第二章 エピローグ
笑天宮の庭には、
乱高下した自然の整合が静かに落ち着いたあとの、深く澄んだ気配が満ちていた。
天鏡殿から差し込む真っ白な光は、
ここで積み重なった無数の因果の層を労わるように柔らかく揺れ、
御政殿の黒檀の影は、
静かに返された礼の流れを静寂の中に抱きしめていた。
兵舎の重厚な鉄の梁は、
文官や使節団が残していった深読みとポエムの狂乱の余韻を、かすかな振動としてひそかに響かせている。
そして、笑天宮を取り囲む文化の四殿――
言葉と記録が紡がれた**【書殿】、
動作と美しい線が整えられた【礼殿】、
静けさと揺れが共鳴した【音殿】、
息と間が育まれた【茶殿】**――
それらもまた、それぞれの静けさを湛えながら、
ここで積み重なった「自然の形」を静かに受け止めていた。
兵卒は庭の端で、膝の汚れを払いながら、疲れ切った吐息をそっと漏らした。
兵卒
「……なんやかんやで整ったんはええけど……この静けさ……絶対にまたデカい何かが来そうなんよ……わしの胃がそう告げておるんよ……」
その予感に応えるように、
笑天宮の最も深い奥処で、政務殿の重々しい影がゆっくりと床を滑り、伸びていった。
影は回廊を滑らかに伝い、さらに深くへと進み――
笑天宮の象徴であり、中心に君臨する巨大な扉――天鏡殿の扉を静かに照らし出した。
天鏡殿。
天の意向と地上の営みを鏡のようにそのまま映し出す正殿。
建築も、自然も、文化も、そして人間たちの狂乱も、すべてがここでひとつの「形」となる場所。
その重厚な扉が、一切の音を立てず、滑らかに、静かに開いた。
扉の奥から、圧倒的な光が庭一面へと溢れ出す。
天華はその眩い光を堂々と正面から受け止め、ふんすと胸を張り、ぽつりと言った。
天華「ほい、自然に国ができるんよ!」
兵卒
「できんのんよ!! 国は勝手にポコッと自然にできたりせんのんよ!! 制度を整えて、畑を耕して、服を縫って、人が血と sweat(汗)を流して作るもんよ!! 最後の最後まで全部『自然』で片付けようとするんじゃないんよ!!」
兵卒の叫びを優しく呑み込むように、
あふれ出た光は、これから始まる「新たな国の形」を示すかのように、どこまでも鮮やかに広がっていった。




