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第58話 ノートン領に戻って来て

「ただいま!」




 堕天使を討伐してしばらく。

 シルヴィアたちはノートン領の自宅に戻って来た。


 もしかしたらセーラがいるかも知れない。

 そう期待して開け放った扉だったが、残念ながらそこには誰もいなかった。


「――っ! シルヴィアお嬢様っ! アンジュ様も!」


 声の方を見ると、隣のノートン家の侍女だった。

 当然、シルヴィア自身も世話になっていた人物だが……。


「ああ、久しぶりだなです!」


 あくまで勘当されている身。血の繋がっているとは言え、元父は辺境伯。

 今の自分の置かれている微妙な立場、それが彼女をおかしくさせていた。

 

「ぷぷ……っ! だなですって……」


 ビビアンは露骨に、ロクサーヌはこっそりと笑い、ハナブサは天を仰ぐ。


「やだ、シルヴィア様ったら……そんなことより、領主さまを――」

「んぁぁぁぁああああ! シルヴィアァァァッ!!! よくぞっ! よくぞ無事にぃっ!!!」


 侍女がファルシスを呼ぼうとしたが、先に気付いて飛んできた元父、ファルシス。


「あ、あぁ……ファルシスさん、こんにちはですだな!」

「うぉぉぉーん! そんな冷たいことを言うなっ! 呼んでくれ! パパと!」


 今生の別れともなることを覚悟し送り出した、何よりも大切な宝。

 それが戻ってきてくれたことに、全力で喜びを表現している父ファルシス。


「……しかし、私は勘当された身でありますれば……」


 次期騎士団長と目されておきながら、騎士団から抜けるための手段として廃嫡されたシルヴィア。

 そのため、別に父と娘の間に悪感情がある訳ではない。


「そんなことはどうでもいい! せめて……周囲の目がないところでは昔のように呼んでおくれ……我が娘よ」

「……ただいま、父上」

「それに、アンジュも……よく無事だったな。おかえり」

「うん!」


 ◆


「ふむ……そんなことが。なかなか辛く険しい旅だったようだ。お仲間の方々にも恵まれたようだな」


 あの後、食事をとりながら旅での出来事を語るシルヴィアたち。

 ファルシスも我に返り、威厳を取り戻そうと努力している。


「うむ! かけがえのない仲間達だ!」

「……そうか」


 しかし、大きく成長を感じさせる娘に結局喜びを隠しきれずに笑顔となってしまうファルシスだった。




「シルヴィアお嬢様! アンジュ様!」


 そこに、かつてアンジュの世話係として一緒に過ごしていたセーラが訪れた。


「あぁ! 本当に……! ご無事でよかったです……」

「セーラ……会えて嬉しいぞ……」

「セーラちゃん……!」


 シルヴィアとアンジュ、交互に抱き合うセーラ。

 その顔は大粒の涙を流しながらも笑顔だった。


「毎日……毎日想っていました……旅の無事を」

「ありがとう……おかげで、無事に戻って来れた!」

「……ふ~ん、あんたが噂の天使なの?」


 手を握り合い、言葉と想いを交わすシルヴィアとセーラ。

 その横に、10歳前後の少女がいた。


「ん? この子は……?」

「あ、すみません。この子は……私の娘です。新しくできた……」

「――!?」


 おかしい、旅に出てから2年は経っていないはず。

 それとも成長が早い種族なのだろうか、アンジュのような件もあるため迂闊に事情も聞きにくい。


 悩んだシルヴィアが選び抜いた答えは、当り障りのない言葉だった。


「……セ、セーラに似て可愛いなぁ……」

「ふふっ、似てる訳ないじゃないですか。血は繋がっていないんですから」


 どうやら選択を間違えたようだ。


「再婚したんです。お相手は……」

「俺だ! キーファ様だ!」


 突如現れたのは、胡散臭い風貌が少し薄くなった男、かつてのシルヴィアの上司でもあるキーファだった。


「や~! あの後さぁ、何だかんだ? あって結婚することにしてよぉ~!」

「そうか! それはめでたいな! キーファは表面的にはめんどくさがりを装っているが、実に思いやり溢れる素晴らしい男性だと私も思うぞ! 良かったな、セーラ!」

「お、おう……?」


 予想したものと異なり、突然べた褒めされたことに戸惑うキーファ。

 いつかまた会ったら、あの頃のことを嫌味ったらしく言ってやろうと考えていた彼だったが、そんな気は失せてしまった。


「……嬢ちゃんも、坊主も無事で何よりだ。おかえり」

「ああ! ありがとう!」

「うん! ただいまキーファおじさん!」




 こうして、シルヴィアたちは故郷へと戻り、温かく迎え入れられたのだった。


「あんた、なかなか可愛い顔してるわね! お婿さんにしてあげよっか?」

「? うん!」


 戦争が始まるまでは。

読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/


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