第10話 検査の結果
――数カ月後。
「疲れてないか?」
「うー……」
城壁の周りを走っているシルヴィアとアンジュ。
お互いの胸に金でできたペンダントがきらりと光る。
以前のゴブリンとの戦いで見せたアンジュの太刀筋。
そして毎日一緒に剣を振る中でシルヴィアが感じたこと。
それは――。
アンジュに剣の才能が全くないと言う事だった。
トラウマそのものであるゴブリン戦では仕方のないことだったかもしれないが……。
「(何かこう……ガッって感じやググゥって感じが足りないと言うか何と言うか……)」
アンジュくらいの年から剣を振れば、いずれそれなりになるのかも知れない。
しかし、アンジュの伸ばすところは本当に剣なのか。
そう思って以降、素振りよりも体力をつけることを優先してきたのだった。
その甲斐あって、現在では城壁の周りを何周も走ることができるようになった。
一時は歩くのさえ困難を極めたことを考えると、誇るべき成果だった。
「よし、今日の走り込みもここまでにしよう!」
「う!」
しかし、残念ながらシルヴィアの本業は子どもの面倒を見ることでも、トレーナーでもない。
更に言えば、現在はしっかりと業務上の命令も受けている。
「……あのぉ~、一応、この城壁の見張りがお仕事なんですよね~?」
「? 問題ない! セーラが見ていてくれてるじゃないか!」
「私は騎士団ではないのですが~……」
「? 知っているが?」
「……」
ダメだ、このお嬢様とまともに会話ができない。アンジュが絡むといつもこうだ。
半ば諦めつつ、今日の大事な用事のことを伝える。
「そろそろアンジュ様の検査のお時間ですよ」
「む! もうそんな時間か! 行くぞアンジュ! 診療所まで競争だ!」
「ん!」
元気に駆けだす2人を眺めながら思いに耽るセーラ。
「(アンジュ様も……本当に元気になって……)」
自身の過去と照らし、嬉しくも切ない思いに駆られるセーラ。
しかし、彼女には1つ気がかりな点があった。
「(検査……毎週行っているけど、そんなに時間がかかるものなの……?)」
大丈夫、きっと何も問題ないと受けることにした検査。
どうせすぐに結果が出るものだと思っていたが、毎回言われるのが『翌週また来て欲しい』だった。
「(……アンジュ様)」
◆
「頼もう!」
「うー!」
診療所に飛び込んだシルヴィアとアンジュ。
そこにいたのはいつも世話になっている医師と……剣を携えた騎士団長だった。
不思議なことに看護師や他の人間はいない。
「ち、父上? どうしてここに……?」
「あー!」
普段の検査の時には姿を見せない父に驚くばかりのシルヴィアだったが、最近懐き気味のアンジュは迷わずファルシスに抱き着いた。
「――っ!」
しかしそれを振り払うファルシス。
「きゃっ!」
「――っ! 貴様っ! 何をするっ!」
尻もちを付き倒れるアンジュを見たシルヴィアが剣に手をかけ、自身の父にその怒りをぶつける。
「~~~、……落ち着け」
「落ち着いていられるものか! 返答次第では――」
「落ち着けと言っているのだっ! バカ者がっ!」
「くっ……」
常に他者を震え上がらせるような佇まいをしたしたファルシスだが。
今日もいつも通り……いつも戦場で見せるような覇気をその身に纏っている。
尋常ではないと察したシルヴィアは、アンジュをその身の背後に隠す。
「……どういうことですか、父上」
「……」
ファルシスは視線で医師を促す。
「……よろしいので?」
「構わん!」
2人の様子に、否が応でも良くないことが起こっていると気付く。
「いいですか、シルヴィア様」
「……あ、あぁ」
良くない。
全く良くない。
目の前の男の様子から、良くないことを言われるのが明確に伝わってくる。
こんなハズじゃなかった。
すぐに終わって、何事もなかったねと笑い合うための検査だったはずだ。
それがどうして……!
やめろ、やめてくれ……それ以上口を動かさないで……!
シルヴィアの悲痛な願いも届かぬまま――。
「……その少年の体内に、魔物の核が生じています」
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