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らいと☆ふぁんたじー  作者: 神城 奏翔
旧らいと☆ふぁんたじー
19/25

第19話 優等生もどき


「風宮ーーっ!!」

 教室に入るための扉をガンッと音が鳴り響くまでに、勢いよく開ける。

 すぐにでも元凶を滅ぼしたかったので、これまでの道程を全力疾走した。そのため、まともに息は整ってないし、喉はガラガラだ。

「よう、御影か。おはよう」

 声の発信源を探り、必死に見回す。

 いつもと違う俺の様子にクラスメイト達は焦っていた。

 またしてもこの二人は喧嘩するのか。といった感じだろう。だが、俺の目的はそんなものではない。

「……テメェ。雪羅に何を吹き込みやがった」

 この言葉だけで何か思い当たる節があったのだろう、あるいは最初からこうなると予想していたのだろうか。腹を押さえながら爆笑する。

「氷室、本当にしやがったのか……。まぁ、お前に一途だったからするとは思ってたが」

「……ホント、焦ったぞ」

 悪気がない様子の風宮に罰を与えようと、力の一部を解放する。

「……やっていいことと悪いことの区別ぐらいつくよな?」

 指先から電気が漏れ出し、全身という全身から放電する。

 たったこれだけの予備動作だったのだが、クラスメイト達にとっては、この前のことがあったのですでに退避済みだ。

「ちょ、待て! なんで、オレしかいないんだよ」

「喰らえーーっ!!」

「ぎゃあーー!!」

 学校が始まってすらいない朝の時間、学校の一室をまるごと包むような電撃が放たれた。




「……ったく。お前のせいで酷い目に合ったんだからな」

「はははっ、わりぃわりぃ」

 あの後、問題を起こした人を怒らした元凶という元凶が怒られた。

 俺を怒らした風宮がすべて悪いとクラス一致の答えが出たらしい。そのため、クラス委員長から俺へのお咎めの言葉はいただくことはなかったが、風宮はかなり受けたみたいだ。

「残念だな。まぁ、悪いのは全面的に風宮だし、仕方ねぇんじゃねぇか」

「…………」

 この言葉がキッカケとなったのだろう、風宮はうーんと腕を組みながら唸る。

 ――あれ、もしかして怒らしちゃったか。

 俺は事実を言っただけなんだけど、やっぱり言っていいことと悪いことがあるよな。

「あー、風宮……」

「……それ、やめね?」

 言い過ぎたと謝ろうと思ったのだが、風宮の言葉によって遮られる。

「えっ?」

「……なんかさ、お前らは名前で呼び合ってるけどさ、オレだけ苗字じゃん。なんか、距離を取られてる感じでさ」

 あー、俺の言葉に怒ったんじゃなくて、そっちに気がいったんだな。

「まぁ、そんなもん。別にいいぜ」

「……それじゃあオレはお前のこと、光輝って呼ぶからな。オレのことは嵐でいいから」

「おう」

 こうして初めての男友達が出来た。

 今まではあまり友達とつるむことがなかったからか、ちょっと嬉しい。


「……おはようございます」

「おはよう。って、なんでこんなことになってるのよ」

 雪羅と焔姫の二人が一緒に登校してきた。真面目な二人が教室に来て、最初に放った言葉が教室のことだった。

 ――だが、それも無理はない。

 何故なら、電撃を発したときの風圧で、飛んでいった教科書とかがバラバラになっていたからだ。

 俺が仕出かしたことなので手伝うと言ったのだが、『御影君は手伝わなくても大丈夫よ。風宮君には全力で手伝ってもらうけど』と迫真の表情で言われ押し切られてしまったのだ。

「……なんでオレが」

「アンタには手伝ってもらうに決まってるでしょ。御影君を怒らしたのはアンタなんだから」

「これに懲りたら、御影君を怒らせないことね……」

 あれ、おかしいな。クラスメイト達の会話を聞いてたら、俺がRPG(ロールプレイングゲーム)でいうラスボスの立ち位置になってる気がするんだが。

「……何があったの?」

 雪羅と焔姫の机は端すぎて俺の技の効果範囲外だった。

 それが幸いとしてか無傷だったため、机の周辺を掃除する必要がない。

 そうなるとすることがないので、こんな悲惨な状況になってしまったキッカケを掃除しなくていい俺に聞きに来たってことだろう。

「まぁ、さっきの女の子の言葉で、なんとなくはわかるけど」

「まぁ、簡単に説明すると、俺がキレた」

「やっぱりね」

 納得といった様子だったが、こんなことで能力を使ったことに呆れていた。

 ――たしかに、こんなことで能力を使ったのはどうかと思うけども。アレは仕方ないと思うんだ。

「……なんで、キレたりしたの?」

「あー、ちょっとな」

 朝の出来事を思い出してしまい、恥ずかしくなって俯く。

「……?」

 途中で口ごもった理由がわからないのだろう。

 雪羅の顔には、クエスチョンマークが浮かんでいた。

「それはそうと、今日から加賀美の代役が来るのを知ってるか?」

 うまく話を変えようと思って、良い話題を探していたんだが、それしか今のところ情報がなかった。そんなありきたりな情報なんて、他の人から聞いているだろうに。自分のボキャブラリーの少なさを怨む。……もっと別の話題だったら、確実に話を逸らせることが出来たのに。

