………あとは…………」

 プログラム作成用のアプリケーションを起動した籠田は、とりつかれたようにキーを叩

き始めた。

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