揺らぐ決意
――思いがけない彼の言葉に、僕は食べかけの肉まんを地面に落としそうになった。
「おっと……! ほら」
ギリギリのところでそれを拾い上げ、彼は僕の手の中にそれを戻す。ここで僕は、意識を戻した。
「えっと……それはどういうこと……?」
小さな声で、元気なく問う僕に彼はそのままの意味だと言い返した。
「いやさ、サッカーって一人よりみんなでやった方が面白いんだよ! ほら、おとといグラウンドでみんなしてやってただろ?」
彼はおとといグラウンドで行われた、練習試合の光景を思い返していた。僕は途中で逃げ……立ち去ったけど、彼はあの後もずっと見ていたらしい。
「サッカーのことはまだよくわからねえんだけどよ、それ見てて俺、めちゃくちゃ熱くなったんだよ! 初めてお前と会ったときみたいに!」
城島くんは突然に立ち上がり、左足を後ろに振り上げ、前に蹴り上げるという動作をした。大気を切り裂くような音が、目の前からした。城島くんはにかっとした顔を見せる。
「お前となら、もっと熱くなれそうな気がするんだよ! だからよ、俺と――」
「ごめん、城島くん……」
城島くんの言葉を止めるように、僕は自分の言葉をかぶせた。僕は静かに立ち上がり、城島くんに一言、口にした。
「僕はもう、サッカーはやらないんだ……」
僕はそのまま、城島くんの横を通り過ぎ、公園の出入口へと向かった。背後から城島くんが何か言いかけていたが、僕は聞こえないようにわざと足音を大きくたて、逃げるように走り去った。
これでいいんだ……。これで……!
自分の決意は変えない――。僕はそれをちゃんとしただけだ。――だけど、僕の心の中には、「何か」が生まれてきていた。
この日を境に、僕の決意は小さくながらも揺らぎ始めていた――。