第57話 戦いの終わり
「何だ貴様は!? 何故私と似た姿を……まさか、貴様が前から感じていた不快な――」
「……」
堕天使には何も答えず、あらぬ方向に光を飛ばすアンジュ。
「……何だ? 何をした?」
「……」
そして同様に、シルヴィアとロクサーヌにも同じ光を当てる。
瞬く間に2人の傷が治った。
「……私を! 無視するな!」
「……」
堕天した直後、シルヴィアに向けて放った『カオス・ブレイク』。
より洗練されたそれは、文句のつけようがないほどの威力を持ち、全てを跡形もなく飲み込む。
「何だと……!?」
――はずだった。
アンジュが手をかざして顕現させたのは、彼が生まれて初めて行使した『結界』。
巨大な盾を模した光の結界は、微動だにせず堕天使の攻撃を防ぎきった。
「(バカな! たかがガキの分際でぇっ!)」
「……」
尚も攻撃を仕掛けようとする堕天使だったが、すぐに異変に気付く。
「(なっ!? 魔法が使えない!? 体も動かない! それどころか声も!?)」
いつの間にか自身を拘束するように、幾重もの光の筋が伸びていた。
「(離せっ! 離せっ! なぜ微動だにせんのだぁぁぁっ!)」
必死に動こうとするも、全く動けない堕天使。
「シルヴィアおねえちゃん!」
動けない堕天使を尻目に、アンジュがシルヴィアの傍に寄り、手を繋ぐ。
「これは……魔力?」
「うん!」
シルヴィアに魔力を渡すアンジュ。
「そうだ……そうだったな! それは私の仕事だ!」
アンジュの手を握り、反対の手で大剣を構える。
「(くそっ! まずいまずいまずいぃっ!?)」
「堕天使よ、お前になくて私たちにあるもの。何かわかるか?」
シルヴィアが静かに、かつてないほど強大に『闘気』を纏う。
「(何をっ!? 今それどころじゃないだろうがぁぁっ! 助けろぉ! 誰かっ! 俺をぉぉっ!)」
「それはな、愛だ。お前は愛に負けるんだ!」
父から譲り受けた大剣にも『闘気』を纏わせる。
「(やばいっ死ぬっその魔力量はっ本当にっ!)」
「さらばだ、名もなき堕天使よ!」
そして、シルヴィアは全てを込めて大剣を叩きつけた。
「んぎゃぁぁぁぁぁああああーーーっっ!!!」
耳障りな叫び声とともに、堕天使はこの世から塵1つ残さず消え去った。
「やりましたね! 遂に!」
「あぁ……いや! ビビアンとハナブサが――!」
長い間追い続けて来た怨敵。
それを倒した余韻に浸る間もなく、決死の覚悟で道を切り開いてくれた仲間の所へと向かおうとする。
「シルヴィア! ロクサーヌ!」
「アンジュ!」
しかし、その2人がシルヴィアたちがいる部屋へと入って来た。
「……無事だったか」
思わず泣き出しそうになるシルヴィア。
正直、生存は絶望的だと思っていた。
「ん~……死んだと思ったんだけどねぇ~……」
「……」
大量の血を流し間もなく死ぬんだと思いながら、何だか恥ずかしいことを言った気がすると、赤面するビビアン。
ハナブサはアンジュを何も言わず見つめている。
当然彼には、自分たちの傷が治ったのはアンジュのおかげだと理解していた。
「……みぎて……?」
欠損部位すら治せる今のアンジュ。
しかし、ハナブサの右手は依然変わらず何もなかった。
「……この傷は俺の誇りだ。治す必要はない。それに、右手がないことで俺はさらに強くなった」
「? 何を言っているんだ? 剣士が利き腕を失って強くなる訳ないだろう!」
さも当たり前のように、当たり前の事を指摘するシルヴィア。
「……いや、実は……」
「はいはいはい! そんなのいいから、さっさと帰りましょうよ!」
身体的にはともかく、精神的にはボロボロに疲れたとビビアン。
「……終わり、なんですね」
不意に泣き出すロクサーヌ。
「な、何だどうした!?」
突然泣き出したロクサーヌに、シルヴィアが心配そうに声をかける。
「わたっ! 何もっ……できなくてぇっ……けどぉっ! みなさんと一緒にっ! 旅できてぇっ!」
「そんなことはない! どれだけお前に――」
「あー、はいはい! そう言うのは帰ってからにしようってば! 私は疲れたの!」
何やら湿っぽいことを言いだそうとするロクサーヌを遮るビビアン。
「……帰ってからでも、いつでも話せるでしょ」
「ビビアンざ~ん!」
「ちょっ! 鼻水付けないで! あんた、芋いって言ったことまだ根に――」
騒ぎ出すビビアンとロクサーヌ。
それを眺めながら、右手を顕現させアンジュを撫でるハナブサ。
「……ありがとう」
「?」
「お前のおかげで……俺は救われたよ」
愛おしそうに、かつて我が子にそうしていたようにアンジュを撫でるハナブサ。
「うん! だから大丈夫っていったでしょ!」
「? あぁ……」
誰に向けて言ったのか、アンジュが嬉しそうにしながらされるままにしている。
苦しいこともあった旅だったが、それぞれ得るものも大きかった仲間達との旅。
それももう終わったのだ。
「さぁ! 帰ろう!」
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