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第21話 聖女との出会い

「ひぃっ! 気持ち悪っ!」


 イース領、その首都に到着したシルヴィアたちを待ち受けていたのは、そんな罵倒だった。

 その視線はどうみてもアンジュを向いている。


 人は自分自身よりも大切な存在を貶されたときどうするか。

 時に口論となり、時に暴力を振るい、そして時には戦争となる。


 つまり、シルヴィアが行ったことはあくまで平和的な解決方法であった。


「死ねぇっ!」

「ぶべぇっ!?」


 ただただ目の前の失礼な女の顔面をぶん殴っただけである。


「……へ?」

「せ、聖女様……?」


 周囲はあまりのことに呆然とするのみ。


「うー……」


 ただ1人、失礼なことを言われた本人である天使を除いて。


「む~!」


 悪口を言われたからと言って殴ってはいけない。

 アンジュでもわかることをシルヴィアはやってしまった。


 だから……自分が治してあげれば大丈夫、そう思いながら回復魔法を行使する。


「こ、これは!」


 周囲が本日2度目の驚きの声を上げる。


「回復魔法!? ま、まさか……!」

「『開放者』なのか!? 聖女様!?」


 護衛らしき、白い衣に身を包んだ取り巻きが騒ぎ立て、聖女と呼ばれる女性を見つめる。


「気配は気持ち悪いですが……顔は可愛らしい。合格です」


 目は半目、表情もほとんど動いていない割にやたら声が大きい聖女。

 彼女がそんな言葉を言い放った瞬間、シルヴィアが彼女の頭を掴み持ち上げる。


「いぎゃぎゃぎゃっ!? いだいぃっ!」

「貴様……たかが聖女の分際でっ! 私の可愛い天使に何を言っているんだ……?」

「ん? 天使?」

「ん? 聖女?」


 ふと、聞きなれない言葉にようやく落ち着いたシルヴィア。

 同時にアンジュがシルヴィアに抱き着いてくる。


「だ、だめぇ……」


 ◆


 人間は魔法が使えない。ただし、一部の者を除いて。

 その一部の者から更に少数の……特に強力な魔法が使える者を『人間の制限から解放された者』、そしてその力を持って人類の領域を『魔物から開放する者』、2つの意味を込めて『開放者』と呼ばれた。


 開放者は規模の大きさや無詠唱魔法など、魔物と同等以上に魔法が使えた。

 さらに魔法が使える能力はある程度遺伝されると言われており、世の権力者の中には『開放者』に至っていなくとも、魔法が使える者を囲っている場合があった。


 特に、優れた回復魔法の使い手である聖女を輩出している聖国ではそれが顕著であり、彼女の異父兄弟姉妹は2桁にも及んでいた。

 当然次の聖女もさらにその次の聖女を産むことが期待されていた。



「――という訳なんですが、私は夫を何人も作るのが嫌でして。こうして世のため人のための旅を続けながら伴侶となる人を探しているのです」

「つまり、回復魔法が使える人間か? それなら別にアンジュじゃなくても……」


 苦労してるのかも……と思ったが割と自由にしてる気がしなくもないと感じたシルヴィア。

 何にせよ、アンジュを渡す訳にはいかない。


「5年も旅してきてようやく出会えたのです。この機会を逃す訳にはいきません」


 聖女の見た目はおよそ15歳前後。

 そんなに幼い頃から将来子どもを産む相手を考えていたとは……。

 驚くと同時に、聖国ではいかに回復魔法の使い手の血を取り込むことに躍起になっているのかが理解できた。


「事情はわかった。しかし、もう一度聞くが別に誰でもいいんだろう? お前の従者にも回復魔法の使い手はいそうだが?」


 能力の強弱を考えなければ、数自体はまぁまぁいる。

 騎士団にも数名いたくらいだ。


「彼らは私の従者になるときに去勢しています。それに……できればやはり『開放者』であって欲しいのです」


 そうすれば次代の聖女を産める可能性が高いから、と言葉を続ける聖女。


「……それなら、例えば見つけた開放者が脂ぎった醜い豚のような男だったとしてもそいつと結婚するのか……?」

「もちろんです。私が綺麗な豚にして差し上げます」

「な、なぜそこまで……」

「私は義務感で子どもを産みたくない。1人の方と愛を育みたい、そう思っているだけです」


 とても清らかな、素朴な願いを口にする少女は正しく聖女だと思わせられる。

 彼女に課せられた使命は聖女であること、そして聖女を産むこと。


 逃避しているようで使命のための努力をしている彼女。

 一方、仕事しているようでほとんどしていなかったシルヴィア。


「お前の望みはわかったし、応援もしたいとすら思う。しかし1つだけ問題がある……唯一にして最大の問題が、な」

「何でしょう?」

「当のアンジュは……既に私のことを愛してしまっていることだ!」


 突然2人に見つめられたアンジュは、もじもじしながら顔を真っ赤に染め上げ俯きながらも、しかし確かにコクンと頷く。


「ぶばぁっ!」

「ぶべぇっ!」


 周囲にどちらのかわからない程鼻血が乱れ飛んだ。

 対照的な2人だったが、その価値観は同じだったようだ。




「決めました……今決意しました! アンジュ様の愛は必ず私が貰います!」

読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/


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