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笑天宮御政録 ―自然に暴走する女帝と常識トリオ―  作者: 鑫鑫
第四章 白風の外交なんよ

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第一話 来訪の朝なんよ

朝霧が深く立ち込める平原の向こうから、その一団は姿を現した。

先頭を行く騎馬隊が掲げるのは、燃えるような赤でも、深い敵意を示す黒でもない。深い森の奥を思わせる、穏やかな翡翠色の旗幟(きし)である。それはこの大陸において不戦と対話を意味する、中立国の紋章だった。

蹄の音は驚くほど統制されており、大地を無用に踏み荒らすような荒々しさはない。兵たちの鎧は磨き抜かれているが、武器の先端には平時の礼儀を示す白い布が巻かれている。これは蒼嶺の使節団だ。


朝の政務殿に、薄い蒼の影が差し込んだ。

静かな光が柱を撫でるたび、空気がわずかに揺れる。


今到着した蒼嶺使節の先触れが足音も高く入ってきた。

「……蒼い影……! これは蒼嶺の象徴……! 加護が降りた……!早く、閣下に報告せねば……!!」


天華「ほい、自然に影が差しとるだけなんよ!」


蘭花「蒼の影……“蒼嶺来訪の瑞影”でございますか……古来より、影は友好の兆しと……」


薄花「……蒼の影が……静かに揺れるたび……まるで縁が息をするようでございます……」


兵卒「息せんのんよ!!

   影は友好せんのんよ!!

   息するんは人のほうなんよ!!」


剛明「いやまだ、到着のお知らせだよ。……まだ、始まってないでしょう……!」


蒼嶺使節の先触れは、まもなく使節団が到着する旨の報告をすると、感動で震えながら退出していった。


---


蒼嶺が去った直後、朝日が金の飾りに反射した。

揺れる光が壁を走る。


続いて朝霧の向こうから現れた一団は、あまりにも静かだった。これは白嶺の使節団だ。


その白嶺使節の先触れが静かに入ってくる。

「金の反射……! 白嶺式の礼節が採用されております……!すぐ、代表に報告せねば……!!」


天華「ほい、自然に揺れただけなんよ!」


白嶺使節の先触れはすでに揺れ礼を始めていた。

揺れの“間”を測るように、体を左右に静かに揺らす。


蘭花「揺れの“間”……見事に整っております……」


薄花「……揺れの影が……静かに重なり……物語が息をするんよ……」


兵卒「息せんのんよ!!

   影は物語せんのんよ!!

   揺れるんは人のほうなんよ!!」


剛明「いやまだ、到着のお知らせだよ。……まだ、始まってないでしょう……!」


白嶺使節先触れは、まもなく使節団が到着する旨の報告をすると、揺れたまま退出していった。


---


白嶺が去った直後、銀器に光が走った。

鋭い光が床を切り裂くように伸びる。


朝霧を切り裂いて現れた一団は、中立国特有旗を掲げて現れた。しかし、その行軍からは、中立を保つ国が持つべき慎みがあまり感じられない。それは、紅蓮の使節団だ。

その紅蓮使節の先触れが勢いよく入ってきた。

「光が走った……! 戦勝の兆し……!急いで団長に伝えなければ……!」


天華「ほい、自然に光っとるだけなんよ!」


紅蓮使節の先触れは即座に戦勝ポーズを取る。

胸に手を当て、勝利の礼を捧げる。


蘭花「光の理……勝利の礼が自然に巡っております……」


薄花「……光の影が……静かに揺れて……勝利の物語が息をするんよ……」


兵卒「息せんのんよ!!

   光は勝利せんのんよ!!

   勝利するんは人のほうなんよ!!」


剛明「いやまだ、到着のお知らせだよ。……まだ、始まってないでしょう……!」


紅蓮使節の先触れは、まもなく使節団が到着する旨の報告をすると、勝利の礼を保ったまま退出していった。



白嶺と紅蓮の先触れがすれ違い、政務殿の回廊で「蒼い影」「金の反射」「鋭い光」が同時に交差した。


蒼嶺先触れ「な……なんだこの光の交錯は……!? 蒼い影に金の反射が重なり、光が走った……! これは……『三国が争いを捨て、永遠の友情を結ぶ』という天からの神託……!?」


白嶺先触れ「そうです……! 金の反射が蒼と光を包み込みました……! これは『三国合同でお茶会を開くべき』という最高級の礼節の示唆……!!(ゆらゆら揺れながら)」


紅蓮先触れ「ぬうう! 光が影を包み込んで丸くなったぞ! これは……『戦うことすらバカバカしくなるほどの究極の平和』の予兆……!! すぐさま本隊に『武器を捨てて宴の準備をせよ』と報告せねば……!!」


兵卒「待つんよ!! 友情もお茶会も宴も全部ただの朝日の屈折なんよ!! でも戦争にならんのなら……まあええんか……!?」


理策「補足。政治的緊張状態の完全な無力化を確認。光学現象による奇跡的な平和的解決です。」


政務殿には、蒼・金・光の余韻だけが静かに残った。

それぞれが勝手に誤解し、勝手に感動し、勝手に礼を捧げていった。


天華「ほい、自然に先ぶれが来訪したんよ!」


兵卒「まだ、使節団来てないよ。自然じゃないんよ!! 先触れが来て使節団来るって言っただけだよ!!」


剛明「……まだ使節団の先触れが来ただけじゃが……なんかもう、三国同盟が完成して宴が始まりそうじゃ……」


薄花「……三国の影が……静かに揺れて……平和の物語が息をするんよ……」


兵卒「息せんのんよ!! 影は呼吸せんのんよ!! でも全人類がこの勘違いで幸せになっていくんよ……!!」


天華「ほい! 平和になったなら自然に宴を始めればええんじゃ!」


兵卒「まだ、どこの使節団の本隊も着いてないんよーーーっ!!」


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