第43.5話 幕間 ハナブサの過去②
「(……見つけた)」
ヒエンの指した方向へと駆け続けること数分。
4匹のゴブリンが一目散に駆けているところを、離れたところで見つけたハナブサ。
「(……このまま、巣まで案内してもらうか)」
例えここで目の前のゴブリンを屠ったとしても、まだ何匹も代わりが出てくる。
そうではなく、元凶を叩いた方がいいと判断したハナブサ。
自身と比べ、遅い歩みのゴブリンにやきもきしながらも、気配を消して後を追うハナブサ。
それを遥か上空で見つめている霧のようなものには、終ぞ気が付かなかった。
「(計画通り……! あの男は少々手に余りそうだからな……)」
その霧がたくさんの食料……人間の集落を見つけたのは数日前。
人数も適度に少なく、生きのいい人間も多い。
しばらく観察していると特に際立つ力を持った男がいた。
そのため、ゴブリンの群れをけしかけ、戦力を分散させる計画を立てた。
「(まさか本人が行ってくれるとは思わなかったが……ありがたくご馳走になるとするよ!)」
◆
「……ここか」
既に日が昇り始めた頃、ハナブサはようやくゴブリンの集落へと辿り着いた。
そして巣に辿り着いてしまえば、後はやることは1つだけ。
「悪いが、滅ぼさせてもらうぞ!」
「ギッ!?」
「グギャギャ!?」
突如現れた襲撃者に慌てふためくゴブリンたち。
その混乱に乗じ、次々と首を跳ねていく。
「はぁっ!」
「ギャァァッ!?」
ハナブサの使える魔法は単純な身体強化のみ。
しかしそれで十分だった。
元より高い身体能力に自慢の剣技。
ゴブリンの群れ程度に後れをとる彼ではなかった。
……。
……。
……。
「……グ、ガガ……」
「ゴブリンロードもこの程度か。これならば、村で迎え撃っても良かったか……?」
しかしそれでは戦えない人も巻き込んでしまう。
多少疲れたが、これでよかったのだと考えなおし、踵を返す。
「追跡に時間をかけてしまった……早く戻ろう」
そうしたらガクに、アゼリアに。
元気いっぱいの我が子と、いつも優しく見守ってくれる妻。
自身を迎えてくれる者たちを想いながら帰路につく。
それが、もう2度と叶わないなどとは夢にも思わず。
◆
「……?」
ハナブサが村に戻って来ると、そこには誰もいなかった。
もう昼を過ぎている時間だ。
仕事を休んでいるにしろ、子どもたちまで姿が見えないのはおかしい。
訝しみながら、自宅へと歩みを進める。
「ただいま――」
家の扉を開け、そで目にしたのは――血まみれで倒れているアゼリアとガク。
「……お、おい……?」
抱き合いながら、微動だにしない2人。
「起きろ……起きてくれガク! 父を……俺を驚かそうとしているだけなのだろう!?」
返事はない。
「アゼリア! お前までこんなマネを……! やめてくれっ!」
返事はない。
「な、なぁ……!」
ようやく、勇気を出して2人に触れる。
「――っ!!!」
嫌でも理解してしまった。
その体が冷たく、硬かったから。
「――っ!!!」
思わず家を飛び出す。
「ゴウカ!? ゴウカ!!!」
友の名を呼び、家に飛び入る。
「……」
身重の妻と、幼い息子を庇いながら死んでいた。
「……」
会う度に自慢していた娘とともに、ヒエンが死んでいた。
「……」
村の長も、近所のご老人も、他にもたくさんの仲間が、家族が、死んでいた。
「そんな……こんなことが……」
どうしてこんなことになったのか。
自分がゴブリンに執着しないで村にいればよかったのか。
一体誰が……。
「魔物めぇ……っ!!!」
決まっている。
ゴウカもヒエンも、他の男たちもみな戦いの心得は持っていた。
それをほとんど抵抗も許さず、一方的に惨殺できる存在。
「魔物だろうが……魔王だろうがっ! 必ず滅ぼしてやるっ! 根絶やしにしてやるぅぅっ!」
自身への怒り、魔物への深い憎しみ。
「うおおおお……うああああぁぁぁ……」
彼の慟哭を聞くものは、誰もいない。
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