「……ああ、そういえばそうみたいね」

 このまま教室半壊の話を聞きたいと思わなかった焔姫が、ありきたりな情報に乗ってきてくれる。今の状況からすると、本当に助かる。

 俺がキレた理由を話さなくていいのだから。

「……そうなの?」

「お、おう。何でも、校長が知り合いを呼んだらしいぜ」

 もっともウチの校長は、あちら側の事情について知っている人だけどな。




 ――二日前。


「……と、そんな感じで解いていけばいけますよね」

「おおっ、さすが優等生だな」

 ウチのクラス担任である加賀美音夢が、紅帝学園のスパイだったことが発覚した次の日。

 いつものようにとはいかないが、普通の学生生活を送っていた。

 授業を終えた直後、宿題といって出された問題や授業中にやった問題でわからないところがあればすべて俺に聞いてきたりと、いつも通りではなかった面もあったが。平和的ではあった。

 一年からずっと成績がトップ近くだったことが仇となった。

 そして勉強面だけでなく風宮との戦いで発覚した運動神経から、【優等生】と呼ばれるようになった。

「……それ、やめろよ。ただクラストップなだけで、他のクラスに成績上位者なんてごろごろいるぜ」

「それはテスト時間の半分、寝てるからだろ?」

 なんでこいつはそれを知ってるんだよ……。

 風宮が言う通り、俺はテスト時間の半分近くは寝ている。

 別にテストを受けたくないというわけでもないし、問題がわからないというわけでもない。目立ちたくないのに、成績で上位だとどうだろうと思ったからだ。クラスで一位なら別に対して思われることはない。「ああ、またこいつか。よくやるよな」ぐらいだ。

 だが、学年となると別だ。

 色々と質問されるに決まってる。そう思った俺は、手を抜くことにしたのだ。

「……まぁ、ちらっと見た瞬間に目に入って、たまたま手を抜いてるのかなって思っただけなんだけどな」

「カンニングだな……」

「仕方ねぇだろ。目に入ったんだからよ」

 ――何が仕方ないだ。思い切り見てんじゃねぇかよ。これで答えを写してたらリアルにカンニングものだぞ。

 勉強中にだけ着けるようにしている眼鏡を弄りながら思う。

 真面目な優等生ってわけじゃないけど、それは酷いと思うぜ。まぁ、物音とかしたら気になって見ちゃうこともあるだろうけども。

「それにしてもよ。――お前、本当に眼鏡似合うな」

「そっか? 普通に似合ってないと思うんだが」

「……いやいや、似合ってるぜ。周りの女子がずっとこっちを見てるのも納得だぜ」

 風宮の言っている言葉の意味がわからない。

 俺を見たところで得なんてしないのに……、得がないことを人間がするわけないだろう。

「ねぇ……。御影君って眼鏡をつけたら印象が変わるよね」

「普通でもカッコイイのに眼鏡をつけたら一層、かっこよくなるね」

「それ、わかる! でも、私は眼鏡無しのほうがいいと思う。たまに見せる真剣な顔が……」

「あー、風宮と戦ってたときの表情とか喧嘩してたときの表情ね」

 クラスの女子達がチラチラとこちらの様子を疑うような視線を送ってきていた。

 彼女達の熱い視線に気づいた。というか気づかざるを得なかった俺は、視線を送ってきていた女の子達を見ると、みんなして視線を逸らされた。



「……いったい、何だってんだ?」

「お前、鈍感って言われたことないか?」

「……いや、あんまり言われたことねぇけど」

 だいぶ昔に幼馴染に言われたことがあるだけだな。

 まぁ、あのときに言われた理由すらもわかんねぇけど。幼馴染が言うには、俺は鈍感らしい。ちなみに何故、言われたのかはわかっていない。

 風宮と楽しく雑談をしていると教室に一つ備え付けのスピーカーからザーザーという無機質な音が聞こえる。

『二年A組、御影光輝君。二年A組、御影光輝君。至急、校長室まで来てください。繰り返します――』

「……はぁ」

 校長室に呼び出しって何をしたんだよ。

 クラスメイト達も校長室に呼び出しという点において、興味津々なのだろう。校長室に呼び出しを受ける。――つまり、校長からの呼び出しだと考えているやつが多いということだろうな。実際、俺もそう考えている。

「お前、何をしたんだよ」

「知らねぇよ。何もした覚え……っぁ」

 キッパリと疚しいことはしてませんと言いたかったのだけど、学校の長に呼ばれるような事件を起こしてたな。と、つい最近の出来事を頭に浮かべガックリと肩を下げる。

「はっはあん……。あるみたいだな」

「あー、くそ。めんどくせーな」

 心から思っていたことをさらけ出しながら、俺は校長室までの道程を歩く。

 後ろから聞こえてくる友達の声に腹を立てながら――。



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