第46話 ドラゴン討伐の報酬
「待たせたな」
行商人と別れた村に戻って来たシルヴィアたち。
「さすがにデカいし臭いしでここまでは持ってこなかったが、近くまで頭を持って来てあるぞ」
何も証拠がなく討伐したと報告しても信じて貰えまいと持ってきたのは生首だった。
程よい気温も相まって、生首を直接持っていたシルヴィアは――。
「うっ! な、なかなかに壮絶な戦いだったようで……村の宿にお風呂がありましたから、先に休まれては如何でしょうか?」
「……アンジュ?」
そう言えば道中みんな離れていたなと思い当たったシルヴィア。
「……うん」
全てを察し、シルヴィアに抱き着くアンジュだが呼吸はしていない。
もって十数秒だろう。
「……くっ! 風呂を貸してくれー!」
アンジュを抱きかかえ宿屋に駆け出すシルヴィア。
「それでもアンジュ様を連れて行くんですね」
「最早病気よ……」
ドラゴンの首の案内をハナブサに任せ、2人も宿屋へと向かう。
幸いなことにこの村は宿場としてある程度栄えていたため、宿屋に風呂もあった。
もしそうでなかったら……思わず身震いする2人だった。
◆
――翌日。
「次の目的地だが……ウエスのさらに西にまで足を伸ばした方がいいと思う」
ハナブサがそう提案する。
現在一行は王国から西に位置するウエス領に向かっていた。
ハナブサとしては、さらに奥の方まで行った方がいいと考えたようだ。
「何故だ?」
「彼の天使は配下となる存在を探しながら移動している。魔王級のアースドラゴンが放置されているとなるとこの辺りにはいないと思う」
長い間天使を追って来たハナブサが言うのだから、その推察の方が正しい。
シルヴィアたちもそう思ったようで――。
「よし、ではそうしよう!」
進むべき道を確認した一行。
話が終わるのを見計らっていたかのように、行商人が話しかけてくる。
「準備は如何ですか? そろそろ出発しようと思いますが……」
「うむ! 前進あるのみだ!」
行商人たちがこの村で足止めを食らっている間、この村に様々な物資を落としていった。
それに加え、昨夜はドラゴン討伐を祝っての宴会が催された。
そんなほくほくの村人たちに見送られ、一行はウエス領に向かう。
「この村ともお別れだな!」
「ばいば~い!」
馬車の中から無邪気に村人に手を振るアンジュ。
「この村を超えるとウエス領に入るそうだ」
「もう中央ともお別れですね……はて、何か忘れているような……?」
ロクサーヌは何か重要なことを忘れている気がして考え込む。
「『貴族に言い寄られなくてよかった』か?」
「ああ! そうでした! 本当に良かったです!」
前回聖女として訪れた際に相当嫌な思いをしたのだろう、ロクサーヌが本当に嬉しいと言った様子で喜んでいる。
「ビビアンは最初から大丈夫だと言っていたな。どうしてだ?」
「そりゃ……」
チラッと嬉しそうにはしゃいでいるロクサーヌを見る。
その姿は純朴で可愛らしくて……どこにでもいるような女の子だ。
「『私は聖女です』なんて言わなければ……ただの白い服着た女の子だもの。ちょっと芋めな」
「……? ……!? ――! ――!!!」
戦争が始まった。
「失礼します。先日のドラゴン討伐報酬の件ですが……」
「あぁ、そう言えばそうだったな」
「お連れ様からお聞きしましたが、馬車をご所望だとか」
「あぁ……はぁ!?」
ビビアンに問いただそうとしたシルヴィアだが、既にいない。
彼女は少し離れたところでロクサーヌに追い回されているところだった。
「……」
「村に滞在を余儀なくされたこともあり……ちょうど1台分空きます。どうでしょう、ドラゴンの頭と諸々含め、この馬車をそのままお使いいただくと言うのは」
無理言ってシルヴィアたちに頼んだと言うのもあるが、そもそもドラゴン討伐の報酬をこの行商人が払う必要はない。
それでも、誠実に対応とする姿勢に感銘を覚えたシルヴィア。
「うむ、そちらが良いと言うのであれば願ってもないこと! ぜひ頼むよ」
「良かった、ありがとうございます!」
その後は何事もなくウエス領の首都に辿り着いた一行だった。
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