第12話 家族の仇
「おや、あんたは……」
セーラが1人夜道を歩いていると、胡散臭い中年に話しかけられる。
「あなたは……確か、キーファ様」
「おうよ!」
その人物は形式上ではあるが現在のシルヴィアの上司に当たる人間、キーファだった。
「……その様子だと、お前さんも聞いたようだな。坊主のこと」
「……はい」
共通の知り合いで、キーファが坊主と呼ぶのは恐らくアンジュのことだろう。
そう当たりを付けて返答する。
「……」
「……」
静かな道を2人並んで歩く。
「……つれぇよな、旦那や息子さんのことを考えると」
「いえ、そんな……」
かつて騎士団が守り切ることができなかったセーラの夫と子ども。
その原因である魔物という存在。
今まで面倒を見てきた子どもが魔物になってしまうと言うのだ。
辛くない訳がない。
「俺たち騎士団はさ、魔物たちから民を守るために昼夜気張っている。だから坊主のことも正直認め難い部分もある」
「……」
「けどよ……俺ぁ最後の最後まで待ってやりたいと思ってるんだ」
「最後の最後まで……」
ふぅ、と溜息を吐くキーファ。
「シルヴィアの嬢ちゃんはさ、俺たちとの模擬戦でずーっと喋りながら戦うんだぜ? 『アンジュが喋った』だの『アンジュが可愛い』だの」
どうしても個人ではこなせない騎士団としての訓練内容。
それを手伝うために今だに毎夜アールと共にシルヴィアの元へと訪れていた。
「訓練に集中しろよって感じだけど……それでも今までより強く感じてな」
「……」
「それだけ坊主のことを大切に思っているんだって……嫌でも伝わってくるわけよ」
「そう、ですね……」
「だから……俺は最後まであいつらに付き合おうと決めた。だから、セーラちゃんも……どうか最後まで信じてやってくれねぇか?」
「? ……はい」
シルヴィアたちが待つ家までセーラを送ったキーファ。
セーラの頭に若干の疑問符が浮かんでいることに最後まで気づかなかった。
◆
「セーラ……おかえり」
「ただいま戻りました。すみません、急に1人でお墓参りに行きたいだなんて……」
先程アンジュが魔物化するかも知れないと言う話を聞いたセーラは、落ち着いて考えたいからとかつての家族の墓まで行っていたのだった。
「……」
「アンジュ様……」
アンジュもやって来て俯き加減でセーラを迎える。
いつもは寝ている時間なのに……もしかして自分を待っていたのだろうか。
「アンジュ様、ただいま戻りました」
そう言ってアンジュを抱きしめるセーラ。
「……割り切って、くれたのか?」
「……いえ、正直受け入れ難いです」
「……そう、か……」
「はい。こんなに可愛くて素敵なアンジュ様が魔物になってしまうだなんて……本当に可哀そうで……不憫でなりません……」
大粒の涙を流すセーラ。
どうしてアンジュが。今までも辛い思いをしてきたのに、と。
「うむ……うん?」
「魔物になってしまうその瞬間まで……いえ、最後までお世話させて頂きます!」
「え、っと……その……いいのか? 旦那さんやお子さんのことは……」
「? 何がですか?」
先程のキーファと同じだ。
何か、話が若干噛み合っていない。
「その……ご家族の仇である魔物の面倒を見る、的な?」
「え? ……あー」
ようやく合点がいった。
キーファやシルヴィアは、家族の仇である魔物の世話をしてきたと言うことに対し気を使ってくれている。
一方で自身はただただアンジュの境遇を悲しんでいる。
「お優しいシルヴィア様、ありがとうございます。ですが、同じ魔物と言えど夫や子どもを手にかけた存在とアンジュ様は別ですし……」
「それはそうだが……」
「それに、アンジュ様は私の子どものような方ですから。恨みを持つことなどあり得ません」
何だか色々気を使われてややこしいことになったが……。
シルヴィアもキーファも優しいと言う事だけはちゃんと伝わった。
私もこの人たちのように誰かを思いやって生きていきたい……そう思うセーラだった。
「? 何を言っているんだ? アンジュは私の息子だぞ!」
「あらあら、うふふ。でもシルヴィア様は先にいい旦那様を見つけなければですよ」
いつかそういう相手ができるのかもしれない。
しかし、今は他のことは考えられなかった。
「……今は、アンジュがいれば十分さ」
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