第61話 アンジュの故郷
――数年後。
シルヴィアたちは、2人が初めて出会った場所、アンジュの故郷に来ていた。
「ここに……孤児院を?」
「うん。僕と同じ境遇の子どもたちを引き取りたいんだ!」
堕天使を討伐した後、ノートン領へと戻った彼女たち。
かつての仲間である騎士団員たちも彼女を快く受け入れてくれた。
彼女たちが旅で成したことが伝え広がり、むしろ積極的に歓迎してくれたのだった。
最後の戦いだけでも数多の魔王の討伐、伝説の古代龍の討伐。
武勇を誇る騎士団達にとっては当然のことだった。
ノートンに戻って来てからは、アンジュに基本的な教育を施したり、愛でたり、騎士団員としての仕事をしたり……。
ゆったりとしながらも、それなりに充実した日々を過ごしていた。
そして、アンジュが自身の故郷に行きたいと言い、そこで自身の今後の展望を語る。
「それはいい考えだな!」
シルヴィアが嬉しそうに肯定する。
彼女の背中の小さな羽も、嬉しそうにはためいていた。
「うん! お姉ちゃんも手伝ってくれる?」
「当たり前だ! と言っても……私はアンジュと村の警護とかでいいか?」
この数年でシルヴィアが実感したこと。
それは、子育てはもうしばらくいいや、と言うことだった。
「その……ビビアン達の子どもが元気すぎてな……」
「……ふふ!」
あの後、改めて旅に出た2人。
その道中で最初の子どもを産み、しばらくしてからノートン領に身を寄せることとなった。
それからほとんど毎年子どもを産み、周囲に迷惑をかけながらも明るさを振りまいている。
最初は2人の子どもだからとよく面倒を見ていたが……もう十分だった。
「私はちゃんとアンジュ様のお手伝いをしますよ!」
妙齢の、色気を伴った女性に成長したロクサーヌも意志を表明する。
彼女の旅はまだ終わらない。
「うん! ローちゃんならそう言ってくれると思ってたんだ!」
「はい! だから、そろそろ――」
ぎろりとロクサーヌを睨みつけるシルヴィア。
彼女が報われる日は来るのだろうか。
◆
「ここが僕の家だったところだよ」
シルヴィアとロクサーヌを連れ、アンジュはかつての自宅へと案内する。
「ここでお前と出会ったんだったな。あの時のお前ときたら全てに絶望した……いや、虚無だったんだぞ!」
「うん……お姉ちゃんに助けて貰えて、本当に良かった」
敢えて軽く言うシルヴィアに頷くアンジュ。
「ところで、どうしてシルヴィアさんはアンジュ様を育てようと思ったんですか?」
他にもそういう場面はあったでしょうに、と続けるロクサーヌ。
「……う~ん……わからん!」
「あ、はい」
この女はいつだってそうだ。時に理屈ではなく感情で動き過ぎる。
出会ってから何度も経験したことだった。
「……もしかしたらね、そうだったら良いなって希望なんだけどね……」
実はアンジュには前世の記憶がほんの少しだけあった。
真っ白な病室、徐々に動かなくなっていく、何かの機械に繋がれっぱなしの体。死を待つだけの日々。
何より、今は思い出せないが、両親の悲しく笑う顔を見るのが1番辛かったこと。
毎日死にたいと思い続けていた。
それと同時に、本当は生きたかったこと、外を走り回り、両親と心から笑い合いたかったことも。
記憶というよりは、強い願い。
それを持ってこの世界に生まれ変わったのだった。
「その時の思いが……お姉ちゃんに届いたのかもってね!」
きっとそうだろうなと、シルヴィアに笑顔を向ける。
「そう……ですか……」
「ならば! アンジュの前世とやらに感謝だな!」
この世界には前世や生まれ変わるという考え方は無かった。
命は一代限り。命が無くなれば、その想いは次の世代が受け継ぐ。
だからこそ、愛するのだと。想いが途絶えないように。
「(前世……生まれ変わり……)」
この時のアンジュの言葉がロクサーヌの人生を大きく変えた。
「まっ! これからも何があっても私がお前を支えてやる! 孤児院のこともな! だから……末永くよろしく頼むぞ」
「私も! 最期まで諦めませんよ! 最後に笑うのは私ですから!」
「うん! よろしくね! ローちゃんと……シルヴィア……」
「……お姉ちゃん!」
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