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らいと☆ふぁんたじー  作者: 神城 奏翔
旧らいと☆ふぁんたじー
7/25

第7話 転校生の秘密 part 2

話のキリがよくなったときにまとめて更新することに決めました。


なので、更新スペースがちぐはぐですが、ご了承くださいませ。



「……で、なんでお前はついて来るんだ?」

 全過程を終え、学生寮に帰ろうとしていると、後ろから誰かがついて来ているような気配を感じた。その気配は、まるで自らの意思で悟られないように小さくしていて、すぐにでも消えそうな儚かった。

 ……自らの意思で気配を消すなんて技術をウチの学校で使える奴なんて片手で数えられるぐらいしかいない。だが、そんなやつらと俺は知り合いではない。なので必然的に誰がこっそりついて来ているのか、わかっていた。

「俺に察知されないように気配まで消して……。お前は何を考えているんだ? 雪羅」

「……いつから気づいていたのですか? 完全に気配を消せてたと思うのですが」

 そう――、確かに雪羅の気配は見事に消えていた。

 普通の人間なら察知することは出来なかっただろう。


 ……普通の人間(・・・・・)だったなら。



「確かにな……。お前の気配は微塵も感じなかったよ。けどさ、俺には俺だけにしか備わっていないある能力があるんだぜ?」

「夢幻光源ですか」

「ああ」

 この力には、色々な能力が元から備わっている。

 基本魔法には、そんな多彩な能力は備わっていない。魔法使いが特訓に特訓を重ねて、頑張って強くなるしかない。だが、異常魔法を使う魔法使いは、それに該当しない。

 だからこその異常(イレギュラー)、本来なら存在してはいけない能力。

「……便利なんですね。その能力」

「そうでもないさ」

 一見、何でも勝手にしてくれる最強の能力だと思える。

 だが、真実は真逆だ――。

「……この力は使えば使いすぎるほど、体を酷使する」

 前は気を失っただけで済んだが、今度はどうなるかわからない。

「それじゃあ、その力を紅帝学園の人達に悪用されたら――」

「間違いなく俺は死ぬだろうな」

 生まれたときから持たされた過剰で、理不尽な魔法。

 それを俺は、忌まわしさからこう呼んでいる。



“呪われた魔法”



 少しでも加減を間違えると街を――自分を破壊し尽くす破壊の魔法。

 捨てることも、誰かに譲ることも出来ない。選ばれた人(いけにえ)しか使えない。

「だからこそ、決心したときしか使いたくないんだ。……俺が今、使わなくてどうするって時しか、ね」

「……ごめんなさい」

 夢幻光源の話を終えた直後、雪羅は何故か謝ってきた。

「どうして謝るんだよ……」

「私のせいで、その能力を使わせてしまって」

 紅帝学園からの刺客のときのことを話していることは、すぐにわかった。

 あの少女は、雪羅に異常なまでの執着を持っていた。

 事前に話し合って和解していれば、俺に力を使わせることもなかったと言いたいのだろう。

 正直、あの子のときは、一心不乱で他のことを何も考えていなかった。

 だけれど、能力を使ったことを後悔していない。

 あれがあったおかげで今の雪羅がいて、今の少女がいるのだから。

「……バカじゃねぇの」

「えっ……」

 目の前で反省しなくていいことを深く反省して、いかにも泣きそうになっている少女の頭上に手を乗せ、優しく撫でる。

「あれは、俺が納得して使っただけの話だ。……あのままじゃ、どちらにせよ先に潰れていたのは彼女のほうだったしな。いい機会だったんじゃないか」

 雪羅がいなかったとしても、彼女はプレッシャーで押しつぶされていただろう。

 逆にあれがあったおかげで彼女もレベルアップしたはずだ。

 そう考えると、俺が力を発揮した意味もあるのかもしれない。

「……だから、そんなに気にするな」

「御影様……」

 恥ずかしい行為をしていると自覚しているため、彼女の表情をまともに見ることが出来ない。だから、どんな表情をしているのかわからないが、笑顔だと嬉しいなと思う俺であった。



(……力を使うと決めたのは、俺なのだから。キミは気にしなくていいんだよ)



「……こんなところで転校生ちゃんと逢引ですか? 御影君」

 突如、屋上に響いた女性の声――。

 ついさっきまで聞いていた慣れ親しんだ声。

「音夢先生……」

「校内での逢引は関心しませんね」

 出席簿を片手に俺達――もとい俺を叱る音夢先生。

「逢引じゃありませんよ。慰めてただけです」

「……だとしてもです。不順異性交遊をするのであれば、学生寮のほうでどうぞ」

「そっちだといいのかよ!!」

 先生のボケに全力でツッコンでしまう。思わぬボケが入ったので、焦ってしまい敬語をつけるのすら忘れてしまっていた。

「私の担当区域は、校内ですから。学生寮で何かあったとしても私は知りません」

 アンタ、それでも教師なのか……。

 そう思わざるを得ない言動の数々に、俺は苦笑する。

「……まあ、それは置いておいて。あなた達に聞きたいことがあるのでした」

 音夢先生が俺達に聞きたいこと……?

