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第50話 結界

「そんな……」


 ロクサーヌが絶望の声を上げる。


「ぐはは! 噛み砕けはしなかったが……我が魔力が最も濃いところで焼かれて――」


 突如グランナーグルの動きが止まる。


「――や、やめっ! なぜ動けっ!? グゲェェェッ!?」


 口から悍ましい量の血を吐き出す。


「こ、これは……何が起こって……?」

「……体内で暴れまわっているのだろうか」


 その通りだった。


「うぉぉぉぉおおおおっ!」

「おねえちゃん!」


 アンジュが結界を張り、シルヴィアが暴れまわる。

 先ほどシルヴィアの攻撃を阻んだ固い鱗はここにはない。


 前を塞ぐ肉を断ち切りながら前に進む。

 最早グランナーグルに成す術はなく、ただひたすら真っ直ぐに突き進む。


 やがて――。


「グオォァァアアアーッ!!!」


 ひと際大きな断末魔が轟き、グランナーグルは絶命した。


「やった……! やりましたよ!」

「ああ……! 何て奴らだ!」


 ロクサーヌもハナブサも興奮を抑えられずに歓びの声を上げる。


「――っ! 出たぞ!」

「うん!」


 そしてグランナーグルの口から飛び出したシルヴィアとアンジュ。

 ドラゴンはそのまま重力に導かれるまま地面と衝突した。




「凄いですシルヴィアさん! 本当に――」

「ちょっと! そろそろ限界なんだけど!」


 シルヴィアに駆け寄るロクサーヌを止めたのはビビアンの声。


 彼女はシルヴィアたち仲間を信じ、ひたすら自分のやるべきことをやっていた。

 その結果、魔力の充填はとっくに完了していたが戦いの最中に放てるはずもなく、必死に維持していた。


「行くわよっ! 『バーン・リミットブレイク』!」


 先程のドラゴンのブレスと遜色のない、一点に集中された魔力が結界を穿つ。

 結界を破壊するには至らなかったが、そこに亀裂を生じさせる。


「いっけぇー!」


 ビビアンの叫びとともにさらに力が増す魔法。

 何としてもこじ開けると言う意志が、遂にその結界に穴を開ける。


「結界が破れた! 行くぞ!」


 ハナブサの声に、全員急いで結界の内部へと侵入する。


「ドラゴンとの戦闘、それに結界への攻撃! 奴がいつ逃げ出してもおかしくない! 急ぐぞ!」


 あのドラゴンのように強力な存在をこれ以上仲間にさせないよう、早く倒すしかない。

 これ以上逃がす訳にはいかなかった。


「アンジュ! どっちだ!?」

「あっち!」


 結界の内部だからか、より鮮明に感じる天使の気配。

 アンジュが指さす場所は山頂近くに見える館だった。


「あれは……貴族の館か? あんなところに……」

「そのようです。人里離れているから都合が良かった、と言うことでしょうか」


 こじんまりとしているが、立派な館が見えている。

 別荘なのか、そこに居を構えているのか不明だが、恐らくそこにいるのだろう。

 持ち主だった人間がどうなっているかはそう想像に難くない。


 数十kmは離れている程遠い。しかし、宛のない旅から初めて視認できた距離。

 長い間探し続けた怨敵がそこにいる。


「何でもいい! 急げ!」



 一行はロクサーヌの身体強化魔法を受け、敵を目指すのだった。


 ◆


「はぁ……はぁ……」


 他の者より体力のないビビアンの息が上がる。

 しかし、いつものように文句を言う様子はない。


「……休むか?」

「……いい!」


 ひたすら走り続ける。


 仲間の望む未来がもう少しなんだ。

 少し手のかかる妹たちみたいなものだ。

 私が面倒を見てやらなければいけない。


「泣きごとは! 後で言うから!」

「……付き合おう」


 気力で走り続けるビビアン。


 道中の魔物、他ではあまり見かけないような強力な魔物が多かったが、彼女が率先して倒していった。

 きっと、最後まではいけないから。せめて道中は……。


「……いや、少し休もう」

「なっ!? 私は大丈夫!」


 しかしシルヴィアは休憩を提案する。

 ビビアンとしては納得できなかった。足を引っ張る訳にはいかない、と。


「焦って失敗してもしょうがないからな。一度落ち着こうと思う。それだけだ」

「――そんなっ!?」

「ビビアンさん、あなたの力はこの先も必要です。お願いですから、休んでください」


 ロクサーヌが回復の魔法をビビアンに使う。

 失った魔力を回復することはできないが、身体的な疲労は幾分か和らいでいく。


 そうやって、必要としてくれているからこそ足を引っ張りたくない。

 そう思うビビアンだったが――。


「焦っても仕方がない。休むと決めたら休め」

「……わかったわ」

「うむ、私は周囲の警戒にあたろう!」


 『開放者』として気配はわかるが、強力な敵が多い中警戒を増すのは無駄なことではないと一行から離れるシルヴィア。




 そこに1つの光弾が飛来してきた。




 最初に気付いたのはシルヴィアだった。

 誰を狙ったものかわかったから。

 しかし、その光弾はシルヴィアが振り返ると同時に目標に到達した。


 次に気付いたのはハナブサ。

 常に警戒を怠らなかった彼も、その高い身体能力と視力で光弾に気付く。

 そしてその先にいる存在にも。


「アン――」


 一瞬。ほんのわずかな時の中。

 彼が選択したのは――。




「ぐぅぅぅっ!!!」


 アンジュを、彼の利き腕と引き換えに守ることだった。


読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/


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