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第19話 旅立ち

「セーラよ、今まで世話になった! ありがとう!」


 旅立ちを決めてから数日。

 いよいよその時がきた。


 アンジュを引き取って以来、ずっと世話になって来た家族に別れを告げる。


「シルヴィア様、私こそ……かけがえのない経験をありがとうございます」


 抱擁を交わし、濃密な時間を共有した相手とお別れをする。

 これが最後ではない。だから、また会おうと思いを込める。




「セーラちゃん!」

「アンジュ様……本当に……!」


 色々あった。

 最初は何を言っても反応すらせず……それが今ではこの世で一番可愛い笑顔を浮かべ、自身に感謝を告げるまでに。


「あぁ! やはりアンジュ様は私と一緒に――」

「……」


 ギロリと睨みを利かせるシルヴィア。


「……コホン。いつでも帰って来てください。アンジュ様は私の息子同然ですから」

「……うん」


 泣きそうになる我が子を抱きしめるセーラ。

 泣きたいのは自分の方だ。だけど、今日は笑顔で送ると決めていた。


 何度一緒に行こうと思ったか、しかし絶対に足手まといになってしまう。

 外は魔物を始めとした危険が数多く潜んでいる。


 だから、自分は祈り続けよう。


「待ってますから……いつでも想っています」

「うん……うん……」


 やはり堪えきれない涙を流しながら、最後の別れを惜しむセーラ。

 この温もりを忘れないように――。




「あ、息子と言えば……いい旦那様とやらは見つけたぞ!」


 唐突にそんなことを言いだすシルヴィア。

 以前セーラがシルヴィアに旦那を見つけたらどうか、と言った時の事かと思い当たった。


「え……そうなんですか?」

「あぁ! アンジュだ! 今はまだあれだが……いずれそうなるだろう!」


 耳がおかしくなったのかもしれない。

 いや、そうではない……シルヴィアのアンジュを見る目が全てを物語っていた。


「えっと……」

「旅から帰ってきたら改めて祝福してくれっ!」


 どうしてこう、素直に別れを惜しませてくれないのか。

 セーラには最後までシルヴィアのことが理解できなかった。




「……いよいよ、か」

「……」


 セーラが呆れていいのか泣いていいのかわからなくなっているところに、シルヴィアの元父であるファルシスがやって来た。

 とりあえず先程の会話が聞かれてなくて本当に良かったと安堵する。


「天使と言えば、本来我々に様々な恩恵をもたらしてくれる存在。その天使が現れたという情報が聞こえてこないと言うことは……」

「どこかに潜んでいる可能性が高い、と」


 アンジュの故郷を滅ぼした理由もわからない。

 とにかく足取りも、目的も、何もかもが闇に包まれている彼の天使。


「とにかく、ひたすら練り歩き、情報を掴んでいくしかないだろう。長く、辛い旅になるぞ」

「えぇ……しかし、道中は楽しんでいきたいと思います。せっかくアンジュと旅に行くんですから……」


 ひたすら練り歩く。この時の父親の言葉を若干曲解してしまったことで、旅の方針に影響が出てしまうのだった。


「……旅の無事を祈る」

「はい!」


 シルヴィアが素直に頷く。

 どうやら余計なことは言わないで済んだと、安心するセーラだった。




「時に、ご近所のシルヴィアさんや。少々剣を見せてはくれないだろうか」

「剣ですか? ご近所のファルシスさん」


 白々しさも全開に、元父であるファルシスがシルヴィアに声をかけた。

 シルヴィアが愛用していた剣は騎士団に返却したため、今は自身の予備の剣を腰に据えている。


「どうぞ」

「ふんぬぁぁぁっ!」


 突然剣を折り曲げるファルシス。


「なっ!? 何をする!」

「ぜぇ……ぜぇ……こ、これはいかん! せっかく旅立つのに剣がこれではいかん!」

「ちち……ファルシスさんがやったんだろうが!」

「そうだ、ちょうどここに剣がある! これを持っていくがよい!」


 そう言って自身の愛剣を差し出すファルシス。

 常に戦場で共に在り、命を託してきた彼の相棒である。


「こ、これは……!」

「その鎧と同じく、私財で購入したものだから騎士団とは何も関係がない! 心置きなく持っていくがよい!」


 シルヴィアの白銀の鎧と同じく、特注の剣。

 それはミスリルと呼ばれる特殊金属でできた剣。

 地位の低い貴族なら家が傾きかねない程高価な物。


 しかし、そんな金銭的な価値よりも重要なこと。

 それは――。


「……いつでもお前を見守って――」

「おぉっ! 立派な大剣ですね! ありがとうございます!」

「あ、うん」

「それでは! 行ってまいります!」


 あまりにもあっさり行こうとするシルヴィアにファルシスが待ったをかける。


「待ってくれ! せめて! せめて最後にパパと呼んでくれないか!」


 姓を廃し……それでも、家族の愛は無くせるものではないと。


「……行ってきます、父上!」

「そんな! シルヴィア……シルヴィアァァ! 行かないでくれぇっ! うぉおおーん!」

読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/

次の話から新章となります。


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