 該当する事がないため、揃って首を傾げる俺達。先生に事情聴取をされる覚えがないので、余計に怪しく思えてくる。

「昨日――あなた達が戦闘の途中で破壊したとされている屋上の損傷についてです」

「…………」

 それがあったか。

 校内で事件が起こった場合の責任者は、先生だったな。

 屋上の一部が破壊されたんだ、それも傷がつくのすら怪しいとされていた素材の建築物に……。その事件の当該者が俺達なんだ。先生としては心配で聞いてきているということかな。

「それがどうかしましたか?」

「いえ、その傷なのですが、色々とありえないことがありましてね」

「……ありえないこと?」

「ええ、お二人も知っている通り、この学校の壁や床には特殊な素材が使われています。普通の魔法なら弾くような特殊な素材を――」

 そう、この学校の至るところに防衛装置がつけられている。

 それがウチの学校が強いとされている由縁。何事にも防御が強いのだ。中からじゃないと、この装置を解除することが出来ない。

 まさに絶対防御。

 ……だったのだが、何者かの魔法によってその一部が破壊された。

 塵すら残ることなく、まるで最初から姿がなかったかのように消えていた。

「結界が中から解除されたわけではない。つまりその防御装置をも凌駕する力……」

「……何が言いたいんですか?」

 言ってる内容が理解出来ないのか、雪羅は先生に聞く。が、俺には聞かずとも先生が何を言いたいのかわかった。

「……率直に言います。神が人に与えた過剰な力――“異常魔法”について知りませんか」

 ほら、きた。

 元から音夢先生は、魔法についてありえないほど執着していた。

 一つの辞書の中身を頭の中で覚えているんじゃないか。と言えるぐらい魔法について詳しい。そんな先生が、魔法を弾く素材を貫通する、なんてバカみたいな威力を誇る魔法の存在の尻尾を掴んだらどうなるか予想出来た。



「……っ!?」

 俺のことを言われているんだと察知した雪羅が、俺を護ろうと戦闘態勢を取る。

「……よくわかりませんね。自分はこんな風に雷しか扱えませんし」

 見せびらかすように両手の指を自分の前に持ってきて、指と指の間に電気を流す。

「雪羅は雪羅で、氷属性の魔法しか使えませんから。勘違いなんじゃありませんか?」

「そんなはずはないわ。あの素材の強度から考えて、それはない」

「なら、襲撃者がその能力を持っていたか、誰かが中から解除したんじゃないっすか」

 目の前にいる俺達が本当に異常魔法と関わりがないことを悟ったのか、音夢先生は「おかしいなぁ……、本当にあれは異常な魔法だったんだけど」と言いながら学校に帰っていった。



「……ふぅ、やっと行ったか」

 あの先生を撒くのにも一苦労だな。

 魔法の勉学をするのはいいけども、異常なまでの執着は駄目だな。

 ……おっとりで有名な、あの音夢先生があんなふうに興奮していたんだ。

 異常魔法は、人を狂わせることが出来る破壊の魔法だな。

(冗談で言ってた呪われた能力というのも、あながち嘘ではないみたいだ)

 またしても迷惑をかけたと思っているのか、悲しそうに目を伏せる雪羅。

(……まったく、あの人は話をややこしくするな)

「あー、まぁ、気にするなよ。さっきから言ってる通り、俺が勝手にやったことなんだからよ」

「……う、うん」

 ――あ、ダメだ。

 これはテンションが上がらないパターンだ。

 短い間しか付き合っていないけど、こいつの性格は段々とわかってきた。

 何でもかんでも自分のせいにしやすいやつだ。

「そ、それよりもさ、お前のことを教えてくれよ」

「私のことですか……?」

「ああ、お前は俺のことある程度は知ってるだろ? だけどさ、俺は一切、雪羅のことを知らないからさ。なんか、それって理不尽じゃないか」

 ただ単に自分のことだけを知られているという感覚が嫌だから、雪羅のことを聞くという。ある意味、最悪な方法を取る俺。

 話したくない過去があるかも知れない。だけど、俺はそんなことは気にせず話してくれとせがむ。

「……別にいいですけど。面白くありませんよ?」

「別にいいさ。話に面白さは求めてない、ただ在るがままの話をしてくれるだけでいい」

「……わかりました。では、話します。私の過去話を――」




雪羅の過去とは一体……


といったところで、今回はおしまいです。


次回は明日に更新します。

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