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第47.5話 幕間 ロクサーヌの過去①

「すぅ……すぅ……」




 ビビアンとハナブサが情報収集という名の息抜きに行っている間。

 アンジュを寝かしつけた2人が話すこと、それは――。


「……私はやはり、2人で徐々に進めていければいい。時間をかけてゆっくりとでいいから……」

「あら意外ですね。シルヴィアさんは自身がリードしたいのかと思っていました」


 それは、その時が来たら、という事だった。

 もちろん、2人とも鼻から血を垂らしている。


「それも考えたが……そもそもリードする術を持っていなかった」

「……それもそうでしたね」


 ひたすら騎士としての鍛錬に明け暮れていたシルヴィア。

 知識としては幼い頃からある程度植えこまれたロクサーヌに教えて貰うことも少なくなかった。


「お互い不慣れなまま……それでもお互いを求め合うままに本能的にというのも……」

「……いい……!」


 目をぎらつかせながら語り合う2人。

 同じ目標を持つ仲間に出会えるのは、非常に幸運なことなのだ。


「それで……ロクサーヌはどうなんだ?」


 シルヴィアとしては、他の人がアンジュとそう言ったことになるのは筆舌に尽くし難い思いではある。

 だが、ロクサーヌになら妄想くらいなら許してやろう、そう思える程度には認めていたのだった。


「私は……シルヴィアさんにできないように私がアンジュ様を……」

「むむ……!」


 幼少期から、家庭の事情でそう言った知識はある程度持っているロクサーヌ。


「『ぼくをローちゃんだけのものにしてぇ……』と恥ずかし気に横たわるアンジュ様を優しく導くのもいい……ですが」

「……ふむ……!」


 彼女が頑なに愛を求める理由は、その家庭事情にあった。


「やはり『ローちゃんはぼくだけのものっ!』なんてアンジュ様に激しくめちゃくちゃに貪られたいでっす!」




 ◆◆◆




 ――ロクサーヌが旅に出る少し前。


「何見てんだよっ!」

「ぎゃん!」


 ロクサーヌを蹴り飛ばしたのは、彼女の父親だった。

 血は繋がっておらず、何人目かもわからない父親。


 このような父親がロクサーヌには何人もいた。

 聖女である彼女の母親が『開放者』を生むために、選ばれた父親が。


 ロクサーヌを蹴り飛ばしたこの男は、直前にロクサーヌの母親に『もう来なくていい』と告げられていた。

 そしてたまたまそこにいたロクサーヌを八つ当たりのために蹴ったのだった。


 この男はすぐに捕まり、2度と誰の眼にも触れられることはなかったが。




 そして、頭から血を流すロクサーヌは医務室で治療を受けた。


「大丈夫ですか……?」


 彼女を迎えに来たのは生まれた時から世話をしていた侍女、ジェシーだった。


「……お母さんは?」

「……聖女様は、お忙しいみたいです」


 ロクサーヌはそれが嘘だと知っていた。


 先の男と入れ替わりに、別の父親と共に寝室に入って行ったことを知っていたからだ。

 そこで行われていることもある程度教えられていた。


「お母さん……」


 母親とはほとんど関わったことがない。


 当たり前に経験するような母と娘の情緒的な関り、それどころか一緒に食事をしたこともほとんどない。

 日に日に顔から表情が消えていくロクサーヌを見て、ジェシーも気に病んでいた。


「ロクサーヌ様、聖女様は……その……」


 ロクサーヌを慰めようと、必死に言葉を選んでいるこの侍女の方がよっぽど保護者らしかったし、ロクサーヌもそう感じていた。


「いいのです。それより、今日もご本を読んで」


 それでもロクサーヌが腐らなかったのは、毎日のように彼女を想い、そして献身的に尽くしてくれていたジェシーのおかげだろう。


 この日、ジェシーが選んだ読み聞かせの本は家族の愛をテーマにした本だった。

 離れていても家族は愛で繋がっている、そんなよくある話。


 ロクサーヌの状況を慮り選んだものだった。


「(母親の……愛)」


 しかし寧ろ逆効果だったようで、無数の愛が散りばめられていた物語とは反対の自分の状況に悲しみを覚えるロクサーヌ。


 そして、物語と大きく異なることがもう1つあった。


「どうして私には父親がたくさんいるのですか……?」


 今回の物だけでなく、今まで読んで貰って来た家族が描かれている本、そのどれもが一夫一妻のものだけだった。


「そ、それは……」


 言葉に詰まるジェシー。


「それは、聖女様が御子様をたくさん産むためです……!」

「それには、父親がたくさん必要なのですか?」


 もちろん、そうではない。


 しかし真実をいう訳にはいかないと考え込むジェシー。

 それは単に聖女の好みの男をかき集めているだけなどと、口が裂けても言えなかった。


「……聖女様が愛に溢れているお方だからです! いずれも、聖女様が愛している殿方ですから……!」


 何層にも配慮を重ね、会心の言い回しをすることができたと誇らしく言うジェシー。


「……そう」


 ジェシーの言葉を受けたロクサーヌは一言、そう言うのだった。




「(……私には?)」

読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/


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