第47話 ウエス領首都
「さて、ウエス領の首都に着いたわけだが……」
各都市の大まかな特徴を上げれば、ノートン領は資源と農業、イース領は交易。
ここウエスは鉱山が多く、鉄を始め銀やミスリルなどの貴重な鉱石を産出していることで有名だった。
しかし、シルヴィア一行の目的はそれらではなく――。
「早速情報収集よ! 情報収集と言えばお酒! さぁー! 今夜はパーッと行くわよ!」
「あ、おい! ちょっと――」
シルヴィアが声を上げる頃にはビビアンの姿は点となっていた。
「……まぁいいか。ハナブサ、ついて行ってくれるか?」
「いいだろう」
シルヴィアたちは宿に向かい、ハナブサはビビアンを追いかけて行った。
◆
「かぁー! やっぱ冷えたエールは最高ね!」
「いいぞ姉ちゃん! もっと飲めや!」
華やかな見た目と飲みっぷりで瞬く間に酒場の注目を集めるビビアン。
「そんなに飲ませてどうするつもり……じゃなかった、悪いわね。今日は男がいるの」
「ちぇっ! 男連れかよ!」
酒は飲む。単純に好きだからだ。
しかし今のビビアンにはしっかり目的意識があった。
「この辺でさぁー、魔王とかいない? 天使とか! あたし『開放者』様なのよねー!」
幾分か思考と言葉がシンプルになってしまうのは仕方がなかった。
「なんだ姉ちゃん、魔王を倒してくれるのか?」
「そりゃいい! 美人で強くて……最高じゃねぇかっ!」
ガハハと大笑いする酔っ払いたち。
「魔王と言えば……最近あまり出た話は聞かねぇな!」
「そう言えば、中央の方でアースドラゴンが出たらしいぜ!」
それは先日自分たちが倒したやつだろう。
「残念ね。ここらで魔王を倒して……パーッとやりたかったのにぃー!」
「いいぞ姉ちゃん!」
「応援してるぞー!」
グイっと冷えたエールを飲み干すビビアンと騒ぎ立てる周囲の男たち。
「……ふぅ」
壁際に立ち、様子を窺っていたハナブサ。
どうやらここでは情報を得られなさそうだと落胆した時だった。
「ここ最近本当に出ないよなー」
「そうだな。それどころか、近くにいた魔王が突然いなくなったなんて話も聞いたぜ!」
「そうなのー? この辺は平和ねー!」
「おうよ! 仮に魔王が出てきても俺らが叩きのめしてやるってんだ! はっはっは!」
完全に頭が回らなくなっているビビアンに代わり、ハナブサが問いかける。
「その、魔王がいなくなったって言うのは……どこのことだ?」
「あ? いきなりなんだ兄ちゃん……その話を聞きたかったらよぉ……」
話しかけられた男が突然脱ぎだす。
すると周囲から黄色い歓声が、一部野太い歓声が上がる。
「やろうぜ! アームレスリンッ!」
「……いいだろう」
それに応えて脱ぎだすハナブサ。
その服の下に隠されていた、引き締まった肉体を披露する。
「……ふーん」
意外といい肉体をしていたハナブサに、ちょっとだけドキッとするビビアン。
「よーしっ! かかってこいやっ!」
「ふっ! 後悔するなよ!」
ガシッと互いの手を握り合う2人の漢。
「やったれや!」
「俺は兄ちゃんに賭けるぜっ!」
周囲も勝手に盛り上がる。
そして始まる男と男の意地のぶつかり合い。
「うおりゃぁぁぁあああ!」
「ふっぬぉぉぉおおお!」
……。
……。
……。
「ふっ……いい、筋肉じゃねぇか……負けたぜ……」
「あぁ。お前もなかなか鍛え上げられていた。素晴らしい戦いだった」
無事に情報を入手したハナブサだった。
◆
「ウエス領から更に南西に向かった先に奴がいる可能性が高い」
一夜明け、二日酔いの頭痛とダルさとほんの少しの満足感を抱えたハナブサが、彼らの得た情報を伝える。
「よくそこまでの情報を得られたな」
素直に驚くシルヴィア。
「まぁ……みんな仕事終わったら飲むからね。気になる情報はすぐ広まるんでしょ」
「ふむ……そんなもんか。私も今度酒場に行ってみるか」
「……ちなみに、ジュース類は一切置いてなかったぞ」
ならば行くことはないだろうと、さして残念でもなさそうに呟くシルヴィア。
「何でお酒飲まないのよ? あんたそろそろ成人でしょ? 別にいいじゃない」
「私は最初にお酒を共にする相手は決めているからな!」
そう言ってアンジュを見るシルヴィア。
「言うと思ったけど……それ、どちらかと言うと父親的願望じゃない?」
「……」
その後しばらく落ち込んでいたシルヴィアを連れ、更に西を目指す一行だった。
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