第13話 悲劇の真相
「まったく……、あんな大人数の前で能力を使うなんてどうかしてるんじゃないですか!?」
「それに皆の前で能力を使いたくないって言ってたのは、アンタだったよね? なんで本人が嬉々として使ってるのよ」
放課後の保健室――。
俺はその備え付けのベッドの上に寝かされ、仲間達の俺を責めるような言葉を聞いていた。身動き一つ出来ないので、逃げることも出来ない。
「あははは……。面目ないです」
ちょっと調子に乗っちゃったんだよね。
そのせいで足元掬われて、力を発揮するしかなくなったという。
「……それと、私はまだ、あなたを許したわけではないですからね」
もう一つのベッドの方へ、睨むような視線を送る雪羅。
「……わかってますよ。あんな危険な魔法を使ってしまったんですから」
ベッド同士を仕切っているカーテンが開き、そこから顔を出したのは俺と同じく重症を負っている風宮だった。
俺と同様に重症を負っている風宮だが、更に美少女からの絶対零度の睨みを受け続けなければならないという。色んな意味で俺より重症になっているかも知れない。
「まぁまぁ……。それはそうと、良かったじゃない。二人とも、あんまり酷い怪我は見当たらないんだから」
そう、本当なら死んでいてもおかしくなかったのだ。
だが、生きていたのは紛れもなく……。
「……この力のおかげなのだろうな」
辛うじて動かすことの出来る左手を凝視する。
だからといって何かが変わるわけでもない。でも、見ずにはいられなかったのだ。
(呪われた力も使い方次第ってか……)
使い方次第で負の力にも、正の力にもなる、か。
使い手の気持ちでまったく能力の趣旨が変わってしまう。
「ま、感謝出来る代物ではないけどな」
苦笑気味に呟く。
自分の言ってたことが馬鹿げていることを自覚したからだ。
夢幻光源の親戚に当たる異常魔法の一つが、風宮の家族を崩壊させ、こいつ自身を狂わせたのだ。許されるものじゃないし、俺はその能力に該当する。
だからこそ、その責任として風宮の家族を殺したやつを探し出して罪を償わせないと。
「……そんなことないですよ」
「えっ……」
返ってきた言葉は、予想していた同意の言葉ではなかった。
「たしかに、御影様の力は異常です。ですが、その力のおかげで私は焔姫と仲直りできたのですよ?」
「……そうね。アタシもあなたには感謝してるわ。この子への憎しみで道を外しそうになったアタシを、変えてくれたのだから」
「お前ら……」
こいつらの優しさに再度、触れてしまった俺は泣きそうになる。
「まあ、俺もアンタには怨みはねぇからな。怨みがあるのは、闇のやつだ」
「闇ですって!?」
「……闇」
風宮の言葉に一際、大きな反応を示したのは雪羅と焔姫の元紅帝学園コンビだった。
――やっぱり闇の異常魔法も存在するのね。光がある時点で予想はしていたけども。
「お前ら、闇のやつの正体を知ってるのか!?」
その反応を相手を知っていると思ったのか、風宮はまだ怪我も碌に治っていないのに無理をしてベッドから立ち上がる。
「ぐぅっ」
「……お前、バカか。怪我人は大人しく寝てろ」
無理をして立ち上がろうとしていた風宮を焔姫が元の位置に戻す。
焔姫って見た目によらず世話焼きだよな……。と、雰囲気を壊すことを思う俺であった。
それと同時にこの言葉は怪我人の俺が言って言葉じゃないよなと苦笑する。
「まったく、そんなに無茶しなくても教えてあげるから」
「……ああ、悪い」
「で、闇の子だったね。あいつはアタシ達、紅帝学園の連中からすると異次元の存在だ」
「異次元……?」
「ああ、あいつの強さは馬鹿げてる。アタシと雪羅……全盛期のアタシ達が同時で戦ってもあいつに一撃も与えられなかった」
全盛期のアタシ達って――、今でも全盛期じゃねぇか。
空気を壊したくなかったので口に出すことはなかったが、内心でツッコム。
「……異次元と呼んでいるのには、まだ理由がある」
「そう、あいつには感情というものがないんだよ」
「感情が……ない?」
まったく思いつかない俺とはうって変わって、思いつく思い出があるのか風宮は唇をくっと噛み締める。
「……上層部からの命令は絶対的にこなしてくる。それがたとえ、殺人であっても」
「命令絶対主義は、ここにいる雪羅と同じだけど……。雪羅は殺人はしないからね」
焔姫の軽口を聞いている暇はなかった。というより、雪羅の台詞が深く俺の心に圧し掛かってきた。
それじゃあ、風宮の家族が殺されたのは……。
「ということは、あれか。俺の家族が全員、殺されたのは……」
「……ええ、上層部がそう命じたからでしょうね」
「くそっ!!」
真相を知った風宮はそんなくだらない理由で家族が殺されたことが悔しいのか、大粒の涙を垂らしながら保健室の壁を殴りつける。
「……そんな理由で、俺の大切なものを奪っていったのかよ」
俺達は誰も、こいつに言葉をかけることが出来なかった。
この状況で声をかけたとしても、それは慰めにもなりはしない。ただの同情だけだ。
男の泣き顔なんて見ていても仕方ないので、保健室の窓から外の景色が見ていた。
風宮の心境を察したかのように……、空も大粒の涙を流していた。




