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第17話 アンジュ

 天使――。


 この世界でも貴き尊き存在。


 その姿は美しく、無垢な心と高い知性を持つ。


 聖なる魔法を得意とし、愛と慈悲の象徴である。


 極稀に人前に現れ、人類を導く姿から天の使い、『天使』と呼ばれていた。




 ◆◆◆




 光が晴れ、そこにいたのは――。


「……」

「な……ぇ……?」


 どこか神々しく。

 純白の翼と輝くハイロゥはまさしくその証。


 比喩でも何でもない、まさに天使そのものだった。


『核の元となった存在と同じ魔物となる』


 以前アンジュを検査した医師の言葉が頭を過る。


「……」


 シルヴィアの頬をつぅっと涙が流れる。


 私は……彼を何と呼んだ?

 彼にひどいことをした魔物と同じ名を……?


 一番ひどいことをしていたのは……私?


「……ア……?」


 初めてそう呼んだ日を思い出す。

 無垢な存在だと安心して欲しくて……。


 剣を振りながら呼んだ日を思い出す。

 一生懸命な姿が可愛くて……。


 夕日の中、思わず呼んでしまったことを思い出す。

 ただただ大切だから……。


 でもそれは……アンジュにとっては……。


 そのアンジュがゆっくりシルヴィアに近付く。


「……ぁ」


 何も考えられず、ただそれを眺めることしかできないシルヴィア。


 そしてアンジュが手を伸ばし――。




「……だい、じょ、ぶ」

「……」


 そっと抱きしめた。

 お姉ちゃんの思いは伝わってるよ、そう意志を込めて。


「だいじょぶ、おねえちゃ……」

「……ぁ」


 違う、違ったんだ。

 アンジュはただ私に守られる存在じゃなかった。


「大丈夫!」

「……アンジュ!」


 アンジュはたくさんの愛をくれた!

 何て清々しく、勇気が湧いてくることか!

 彼を愛し、彼に愛され、生涯を共にしていくことこそが、私の幸せだ!


 今まで曖昧だったもの、それが明確になった瞬間だった。


「うぁぁぁああああーっ!!!」


 それを自覚した瞬間、シルヴィアの中で何かが弾けた。

 それは熱を帯び、体中を駆け巡り、昂る気持ちと共に荒れ狂いながら外に出た。


「アンジュ……」

「うん!」


 この溢れる気持ちと力はどうすればいいのだろうか。

 そうだ、ちょうどいい相手がいるじゃないか。


「……グ……ルッ……!?」


 ゴブリンの王は動けずにいた。

 シルヴィアが致命的な隙を晒していたはずなのに。

 その後ろに現れた存在が、ロードが動くことを許さなかった。


 自分と同じ魔の物ではないのか、どうして人間の味方をするのか。

 困惑と怒りが湧いてきたが、どうすることもできなかった。


 所詮ゴブリン程度の王。

 存在の格が圧倒的に違った。


「……」

「ゴ、ォァ……!」


 シルヴィアが剣を構える。

 迸る闘気を纏わせながら。


 意識を集中して……足から腰へ……。

 そして――。


「さらばだ、悪鬼ども」

「ゴガァァァァアアアーーー!?」


 城壁を破壊した時よりも数段上の威力の――闘気による斬撃を放つ。

 ゴブリンロードを、その配下もろとも消し飛ばしながら斬撃はどこまでも飛んで行った。




 ◆◆◆




 ――数刻後、東門にて。


「ぜぇー、はぁー」

「終わった……のか?」


 大量のゴブリンと、少数ながら強力な上位種。

 厳しい戦いではあったが、辛勝を掴み取った。


 幸いにも死者はおらず、数名の重症者を出すに留まった。

 途中から敵の動きもどこか精彩が欠けたようにも見え、結果的には完勝であった。


「騎士団長、凄かったですね!」

「まぁ、ね」


 キーファもホッと胸を撫でおろしながら一息つく。

 そこに新人らしき騎士が話しかけてくる。


「今回の件は……まぁ、ね……」


 自分の娘の尻拭いである、と感じているのだろう。

 いや半分は騎士団長自身の、か。


「そりゃ、『壁を壊したのが自分の娘で、諸事情で無理矢理騎士団員としての任務を与えるために壁を修繕せずそのままにしていたことが今回の原因』ですからね」


 言いにくかったことを、アールがバッサリ切って言う。


「え!? どういうことですか?」

「……ゴブリンは明らかに壊れた城壁を狙って来ただろ? その原因は娘さんであるシルヴィア嬢、そしてそれを敢えて放置していた騎士団長」

「な、なぜそんなことを……?」

「騎士団長は、ただの親バカってことですよ」


 尚も納得できない様子の新人騎士。


「ま、納得できないだろうけどな。それでもみんなあの人について行くのは……」


 離れたところで雄たけびを上げている騎士団長を見やりながら言う。


「強いからだよ。あの人について行けば必ず勝てると、そう信じられる強さと実績がある」


 今回現れたゴブリンナイトなどの上位種。

 結局その全てを1人で片づけてしまった騎士団長。


「確かにヤバかったです! 正直、本当に人間かって思うくらい!」

「そうなんだよ! それでいて超が付く親バカなんだぜ!? そりゃ……ついていくだろ!」


 娘のためならなんだってできる。

 そんな人間に悪い奴はいない。




「シルヴィアァァーッ! 父は……パパは頑張ったぞぉー! 見ててくれたかーっ!?」

読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/


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