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第39.5話 幕間 おしゃれ勝負

「はぁ……」


 王都へと向かう道中、憂鬱そうにため息を吐くロクサーヌ。

 アンジュのため王都へ行くことには賛成したが、憂鬱なことには変わりがなかった。


「だから大丈夫だって!」


 ビビアンは確信を持ってロクサーヌを励ます。


「……理由は言えないんですよね? 本当に信じていいんですか?」

「まぁ、ね……うん、絶対大丈夫よ、多分!」


 確信はあるが歯切れ悪く、そして答えも言わないビビアン。


「(言ったらどうせ怒るもの。それにしても……)」


 彼女はロクサーヌを見つめる。


「……あんたら、オシャレとかしないの? アクセサリーとかつけたりさ」


 唐突にそんなことを言い出したビビアン。


「アクセサリーですか……? 私は別に……」

「私もだな! 自分磨きは鍛錬に限る!」

「……」


 2人ともベースは悪くない。


 シルヴィアはまたバカなことを言っているが、女性すら羨むプロポーションを持ち、顔も最低限手入れをしている。

 ロクサーヌは……。


 そう、問題はロクサーヌだった。


「でもさ、さらに可愛く着飾ればアンジュも喜ぶんじゃないかしら?」


 少しだけロクサーヌを不憫に思い、そんな提案をする。


「そ、そうですか? アンジュ様!」

「? うん!」


 よくわからないが、とりあえず頷くアンジュ。

 彼の純粋で素直な性格は、大抵のことに同意をしてしまう。時にそれは良くないことであった。


「しかし……私はそういったことはあまり……」

「――!」


 ここに勝機を見出したロクサーヌ。


「でしたら! 次の街でどちらがアンジュ様に気に入って貰えるか勝負しませんか? 勝った方が頭ナデナデ!」

「えぇ……」


 なぜそんなことをしなければいけないのか。

 自分を着飾るだなんて……。


 全く乗り気ではないシルヴィアだったが――。


「もちろん不戦勝でも! ナデナデ!」

「……わかった」


 あまりに必死に勝負をしたがるロクサーヌに、仕方がなく同意してあげることに。

 ロクサーヌにならば撫でさせるくらいならいいかという思いもあった。


「(勝ったな)」


 ロクサーヌは確信した。


 この女騎士はお洒落のことなど毛ほどもわかっていない。

 私は敢えて身に着けていないだけでおしゃれには詳しいのだ。

 私が頭を撫でられるのを指を咥えて見ているがいい。


 ロクサーヌはほくそ笑むのだった。


 ◆


「どうですか?」


 街に辿り着き、早速アクセサリー屋にて試着をする。


 ロクサーヌの両手の指に、これでもかと嵌め込まれた指輪。

 幾重にも重ねられたネックレス、頭のサイズが倍に見えるほどの髪飾り、何故か王冠も被っている。


 とにかく量。そして派手さ。

 それがロクサーヌのアクセサリーを選ぶ基準だった。


「……ピカピカ!」

「かわいいですか? そうですよね? ナデナデしたくなりますよね?」


 カラスかドラゴンならばそう言ったかも知れない。

 少なくとも、頭を撫でるのに王冠は邪魔だった。


「えっとぉ……」

「(ワクワクドキドキ!)」


 しかし彼は天使だった。


「い、いっしょ……!」


 自身の頭上のハイロゥを指し、笑顔を向ける。

 なんとか捻り出した感想にロクサーヌは――。


「勝った!」


 会心の勝利の笑みを浮かべた。


「……はぁ」

「……え、えへへ~……」


 何とも言えない顔をするビビアンと苦笑いを浮かべるアンジュ。

 どうしてこれで勝てると思ったのか、全く理解できなかった。




 一方のシルヴィアは――。


「私にアクセサリーなど……」


 今まで鍛錬に明け暮れ、自身を着飾ることなど考えもしなかった彼女は何を選べばいいのかわからなかった。

 常に自信溢れる彼女も、こういうことには弱かったようだ。


「指輪は剣の邪魔になる。腕輪も鎧の邪魔に……となると」


 無難にイヤリングか、髪飾りか。


「兜の邪魔にならないようなものがあればいいが……」


 しばらく店の中を見て回る。

 すると、1つ気になるものが目に入った。


「これは……可愛らしいが、私なんかに似合うだろうか……」




 そうして見つけたアクセサリーを身に着け、アンジュの元へと戻ってきたシルヴィア。


「わ、私はこれだっ! ……どうだろうか?」


 いつもと異なり、弱々しく尋ねてくるシルヴィア。


 その頭には、花をあしらったシンプルな髪飾り。

 暗い配色の花だが、明るい髪色がよく映えて見える。


「……ぁ……」

「……や、やはり似合わないか?」


 何やらモジモジしているアンジュ。

 そんなに感想をいいにくいのかと落胆するシルヴィア。


「か……」

「……か?」

「かわいい……」


 そう言ってシルヴィアに抱きつき、顔を埋めるアンジュ。

 どうやら、言葉にするのが恥ずかしかったようだ。


「そ、そうか!? 正直、私なんかがこんな……」

「ううん……すっごく、おねえちゃん、かわいいよ……」


 照れながらも、しっかり答えるアンジュ。


「……ありがとう! アンジュにそう言って貰えるのが1番嬉しいぞ!」


 そんな彼をギュッと抱きしめる。

 ちゃんと選んで良かったと思いながら。いつも幸せをありがとうと感謝しながら。




「むっきー! どうしてですか! どうしてですか!」

「……当然の結果ね」


 ロクサーヌには今度アクセサリーの選び方を教えてあげよう。

 こっそり決意したビビアンだった。


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