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第43話 よくある話

「逃げろー!」

「きゃー! どなたかー!」


 馬車で進む道中、鳥の魔物に襲われている集団と出くわした。


 基本的には安全と言われている街道だが、こうして平然と魔物が襲ってくることも珍しくない。

 そのため、騎士団などを護衛として雇い、万が一というには高い可能性に備えて移動するのだ。


 シルヴィアたちも、今回はそのような行商人に金を払い、便乗させて貰っていた。

 しかし、前方の集団を襲っている今回の魔物は、その護衛では手が負えない様子だった。


「ロック鳥だ! 馬車ごと連れて行かれるぞ!」

「姫様を守れー!」

「くぅっ! 高く飛んで急降下……手が出せん!」


 どうやら、高貴な立場の女性が馬車に乗って優秀な騎士団が警備しているが空を飛ぶ巨大な鳥の魔物に手も足も出ない、という場面の様だ。


「……俺が行こう!」

「あっ! ちょっと待て――」


 有無を言わさずハナブサが駆ける。

 まるで魔物は全て自分が倒すと言わんばかりに。


「ま、拙いですよ……これは……物語でよくある展開!」

「……何?」


 ロクサーヌがある種の確信を以て、駆けるハナブサを視線で追う。

 その表情は拙いと言うよりもこれから起こることに期待を寄せているものだったが。


「何故か街道を行くお姫様のピンチに颯爽と駆けつける男性がお姫様を救い、そのお姫様に惚れられてしまう展開!」

「じゃ、私はその姫様の護衛の男とイケない恋に走る役目ね!」

「何だそれは? それだけで惚れられるのか?」

「おじさん! かっこいい!」


 それぞれが勝手な感想を言い合っているなか、あっと言う間にロック鳥を倒してしまうハナブサ。


 件のお姫様が外に出て来てハナブサと話している。

 遠目から見てもお姫様の周囲に桃色な空間が展開されていた。


「拙いですよ拙いですよ!」


 目の前で繰り広げられているラブなロマンスに興奮を隠しきれないロクサーヌ。


「ふむ。私ならば、恥ずかしくてあんなことはできない。せめてあの鳥くらいは軽く処理できる程度に鍛錬を積んでから――」


 男に言い寄る前にすべきことがあるのではと考えるシルヴィア。


「……」


 何を考えているかわからないビビアン。


「わぁ~! おひめさまだぁ~!」

「なっ! アンジュはああいう女が好きなのか!?」

「聖女ならいますよ! ここに! どうですか聖女!」

「お前ら、落ち着け」


 目の前で魔物が現れたと言うのに緊張感の欠片も持たない一行。

 そこにハナブサが戻って来た。


「……待たせたな」

「おや、お姫様はよろしかったので?」


 何事もなかったかのように1人で戻って来たハナブサに、残念そうな声でロクサーヌが尋ねる。


「ん? あぁ……ああいう手合いは慣れているからな。姫様の感情も一時的なものだと諭して理解してもらった」


 外を見ると、その姫様が名残惜しそうに手を振っている。

 どうやら先に行くまで見送ってくれるようだ。


「そんな……どうして! 可愛くて素敵なお姫様なのに!」

「いや、そもそも俺は目的があって旅をしているのだから……無理だ」


 その通りだった。




「ばいば~い! おひめさま~!」

「さよ~なら~!」


 無邪気に手を振るアンジュとお姫様。

 お姫様の横で行商人側の人間と護衛の責任者らしき人間が何やら話し合っていたが、気にしないことにしたシルヴィアたちだった。


「……」


 ◆


 夜になる前に宿場を兼ねた小さな村に着いた一行。


「では明日もご一緒するのでしたら、朝に村の出口にてお願いします」

「あぁ、よろしく頼む」


 シルヴィアたちは行商人たちとは別に宿を取らなければならなかったが、幸いにも部屋は2つ空いていた。


「1つは2人部屋、もう1つは1人部屋……」

「仕方がない、私とアンジュは1人部屋だ。仕方がない。お前らは2人部屋を使っていいぞ」

「え、嫌です。さすがに」

「……俺は近くで野宿するぞ」


 少し気まずさを感じたハナブサが自ら提案する。

 そこに――。


「ぼく! おじさんといっしょ!」


 アンジュがハナブサに抱き着きながら同じ部屋で寝たいと言う。


「なっ! アンジュ……」

「ま、それなら問題ないかもね。私たちが2人部屋で、誰かが床で寝れば」


 それでも男性と同室だったり野宿よりはマシだと考えるビビアン達。


「しかし……」


 問題は、アンジュとハナブサが2人きりになることだが……。


「……俺は野宿――」

「いっしょにねよっ!」

「野宿――」

「いっしょっ!」

「……」

「おねがいっ!」


 何度もしつこく食い下がるアンジュ。

 1人だけ野宿をすることになるハナブサに気を使っているのもあるが、この機会に一緒に寝たかったのも事実だった。


「しつこいっ! 俺はお前とは馴れ合わないっ!」


 ついにハナブサが怒りを爆発させる。


「――ぁ」


 アンジュが悲しそうに目を伏せた。

 シルヴィアも今回は咎めることが憚れた。




「……俺は1人でいい」


 ハナブサの叫びが、拒絶ではなく悲痛なものに感じたから。

読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/


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