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第15話 襲い来るゴブリンたち

 その日、遂に王は決めた。


「……」


 彼の街を侵略することを。


「……!」


 これ以上、同胞が殺されるのを見ていられないと。




 ◆◆◆




「さぁアンジュ! 今日も軽くランニングだ!」


 初めて街の人達と交流してから数週間後。

 相変わらずの日常を過ごす2人。


「いってらっしゃ~い」


 慣れた様子で壊れた城壁前に椅子を置いて座るセーラ。

 最近はこうしてゆっくり読書をするのも楽しみになってきてしまっているセーラだった。


 ◆


「よう!」

「……あ」


 男は突然現れた。

 その男はいつもフラっと現れては果物や飲み物を置いていく。


「シルヴィアの奴……全く。いつもセーラちゃんに仕事を押し付けてさぁ~!」

「キーファ様……いいんです、最近はこうしているのも楽しみの1つですから……」


 それは俺に会えるから? とキーファは期待する。

 こうしてゆっくり読書するのも悪くないから、とセーラは思う。


「ま、セーラちゃんがそう言うんなら別にいいんだけどさぁ~」

「えぇ。それに、疲れてヘロヘロなアンジュ様を迎え入れるのも楽しいんですよ?」

「え?」

「あっと……これは内緒ですよ?」


 そう言ってクスクス笑うセーラ。

 もしかして……サディスティックなディザイアーをお持ちですか?


「SとMは惹かれ合う……そう言うこと、か」

「え?」

「おっと、何でもない」


 ニヒルに笑うキーファだが、幸か不幸かその言葉はセーラには聞こえなかった。




「さて、俺はそろそろ……ん?」

「どうしました?」


 何やら、ざわつく。

 長年培ってきた勘が言っている。


 ここにいたらまずい、と。


「……何だか良くない空気だ」

「え?」


 いつものだらしない顔は鳴りを潜め、キーファが呟く。


「急いで騎士団に戻る! セーラちゃんも来てくれ!」

「え? え? でもシルヴィア様たちが!」

「あいつはほっといても大丈夫だ! とにかく急いで!」


 臭い臭い臭いと部下に馬鹿にされるキーファだが、その実誰からも厚い信頼を得ている男。

 高い危機察知能力。それは、彼が誰よりも民や仲間を守りたいと願い戦って来た証。


 このときのキーファの働きにより、街は救われることとなるのであった。




「気のせいであってくれよ……!」




 ◆◆◆




 王の狙いは挟撃にあった。


 一方は壊れた城壁から、もう一方は反対に位置する門から。

 守りの薄い部分を突こうとすれば、敵は重点的にそこを固めようとするはず。

 その隙を突き、自らが先陣を切って反対側を崩すのだ、と。


 やがて壊れた城壁を攻める部隊から狼煙が上がる。


「……」


 そして……。


「ゴァァァァアアア!!!」


 ゴブリンの王が立ち上がった。


 ◆


「よし! 一度ここで休憩しよう!

「……うー……」


 自身の家とちょうど反対側に位置する門、その近くにある小川で休憩をするシルヴィアとアンジュ。


「アンジュも体力がついてきたな! 休憩なしで半分も走れるようになったんだから!」

「……うー!」


 あの頃とは比べ物にならないとアンジュを見ながら目を細める。

 しかしその時、何者かの気配を感じたシルヴィア。


「これは――!?」


 以前にもあったゴブリンとの接触。

 どこか似ているような気配だが、今回の方が圧倒的に強い。


「いかん! 急いで城壁の――!」

「う……?」


 そう思った矢先、木陰から1匹のゴブリンが現れた。


「なっ!? もうこんな近くに……!?」

「グギャッギャッ!」


 考えるよりも早く腰の剣を振り抜き、ゴブリンを始末するシルヴィア。

 同時に、街の中から緊急事態を知らせる鐘が大きく鳴り響いた。


「こ、この音は……家の方からの襲撃?」

「うぅ……?」


 鐘の種類により、危険が迫っている方角を示しているのだが……今鳴った音は自分たちの住む家の方角だった。


「くそっ! 一体どうなって……!」


 街の方が慌ただしくなっているのを聞きながら、それでも先ほど感じた強烈な気配も忘れられない。


「(街の方も安全かわからない。こちらも嫌な予感がする。どうする……どうするのが最善だ?)」


 焦るシルヴィア。

 時間だけが過ぎ去っていく。


 答えが出ないまま数分。

 その気配の持ち主が遠目に姿を現した。


 それは数百の群れを率いるゴブリンの……ゴブリンよりも何倍も巨大で凶悪な風貌をした悪鬼だった。




「……アンジュ、私の後ろにいろ」

「……ぅぅ」


読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/


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