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第52話 死地

「抜けたぞ!」


 木々の合間を抜け、開けた場所に出たシルヴィアたち。

 ここから見える、山頂へと続く坂道を登れば館に辿り着く。


 しかし、ここで待ち受けていたのは――。


「待っていましたよ。主から言われて仕方がなく、ね」

「……」


 青白い顔をした優男風な男と、単眼の巨人、そして数十はいるであろう魔物の上位種たちだった。


「おやおや? どこかで見たことがあるような……」


 青白い男がハナブサを見て言う。


「あぁ! あなたこの前の剣士じゃないですか! ハナブサさん、でしたっけ?」

「……」

「あの時でさえ私に手も足も出なかった癖に……ぷふっ、腕が1本無くなっちゃったんですねぇ!」

「……癇に障るやつだ」


 以前対峙した時、最終的に体を霧化させる能力で逃げられたが、そこまでは追い詰めていたハナブサ。

 しかし今回は利き腕もない。


 彼が選択した行動は――。


「俺が奴らを引き付ける。そのうちに館へと向かえ」

「なっ!?」


 自身が囮になること。

 満足に戦えない自分にできることは、敵を引きつけて血路を開くことだった。


「私はハインリヒ。誇り高き吸血鬼にして――」

「時間がない! 急げ!」


 悠長に話す時間も、彼の天使に与えるべき時間もない。


「はぁっ!」

「っち! 任せるぞ!」


 ハナブサの後に続くシルヴィアたち。


「ならせめて! 敵の数は減らしていくわ!」


 ビビアンが周囲の上位種たちに魔法を放つ。

 既に魔力の底も見え、大きな魔法は使えなかったが、牽制には十分だった。


「ゴォォッ!」

「ふんっ!」


 最初にシルヴィアと単眼の巨人……キュプロスが衝突した。

 巨大な大剣と巨大な拳がぶつかり合い、衝撃波を生む。


「行けロクサーヌ! ビビアン!」

「――ゴアッ!?」


 圧倒的な肉の密度により切断することは叶わなかったが、キュプロスを怯ませることには成功した。

 その横を、アンジュを背負ったロクサーヌとビビアンが走り抜ける。


「行かせませんよっ!」

「邪魔だっ!」


 吸血鬼が2人に襲い掛かるが、ハナブサが左手で持った刀で斬りつける。

 寸でのところで斬撃を躱す吸血鬼。


「……ははっ! やはり以前のあなたとは大違い! 弱くなりましたねぇ!」

「……ふん」


 利き腕を無くした彼にできることは――。


「……」


 シルヴィアにアイコンタクトを送り、先を促すハナブサ。


「……死ぬなよ」


 『闘気』を身に纏い、2匹の間を強引に突破しようとするシルヴィア。


「待ちなさい!」

「お前の相手は俺だ」


 自身の身体能力を全力で強化し、その速さで無理矢理刀を叩きつける。


「くっ! キュプロス! 行きなさい!」

「ゴァアアア!」

「遅いっ!」


 吹き飛ばされた吸血鬼がキュプロスに向かって叫ぶも、その巨人が動くよりも早く飛び上がり、単眼を蹴り上げるハナブサ。


「……行ったか」


 館へと侵入を果たしたシルヴィアたちを見やり、安堵の溜息を吐くハナブサ。


「貴様らも! 見ていないでかかれ!」

「……グルルッ」


 知性を持たない上位種たちは、中には魔王級もいるようだが、最初のビビアンの攻撃に恐れをなして様子を窺っていた。

 知性を持たないからこそ本能に忠実。故に危険には敏感。


 しかし、この吸血鬼の命令に逆らっても待つのは死。

 上位種たちが動き出した。


「グルルルッ!」

「ガァァアッ!」

「くっ!」


 マナガルムやオークキングなどの魔王がハナブサに殺到する。

 ハナブサとしては何度も屠って来た相手。利き腕がないことで斬り伏せることもできず、防戦を強いられる。


「これだからまともに思考すらできない下等種は……しかしこれで、私は今のうちに……!」


 その間に吸血鬼が自身を霧化し始める。

 この霧化をするには少し時間がかかり、無防備にもなってしまうため、その時間を稼ぐために上位種たちを使ったのだった。


 そして一度霧化してしまえば物理的に成す術が無くなってしまう。




「しま――っ!」

「もう遅いっ!」


 吸血鬼が霧化を終え、建物に向かおうとした瞬間――。


「『火炎弾(バーン)』」

「なっ! ぎゃぁぁぁっ!」


 一筋の火炎弾が館から飛来し、霧と化した吸血鬼を燃やした。


「やっぱり、魔法ならいけそうね!」

「なっ! ビビアン! なぜ戻って来た!」


 わざわざ死地に戻って来たビビアンに驚きを隠せないハナブサ。


「私はね……いい男は放っておけないのよ!」

読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/


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