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第29話 天使の慈善事業

 ――翌日、ディザイサイトの街、その広場にて。


「さぁさぁ! 皆さま! この子は伝承に語られる天使様ですよー! 奇跡の御業を見たくありませんかぁー!」

「世界一! 世界一可愛い天使ですよー!」


 そこには出店の集客よろしく声を上げるロクサーヌとシルヴィアがいた。

 アンジュはにこにこしながらぷかぷか浮いている。


 昨夜話した通り、アンジュが天使であることをアピールしていくつもりである。

 内容は既に打ち合わせていたが、その中にはシルヴィアにとって到底受け入れられないものもあった。




「今ならお怪我やお身体の悪いところを格安で治します! ぜひこの機会にリフレッシュしてくださぁい!」


 金をとるのかと内心がっかりしながらも、料金表を見てみる町民たち。


「お、おい! これ本当か!?」

「骨折でもこんなに安く!? 治療院の10分の1以下だぞ!」

「もちろんです! 寧ろ対価を要求してしまって申し訳ないのですが、どうしても旅に必要でして……」


 申し訳なさそうに顔を伏せるロクサーヌ。

 無償でも良かったのだが、せっかくなのでと多少頂くことに。


「俺! ダンカンの奴呼んでくるよ! 足折って困ってるから!」


 よしよし、うまいこと釣れたぞと内心ほくそ笑む。




 しばらくして、足を引きずった男が連れて来られる。


「お、おい! 本当にこの値段なのか……? 正直今、金に困っててよぉ……」

「えぇ! もちろん! ささ、天使様! よろしくお願いします!」


 アンジュはにこにこ笑いながら回復の魔法を使う。


「お、おぉ……本当に治ってる! ありがてぇ……ありがてぇ!」

「すげぇ! 半信半疑だったが……天使様すげぇよ!」


 褒められてにこにこが一層深くなるアンジュ。


 ロクサーヌの目的はここにあった。

 人との関り……優しい関りを増やし、誰かを思いやることの尊さを学んで欲しい、と。

 なぜなら、彼女は聖女なのだから。


「他にもケガして困ってるやついるんだ! そいつらも連れて来て良いか!?」

「隣の婆ちゃん、腰痛が辛いって言ってたなぁ……それも治せるの?」

「もちろん! ぜひ連れて来てください! あ、ですが1つだけお願いが……」


 まさか、やはり何か要求されるのかと身構える町民たち。


「実は私たちこの子の両親……つまり、他の天使を探しているのです。どんな情報でも構いませんから、何か知っていることがあれば教えて欲しいのです」

「何だ、そんなことか! 了解した!」

「その子の両親を探して……大変だったんだな。怪我人集めるついでにそれも聞いといてやるよ」

「ありがとう、ございます……」


 シルヴィアにとって耐えられないこと。

 それは、アンジュの両親の仇である彼の天使を、噂されているようにアンジュの両親として探すこと。


 到底納得できるものではなかった。

 しかし、仇を討つ目的を果たすことが何より重要なこと、そして当のアンジュがそれでいいと言ったことで渋々受け入れたシルヴィア。


「(このやるせなさ……情けなさ……覚えていろ、全てぶつけてやる!)」


 悔しさを胸に、静かに天使への怒りを溜め続けるのだった。


 ◆


「やはり、大した情報は得られませんでしたね」

「そうだな」


 多くのけが人や体調不良の者を治療し、広場には普段通りと言った時間が流れている。

 街の子どもたちと楽しそうに遊んでいるアンジュを眺めながらロクサーヌが残念そうに漏らす。


 人がいなくなったのを見計らってロクサーヌが残念そうに言う。


「……やはり、怒ってます?」

「いや。お前には本当に感謝している。私にはこういった作戦はとれなかった。天使を探すのに必要だと気付かされたよ」


 慈善事業に近い治療行為で人を呼び、そこで情報提供を呼び掛ける。

 シルヴィアには考えられないことだった。


「しかし、正直悔しい」

「仇を両親と呼ぶこと、ですよね……」

「あぁ。しかしその怒りはしっかり溜めておくことにするよ」


 先程決意した思いをロクサーヌに伝える。


「……シルヴィアさんはお強いですね」

「そうか? 私は無力だ」

「いいえ。その無力感の中で腐らず……自分のすべきことを見据えています。それこそ、私にはできません……」


 ロクサーヌの正直な思い。

 近い将来、自身の力が及ばなくなる時が来るだろう。

 その時自分は……腐らずにいられるだろうか。


「……そうか。では互いに支え合おうじゃないか! アンジュのために!」

「ふふ、そうですね!」


 お互いを初めて認め合ったような気がした2人。




 その2人に声をかける者がいた。


「お! あんたらまだここにいたのか。あんたら旅をしてるんだろう? 一応伝えておこうかと思ってさ!」

「? どうしました?」


 それは先ほど怪我人を集め、彼の天使の情報を集めてくれていた男だった。


「この街からしばらく北に進んだところで、魔物の群れが見つかったらしい! あんたらも気を付けろよ!」


 思いがけず欲しい情報が手に入ったのだった。

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