表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蹴球に集い  作者: 釜揚げ製菓
再びの決意
9/46

揺らぐ決意

 

 ――思いがけない彼の言葉に、僕は食べかけの肉まんを地面に落としそうになった。


「おっと……! ほら」


 ギリギリのところでそれを拾い上げ、彼は僕の手の中にそれを戻す。ここで僕は、意識を戻した。


「えっと……それはどういうこと……?」


 小さな声で、元気なく問う僕に彼はそのままの意味だと言い返した。


「いやさ、サッカーって一人よりみんなでやった方が面白いんだよ! ほら、おとといグラウンドでみんなしてやってただろ?」


 彼はおとといグラウンドで行われた、練習試合の光景を思い返していた。僕は途中で逃げ……立ち去ったけど、彼はあの後もずっと見ていたらしい。


「サッカーのことはまだよくわからねえんだけどよ、それ見てて俺、めちゃくちゃ熱くなったんだよ! 初めてお前と会ったときみたいに!」


 城島くんは突然に立ち上がり、左足を後ろに振り上げ、前に蹴り上げるという動作をした。大気を切り裂くような音が、目の前からした。城島くんはにかっとした顔を見せる。


「お前となら、もっと熱くなれそうな気がするんだよ! だからよ、俺と――」


「ごめん、城島くん……」


 城島くんの言葉を止めるように、僕は自分の言葉をかぶせた。僕は静かに立ち上がり、城島くんに一言、口にした。 



「僕はもう、サッカーはやらないんだ……」



 僕はそのまま、城島くんの横を通り過ぎ、公園の出入口へと向かった。背後から城島くんが何か言いかけていたが、僕は聞こえないようにわざと足音を大きくたて、逃げるように走り去った。


 これでいいんだ……。これで……! 


 自分の決意は変えない――。僕はそれをちゃんとしただけだ。――だけど、僕の心の中には、「何か」が生まれてきていた。


 この日を境に、僕の決意は小さくながらも揺らぎ始めていた――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