第3話 光の始まりは突然に…… part 3
今更ですが、らいと☆ふぁんたじーの“らいと”は軽いじゃなくて光です。
「……なんで、誰にも言っていない能力をお前が知っているんだよ!!」
俺が手にしている魔法を当てられたからだ。
身内にも、学校にも、誰にも言っていない特殊な魔法。
その特殊な魔法の一つが、光を操る魔法。
――つまり、俺が手にしている魔法というわけだ。
「その質問に答えるのは無理ね。アタシは、アンタをつれて来いって命令されてるだけ。その命令の詳細や、アンタをどうやって使おうとしてるのか目的すらわかんないわ」
光を操って何をするつもりなんだ……、紅帝学園は。
「……まぁ、計画の一端を知ってすぐに転校した女はいるけどね」
転校生を睨むように見つめる少女。
計画の一端を知ったってことは、転校生は俺が狙われる理由を知っているのか?
せめて狙われている理由を知りたい俺は、転校生に期待するような視線を送る。
「そんなの知りませんよ。私の家系は代々、光の使者を護るように言われていますので」
転校生は俺を庇うかのように、前に出てきて戦闘が出来る体制を取る。
それを見て少女は舌打ちをしつつ、手の平から炎を作り出す。
「……チッ、めんどくせぇ。夢幻光源を置いて、さっさと退けばいいものを」
「私は御影様の護衛なのです。主を置いて逃げるわけないでしょう」
「ああ、もう。害虫は、さっさと消えなっ!!」
少女はとてつもなく大きい炎を作り出し、俺達目掛けて投げる。
(なんだよ、これ……。大きさが桁違いじゃねぇか)
あまりの大きさにパニックになる俺だったが、転校生は動揺することなかった。
「御影様、下がって」
「……あ、ああ」
このままでは邪魔になると、判断することが出来た俺は転校生の言う通りに下がっていく。
女の子に任せて逃げるというのは、恥ずかしいことだが仕方ない。
この学校のランクと、紅帝学園の圧倒的な差を知ってしまったのだ。
今でも俺の体は恐怖のために微弱ながら震え続けていた。
「……凍りつけ」
冷たい声音と共に何かを切り捨てるように腕を横に振る。
――それは一瞬のことだった。
――目の前にいた俺ですら、何があったのか理解することが出来なかった。
「う、うそだろ……」
俺達に迫ってきていた炎が完膚なきまでに凍り、屋上一面の床や壁などもその被害を直に受けていた。
「な、なんでアタシの魔法が……、アンタの魔法なんかに」
自信満々だった少女は、たった一回……転校生に凍らされただけで折れていた。
「言ったでしょ。私の目的は御影様を護ることだって」
「それじゃあ、紅帝学園での成績は……」
「そう……。あんな学校で良い成績を取っても意味がないもの。手を抜くに決まってるわ」
一見、真面目かと思っていた転校生、実はさばさばした性格だったらしい。
顔見知りの相手に、実は手を抜いていたという発言までした。
目的に関わりがないとそれ自体はどうでもいい。そんな気難しい女の子。
それが今までの印象から、がらっと変わった転校生への印象だった。
「……それじゃ、アンタに勝てたから喜んでたアタシって」
「ええ、無意味な歓喜ってやつね」
「うわぁ……」
転校生の無慈悲な台詞を聞き、密かに少女に同情していた俺であった。
「……これに懲りたら、さっさと学校に帰りなさい。それともここで死にたい?」
圧倒的な力の差――。
自分との力の差が大きければ大きいほど、戦いたくない気持ちになる。
勝ち目のない戦いなんて、どうしても戦わないといけない理由がなければしたくない。
だが、転校生の圧倒的な力を見たはずの少女は一歩も退くことがなかった。
「……ふざけんじゃないわよ」
逆に転校生の言葉が気に障ったのか、キレた。
「何が手加減してあげてた、よ。そんな理由で私は退くわけにはいかないのよ!!」
先ほどよりも大きな炎を創り出す少女。
すでに少女の体は埋めつくされ、魔法は暴走し始めていた。
「……御影様、下がってください」
力を暴走させるまで魔力を解放するとは思っていなかったのだろう、転校生は焦った様子で俺を下がらせようとする。
『……なんで、なんで努力もしていないあの子が私より、強いのよ。私は一生懸命、頑張って強くなったのに、どうして……』
だけど、少女の嘆きの声が、俺に聞こえてきた。
光を操る者だけが使える能力なのかわからないが、たまにこういう現象はあった。
クラスメイトが落ち込んでたときや、幼馴染が困っていたとき。
負の感情が発生しているときに、頻繁になっていた。
「……辛かったんだよな。努力をしている自分が、何もしていない人に負けていることが」
頑張りやな少女の気持ちを理解することの出来る俺は、自分の……俺が感じ思っていることを伝えるために前に出ながら話す。
「御影様っ!?」
自分が言った言葉と反対の行動をした俺に、転校生は驚愕する。
護る対象が先陣切って、敵に向かっていくのだ。
慌てないやつがいるのであれば、それは人ではない。感情のない作り物だ。
「でもな、……だからと言って、制御出来ない力で押しつぶそうとするのは間違ってる。それで勝ったとしても、後に残るのは後悔だけだ!!」
『何も知らないやつが偉そうなことを言うなーーっ!!』
少女の本音――。
何も知らないやつに説教なんてされたくない。
(……本当にその通りだ。自分を理解していないやつからの説教なんて辛いだけ)
「だけどな、これだけは言わないといけないんだ」
何も知らない俺の言葉なんて聞きたくないのか、少女は俺に向かって膨大な炎を向かわせてくる。
「……お前の世界が、1人や2人で回っていると思ってんじゃねぇ!!」
感情の高揚と相合って、体内に存在する力が増幅される。
――創造するのは、たった一人の少女を救うための武器。
「世界には、お前のことを理解してくれるやつもいる」
――悲しみにくれている少女を護る楯。
「だから、勝手に嘆いているんじゃねぇ!! 【アイギス】」
何者も寄せ付けない伝説の楯――アイギス。
手にしてみると、一層、伝説の武器であることがわかる。いかなる邪悪なものも寄せ付けないオーラを纏っていた。
その楯を用いて、少女の想いが篭もった攻撃を受け止める。
『う、うそでしょう!?』
「くっ……」
膨大な力を楯一つで受け止めているので、神経が擦り減り、手に力が入らなくなっていくのがわかる。
『な、なんで、そこまで……』
「……決まってんだろ」
男がここまで必死になる理由なんて、一つしかねぇよ。
「お前を理解してくれる人がいないって言うのであれば、俺がお前を理解してやる!!」
目の前で苦しそうにしている少女。
彼女を助けたい、たったそれだけの話。
そんな小さな理由で男は、こんなにも必死になれるんだ。
精一杯の感情を込めた言葉を放ったと同時に、意識が飛んだ。
もう一本……は、無理かなぁ