第35話 完全敗北
「降参するなら今のうちよ!」
ロクサーヌが警報を鳴らすほどの魔力の大きさ。
それに反して小さく圧縮された魔弾。
「問題ない!」
「……知らないわよ、本当に」
しかしそれを問題ないと豪語して見せるシルヴィア。
ビビアンにとってそれは、自身の魔法を否定されたも同然だった。
「お前を仲間にして良かった! おかげで……私はまだまだ強くなれる!」
ビビアンを真似て右手に闘気を集め出すシルヴィア。
自身が必死に培ってきたものを容易く再現してしまったビビアン。
「闘気を集中……いいな、これ!」
「――っ! 本当にっ! 死ねぇっ!!! 『火炎弾・極』」
怒りとともに、ビビアンの超圧縮された魔弾が発射される。
「ふん!」
一点集中型の極み。
時間をかけて何度も何度も圧縮されたそれは、小さな山なら貫通し抜く威力があるだろう。
それを、シルヴィアは右手だけで打ち払った。
上空に逸れた魔弾は雲を割り、大気を割り、遥か彼方の空まで飛んで行った。
「うっそぉ……」
「……うわぁ……」
「わぁ~!」
まさか自身の人生をかけて培ってきた最強の魔法があんな簡単に破れるとは、と嘆く者。
何もかもを破壊しそうな魔法を容易く防いだことに驚く者。
おねえちゃん凄いと感嘆する者。
三者三葉の呟きが、この戦いの終わりを知らせていた。
「……完敗よ。煮るなり焼くなり好きにしなさい」
一応、と言うことで顔面を強かに殴られ鼻血を出しながら倒れているビビアンが白旗を上げる。
「いや、そんなことはしないが。模擬戦だしな!」
「……」
本来の目的を忘れ、本気で殺しにかかっていたビビアンだった。
「……」
「……治して欲しい? それ」
「……お願い致します」
その結果、当初の予定通り上下関係がはっきりしたのだった。
◆◆◆
「……やっと人里に……うぅ……」
数日後、ようやく人里に戻って来たシルヴィアたち一行。
「ふむ、ディザイサイト程ではないがなかなか大きい街だな!」
「ここは……ってシーサイトの街じゃない!」
ディザイサイトから歩いて半日ほど、そこは白い砂浜が広がる海の街だった。
「ほう……!」
「海……!」
「う……!」
見渡す限りに広がった、青い海。
初めて見る光景に感嘆の声が漏れる3人。
「よっしゃー! 海! 男! 行くわよー!」
山とはまた違った雄大な自然に呆気にとられている3人を置いて、ビビアンが駆け出す。
もしかしたら1番元気なのでは、そんなことを思いながらもビビアンを止めるロクサーヌ。
「あ、ちょっと待ってください! 先にやるべきことをやらないと!」
「はん?」
その後、ここでも天使の慈善事業をやるロクサーヌ達だった。
◆
――翌日。
「さぁ! 今日こそ海よ! 私の美貌を見なさい!」
露出の高い水着、所謂ビキニに身を包んだビビアンが現れた。
豊満な胸をこれでもかと寄せては上げ、見る男のテンションも上げていく美しさだ。
この世界の水着は生き物から取れる素材を用いて作られている。
特に、シーピッグと言う魚の皮は肌触り、染色性に優れており様々なバリエーションの水着が開発されていた。
「おまっ! そんなの完全に下着じゃないか!」
シルヴィアはスポーツタイプ。
タンクトップのようなトップスに下は短パンのようなショーツ。
豊満な胸と引き締まった肉体を残念ながら隠してしまっていた。
「ふふ、シルヴィアさんはわかってませんね」
続いて現れたロクサーヌが着用していたのは割と良く見られるタイプの水着。
しかし随所にフリフリした謎の装飾が付いていた。
「何?」
「水着を着る、つまり……アンジュ様にどう思われるかの勝負ですよ?」
「――っ!?」
完全に抜かったという表情をするアンジュと勝ち誇った顔のロクサーヌ。
「……ふっ」
「カッチーン!」
しかし、ロクサーヌを……主に胸を見て勝ち誇った顔をするビビアン。
誰がこの海の主役かは最初から決まっていたことだった。
「おねえちゃ……」
最後に更衣スペースから出てきたのはアンジュだった。
慣れない水着の着用に加え、本当にこんな格好で出るのかと不安で出てこれなかったのだ。
「あぅ……」
ごく一般的な水着。
それで良かったのだ。十分なのだ。
白く美しい肌。反対に恥ずかしさに紅潮している顔。羞恥心から溢れる涙を堪えている。
胸を隠すように体を抱き、内またでもじもじとしながらそれでも必死にシルヴィアの元に寄ってくるアンジュ。
「何であんたが1番恥ずかしそうなのよ」
「ぶべぇっ!」
「ぶばぁっ!」
白い砂浜を赤い鮮血が染め上げる。
「何でよ……」
こいつらと一緒にいてはいけない。
そう判断したビビアンだった。
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