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プロローグ
彷徨う私を拾ってくれた、主。私は主に生涯の忠誠を誓った。
―――その日から、忠誠心と引き換えに少女は涙を失った。
「暗闇で楽しげに歌え 夢など持つな 持たれば忘れ 主の元から消え去りよ♪」
真夜中に少女は歌う。屋根の上で、笑いながら。少女の髪は、まるで夜の闇みたいな、黒。
「君のためなら 鎧にもなるよ 君が願うなら 私が叶えよう 叶わぬ願いなら 星に願おう」
歌は続く。彼女が歌うと、闇が満ちていく。
「んー・・・♪」
少女は闇をかぶったまま、気持ち良さそうに背伸びをした。
そして、とんっ、と後ろに飛んだ。なんて、闇の似合う少女なのだろうか。
「!」
どさっと木の上に仰向けのまま着地した。彼女はそのまま体勢を整え、寝転がったままでいた。
「・・・・ん」
少女は此方に気づいたようだ。
「き、君は・・・?」
「・・・・・・・」
少女は無言のまま、闇に消え去った。