第40話 辻切
「やっぱ馬車はすげぇよ」
王都と各地を結ぶ定期便の馬車にゆられること数日。
特に何事ともなく王都にまでたどり着いた一行。
今回はちゃんと街道を進んだため、順調に目的地に着いた。
視界も開け、道もある程度整備されている街道。
そもそも魔物の数はそんなに多くないため、獣道を通らないかきり遭遇することはさほど多くはなかった。
とは言え、そこは魔物。
街道だとか獣道だとか関係なく襲ってくる魔物も当然おり、移動が命がけなのには変わりなかった。
「道中魔物に出くわさなくて良かったですね」
「うむ。剣の腕が鈍っていないか心配だ!」
「おうまさん……またねー!」
王都。
この国だけでなく、他国からの情報や資源が集まる場所。
そして様々な人も集まる場所だった。
「そろそろかしらね~……」
しばらく王都の道を進んでいると、ビビアンが意味深に呟く。
「何がだ?」
「私たちみたいな美女が3人もいるのよ? そうなれば寄ってくる訳よ、イイ男が!」
子どもを連れている妙齢の女性に声をかける者がいるとは……。
やはり王都は爛れた都であると、ロクサーヌは気を引き締める。
ちなみに、アンジュは翼とハイロゥは隠していた。
「ふっ!」
「――っ! 何をする!」
その時、突如アンジュに斬りかかる男が現れた。
寸でのところでシルヴィアが刃を受け止める。
ビビアンの警告のおかげで難なく阻止できたと内心感謝するシルヴィア。
「貴様っ! 何をしているかわかっているのか!」
「お前たちこそわかっているのか? そいつは魔物だぞ!」
アンジュの気配に気づいているこの男は間違いなく『開放者』。
「アンジュは魔物ではない! どう見ても天使だろう!」
「天使? まさか……2体目? だが――」
「……む?」
男は怪訝な顔でアンジュを一瞥する。
男の、『2体目』と言う言葉に反応するシルヴィア。
しかし――。
「――それでも殺すっ!」
「お前が死ね!」
「がふっ!?」
再度斬りかかろうとした男を思いっきり殴り飛ばすシルヴィア。
都を守る外壁に強かに打ち付けられた男は、しかし立ち上がった。
「ぐぅ……まさかこの俺が反応できないとは……っ!」
「なっ!? 殺す勢いで殴ったのにっ!」
お互いの高い実力を察し、驚愕の表情を浮かべる。
「――かくなる上はっ!」
「――私も本気を出そう!」
そしてお互いに死合うため、魔力を開放する。
譲れないものの為に引けない戦い。
「まって~!」
それを止めようと間に入ったのは、狙われている張本人だった。
「アンジュ! 危ないから下がっていろ!」
「おじさん! ぼくだよ! あのときは――」
「魔物に知り合いなどいない!」
しかしそれは逆効果だった。
男は尚更怒りを込め――。
「衛兵さん! あの人です! 急に私たちを襲ってきたんです!」
「そこの男! それ以上暴れるな!」
「……」
神妙にお縄についたのだった。
街で暴れたり人を突然斬り付けたら捕まる。
当然のことだった。
◆
「さて、本音は今すぐ殺してやりたいが……貴様は気になることを言っていた」
「……」
鉄格子を挟んで先程の男と話すシルヴィア。
「お前、天使が2体目と言っていたな。どういうことだ?」
「……」
「……もし正直に話すなら、お前の釈放に手を貸そう。もちろん、アンジュに危害を加えないと言うことも約束して貰うが」
沈黙を貫こうとする男だったが、シルヴィアの提案にしばし考え込む。
「……確かに言った」
「――っ! 会ったことがあるのか!? どこで会った!?」
喉から手が出るほど欲していた情報。
それが今目の前にあった。
「……それを聞いてどうするつもりだ?」
「殺す。生まれてきたことを後悔させながら、惨めに! 残酷に!」
「……シルヴィアさん、落ち着いて」
感情を抑えられなくなったシルヴィアに代わり、ロクサーヌが会話を続ける。
「あなたも天使を討伐する目的がある、そうですね?」
「……そうだ」
姿を隠匿している状態のアンジュを天使だと知った上で尚殺そうとした。
この男も天使に対して並々ならぬ思いを持っているに違いなかった。
「私たちも……大切な人の仇として追っています」
ちらりとアンジュを見やりながら会話を続ける。
「その天使は……いや、人間? 混ざっている……?」
冷静になり、改めてアンジュを見た男がようやくアンジュの気配の違和感に気付く。
「そうです。あの子は……恐らくあなたが追っている天使の被害者です。どうか、あの子を傷付けないと約束してくれませんか?」
「……」
長い沈黙の後、男が答えた。
「……いいだろう」
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