お仕事とご褒美①
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飯綱御影 @izuna_mkg_official
オフだったので実家に服取りに行ってきたので
おばあちゃんにも挨拶してきました( ´ヮ` )
DVDお供えしてて恥ずかしかった
「御影の出てるお芝居は内容が難しい」って
言われたの思い出すなぁ…
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鹿島晴日 @haruhi_Fujiofficial
俺は神棚だったんだけど……
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飯綱御影 @izuna_mkg_official
ハルくん!仲間!!!
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@mk_lovexoxo3
御影くんこんばんは!俳優を目指したきっかけのおばあさまですよね!きっと新しい活躍も喜んでると思います♪
@0802OjckWhsE
御影くんこんばんは♪DVDフラゲしました〜!!
これからじっくり見ます!
@jgtw_mkhr625
みかちゃんとはるちゃんww
とうとう神の供物レベル…!!尊い!!
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「すみません、この稲荷寿司48個入りのを……2つ」
「ご自宅用ですか?」
「いえ、差し入れで…包装していただければ」
「結構重たいけど大丈夫?お車かしら?」
「はい!大丈夫ですのでお願いします……あ、電話が」
某高級お稲荷さんの店先で、ひよりは慌ただしくバッグの中身を漁る。
「ひよりさん、わたしも持てます!」
「無理しないで、受け取るだけでいいよ!お会計も頼んでいい?」
「はい。領収書、ですよね」
「完璧☆……はい、玖綱」
ごめんね〜と片手に携帯、片手に財布を隣にいる黒髪の少女に託した。
「よかった出てくれた。飯綱です」
急いでいて表示を見ずに出たひよりだったが、時間的に相手の予想は当たった。しかし妙にキラキラとしたさわやかな声が耳元で聞こえる。外面モードで電話なんて珍しい。
「遅れてすみません。立て込んでおりまして。時間通りにはそちらに到着します」
「お願いがあるんですけど、ハルくんも一緒に車乗せてもいいですか?」
「鹿島さん?大丈夫ですよ。荷物で少し狭くてもゆるしてくださいね」
「……それはハルくん次第ですけどねえ?」
「あれ?頼まれてたのわたしじゃなかった?ねぇ??いつの間にマウント入れ替わった??」
「ありがとうございます。控室で待ってますね」
脈絡のない一方的なお礼と共に電話を切られた。今日は普通車だけど4人乗りだし大丈夫。
すぐさま会計に戻ると、ちょうど奥から包みを受け取るところだった。
「ありがとう美琴!車までだから一緒に持とう」
「ずっしりしてるので食べるの楽しみです〜♪」
嬉しそうに稲荷寿司の包みを持つ少女は、ひよりの担当女優:美琴である。
今日のスケジュールは慌しかった。売れっ子の御影と新人女優である美琴の現場が珍しく被ったのだ。
本日の仕事。昼にレッスン終わりの美琴を迎えに行って打ち合わせ兼ランチ。店のオープンに合わせて差し入れを買い、昼の仕事が終わった御影をピックアップ。
そして2人の現場である稽古場へ送り届けるという内容だ。
そもそも昨日の時点で「稲荷寿司がいい」という御影の鶴の一声が、今日の忙しさの原因だ。
差し入れ購入とピックアップが非常にタイトになってしまった。
さらにたった今、追加ミッションが発生した。御影の俳優仲間である、鹿島晴日がこの車に同乗する。
「3人のタレントの命を預かるのかぁ…」
「すみません…」
「美琴うしろでお寿司抱っこさせてごめんね。着いたら助手席おいで。そんな酢飯は御影にでも持たせよう」
「あははは…私もお稲荷さん好きだから良いですよ。でもなんだか緊張しますね」
バックミラーに映る色白の肌が映える黒髪ロングが美しい美琴は、今日も透明感がすごい。うっかり光が反射してしまいそうだが、手元が狂うわけにもいかない。
これからやってくる鹿島晴日は、御影の人気に劣らない俳優だ。今日の彼らの現場は旅ロケDVD発売イベント。そして来月控える舞台で同格の主要キャストである。
舞台俳優の共演が続くことは珍しいことではないが、公私共に仲の良い彼らと、新人女優の身である美琴には少々かわいそうなシチュエーションだ。
今回彼女は役名ありのアンサンブルのような立ち回りで舞台に参加する。
人気俳優が主要で固まると明らかに"女性向け"作品であることが多いが、マネージャーとしては願ったり叶ったりだ。消費者である女性から好かれるための第一歩につながる。
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「みかちゃんのマネさん!急なお願いだったのにありがとうございます。お世話になります!!」
「わーー!これ稽古場への差し入れ??」
何が「わーー!」だよ。お前の指定だろ。
「いえいえ大丈夫ですよ。うちの子もいるので、現場でもよろしくお願いします。御影それ膝に乗せてね」
「飯綱さん、鹿島さん、おはようございます」
「美琴ちゃんおはよー。レッスン続きで大変だね〜」
一通り挨拶をして発進すると、後部座席の二人が自撮りを始めた。
「みかちゃん昨日のツイ笑った〜。見て、俺の実家の神棚」
「ほんとだ〜。これ俺のおばあちゃんとこ」
嘘つけ。お前に実家は無い。でも半分はホントなのが逆に怖い。
御影とひよりが住むマンションには、先代キエの仏壇がある。本家にあるのに比べたら家庭用のサイズだが、十分立派なそれに向かって話しかけるのがミカゲの日課だ。DVDやグッズが出ると、毎回せっせと並べている。
「ほらキエ、この間の公演」
「このビジュアルは気に入ってる。ブロマイドも好評だった」
「今年のカレンダーだぞ。お前の横に置いておくからな」
祖母の遺影の隣には御影の卓上カレンダーが置いてある始末だ。
安心して欲しい。祖父の写真は本家の仏壇に夫婦並べているし、2ショットの写真もある。
「あ、鹿島さん。自撮りあげるとき、背景気をつけてくださいね」
「わかりました!ねぇ〜みかちゃん、最近おすすめの加工アプリある?」
「これ。背景ぼかしラクだよ」
「『みかちゃんと稽古場に移動中〜』っと。あれ、今日陽一さんは?」
「別の業務で手が離せなくて…いつも久綱共々お世話になってます」
「陽一さんイケメンだしスーツかっこよくて俳優仲間でも噂されてますよ〜。稽古場に現れるスーツのメガネイケメンは誰!?って」
「あははは。弊社でーーす」
「みかちゃん心籠ってなくてウケる〜」
そろそろイケメンがゲシュタルト崩壊を起こしそうなひよりは、ハンドルを握りながら胃痛を感じ始めていた。早く稽古場についてくれと願いながら。