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第53話 青い空の下で

「ビビアン! あの巨人を倒せるか!?」


 吸血鬼を倒したハナブサだったが、彼に対してそのままキュプロスや魔王級の魔物が襲いかかる。


「……」


 全神経を指先に魔力を集めることに集中しているビビアンが、小さく頷く。


「……任せるぞ」


 ハナブサは数度切りつけたが、キュプロスを断ち切れなかった。

 周囲の上位種には有効で何匹も首を跳ねている。


 しかしハナブサもそろそろ限界だった。

 身体的にも、魔力的にも。


「――っ! 1匹でも多く!」


 身体強化の魔法もその体全体を覆うことはできず、右腕を顕現させるだけに集中していた。

 それもいつまで持つかわからない程、ハナブサは消耗していた。




「……そろそろ、行ける、わ。正面に……」

「わかった!」


 ビビアンの最後の魔法だろう。

 これで倒せなければ、そう考えている暇も余裕もなかった。


「行け! ビビアン!」

「……!」


 1点に集中した魔力を、さらに圧縮させた熱線。

 それは今までのどの魔法弾よりも小さく、か細いものだった。


「『火炎弾(バーン)(ゼロ)』」

「グゴッ!?」


 しかしそれは圧倒的密度と熱量を持ってキュプロスの心臓を正確に貫く。


「あのバカのせいで……こんな魔法まで思いついたのよ……」


 かつての自身の最高の魔法。

 それを片手で叩き落としたシルヴィア。


 そうすれば一泡吹かせられるか考えついた先が、さらに小さく圧縮することだった。


「グガァァァッ!?」


 最後に魔法を横薙ぎにし、キュプロスに止めを刺すビビアン。


「ま、あいつに打つことはもうないだろうから……あんたで勘弁してあげるわ!」




「……残りはこいつらだけか」


 魔王たちを引き連れていた2匹の強大な存在は倒すことができた。

 しかし、まだ数匹の強力な魔物がいる。


「グルルルル……」

「ガァァァァッ!」


 最初はハナブサたちを恐れていた魔物たちも、満身創痍の2人の様子を見て勝利を確信したように唸りを上げた。


 それに対し、ビビアンもハナブサも魔力はもうない。

 ハナブサは刀を左手に構え、ビビアンを守るように立った。


「……離れるなよ」

「……」



 

 その後のできごとは一瞬だった。




 オーガエンペラーの棍棒が振り下ろされる。

 最小限の動きで躱し、首を跳ねる。


 ハイミノタウロスの突進に足をかけ、倒れたところで眼球に刀を突き刺す。


 杖を持った魔物が氷の槍を放ち、ハナブサの腹に穴を開る。

 引き抜いた刀を投げ、運よく喉元に突き刺さった。


 最後の1匹、ゴブリンロードが剣を振り降ろし、ハナブサの肩からわき腹を斬りつけた。




「がはっ……」

「ハナブサ!」


 地に倒れ伏せるハナブサに止めを刺そうとゴブリンロードが再び剣を構える。


「やらせない!」

「グギャギャ!」


 立ちはだかったビビアンに剣を突き立てたゴブリンロード。

 ついに人間たちを討ち取った、そうロードが油断した時――。


「『火炎弾(バーン)』……」


 最後の最後に油断していたゴブリンロードの眼球から頭部を穿つ。



「……私は……あんたなんかに負けてやるほど、安い女じゃないの……」


 正真正銘、最後の魔力を振り絞った後。

 軽口を言うように呟き、ハナブサの横に倒れ込むビビアン。


 ほどなく夥しい量の血が流れ始めた。

 2人もどうみても致命傷だった。




「あはっ……最後の最後で、やってやったわ……」

「あぁ……さすがだ」


 もう立ち上がる気力もない2人。

 同じように空を見上げる。


「……糞みたいな人生だったけど……最後は悪くないわね」

「……」


 己の人生を振り返り、自嘲の笑みを浮かべながらも最後は満足だと言うビビアン。


 周りからの嫉妬、否定される己の努力。

 それに振り回されてきた人生だったが、最後は仲間のために命を賭し、そして散るのだ。


 悪くないどころか、上出来だと内心で自分を褒めるビビアン。


「……お前の魔法は美しい」

「へ?」


 思ってもみない言葉に力なく驚くビビアン。


「他の誰よりも……洗練された美しい魔法だ。誇れ、お前の努力を、お前の人生を」

「ぁ……」


 最期の最期、ビビアンはようやく自分が求めていたものに気付いた。


 周りの雑言など、どうでも良かったのだ。

 ただ、大切な人達が理解してくれていれば……。


「なっ、によ……別に……」


 自然と溢れてくる涙。


「あんただって! ……アンジュを庇ったりして……!」


 あれほど関わらない、馴れ合わないと言っていたアンジュを庇ったハナブサ。


「なんてことはない……大切な……仲間、だからな……」

「……そう……ほんと、バカね……私たち」


 静かに風が流れる。

 最早視界はぼやけ、寒気すら感じなくなってきた。


「……ね、この旅が終わったら……」


 一緒に暮らしてみない?

 ビビアンの呟きも、意識とともに風に消えた。


「……」


 動かなくなったビビアンの左手に、無いはずの右腕を重ね、ハナブサも静かに目を閉じるのだった。

読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/


明日からは18時頃から数本掲載、木曜日に完結する予定です。

ぜひ最後までお付き合いください!


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