第34話 山頂でマウント取ってくる系女子(28)
「ちょっと! ペースが早い!」
……。
「ちょっと……疲れたんだけど……」
……。
「ちょっ……休憩……」
……。
◆
「……ロクサーヌがいかに頑張っていてくれたかわかったよ」
「……恐縮です」
何度目かの休憩中、ついボヤいてしまうシルヴィア。
「これでは……いざ魔王と戦うときに動けるのか心配だな……」
「彼女は純粋な魔法使いタイプのようですし、魔力さえあれば問題ないかと……多分」
基本的に開放者には魔法使いタイプが多い。
シルヴィアのような体力筋肉至上タイプは寧ろ珍しいのだった。
「……」
そして2人の会話をしっかり聞いていたビビアン。
彼女の心に昏いものが去来するのも当然のことだった。
◆
「わぁ~!」
アンジュが感嘆の声を上げる。
一行は遂に山頂に辿り着いたのだ。
「やりましたね!」
「あぁ! どうだビビアン! 山登りもいいものだろう!」
「……疲れただけですけど?」
苦しい試練に耐え、そこを超えた先にある絶景。
これこそがシルヴィアたちの求めていたもの。
しかしビビアンはにとってはそうではなかったようだ。
「そ、そんなぁ……」
「……こんな探し方して、結局無駄に疲れただけじゃない」
「し、しかし! いい鍛錬にも――」
「ならんわ! 傷もできるわ虫に刺されるわ足はパンパンだわ! こんなこと毎回やってられないわ!」
そんな元気があれば大丈夫じゃ、などと言ってしまった日には戦争となるだろう。
彼女が発する怒りはそう思わせる凄味があった。
「ちょうどいいわ! 勝負よシルヴィアとやら!」
「ちょっ! どうしてそんな……」
元気があるのよ、とは言えないロクサーヌ。
「私はね、誰かに指示されるのが嫌いなのよ」
「まさか逃げるつもりか……?」
仮に逃げたとしても、ディザイサイトの裏組織から狙われることになる。
それはわかっているため逃げるつもりは毛頭ないビビアンだったが――。
「別に逃げやしないわよ。けど、この中で誰が1番上かハッキリさせておこうと思ってね」
「お前が1番上だぞ! 年齢はな!」
ビビアン=イーストエンド。28歳、独身。趣味ギャンブル。借金持ち。
「死ね死ね死ね!」
別に結婚願望はない。
ないが、『まだ結婚してないの』とまるで結婚することが至上かのような価値観を押し付けてくる奴らが大嫌いだった。
「こっちは! 好きに生きてんのよ!」
「一体彼女に何が……」
ロクサーヌが思わずボヤくほど、ビビアンの表情は鬼気迫っていた。
「ふむ、それがお前の魔法か!」
「違うわよ! 見てなさい……」
怒りに任せ魔法の弾を乱射していたビビアンだったが、今度は人差し指をシルヴィアに向ける。
「『火炎弾』」
人差し指に圧縮された炎属性の魔法、それを1点から放つ。
「ほう! 高密度の炎か? 確かに速さも申し分ない!」
シルヴィアはそれを避けずに弾き返す。
多少熱さは感じたが、それだけだった。
「くっ! まだまだよ! 『火炎弾』」
人差し指から連続で発射される火炎弾がシルヴィアに向かって行く。
「ふん! 甘いぞ!」
さすがに受けきれないと思ったか、シルヴィアが横に避けながらビビアンに向かって行こうとするが――。
「甘いのはそっちよ! 『火炎弾・嵐』」
今度は人差し指だけでなく、両手いっぱいに指を広げてその全てから火炎弾を放つビビアン。
「おお! これもなかなか!」
シルヴィアも必死にかわし続けるが、徐々に危ない場面が増えてくる。
「ていうか! 何でかわせるの!? シルヴィアさんはまだ――!」
「これではさすがに近づけないな! 仕方がない!」
ロクサーヌが驚愕すると同時、シルヴィアが『闘気』を発する。
ビビアンの炎弾は全てシルヴィアに当たり、そして何も効果を与えられなかった。
「はぁっ!? な、何よそれぇ……てかやっぱりあんたも『開放者』だったの……」
「いや、これはアンジュがくれた力……愛だ!」
言いながら、ゆっくりビビアンの方に近付いていく。
「……いいわ。私の必殺技を見せてあげる。これを防がれたら私の負けでいいわ! だからそこで止まりなさい!」
はっきり言って近づかれたら瞬殺されてしまう。
だからそうなる前に殺さなければいけない。
「ふぬぬぬぬぅーっ!」
女性がしてはいけない顔と声を出しながら、右の人差し指に魔力を集中させる。
その量と密度は最初の物とは比較にならない。
「ちょっと! さすがにそれはまずいんじゃないの!?」
ビビアンの発動しようとしている魔法は、自身の回復魔法の限界を超えるのではと思わされる。
回復魔法は万能ではない。失った部位は治せないのだ。
「ふふふ……あーっはっはっは! さぁ! 降参するなら今のうちよ!」
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