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第8話 異変

「……身長、変わらないですね……」


 そんなことがあるのだろうか。


 アンジュはどう見ても。まだまだ成長していく段階である。

 数カ月もすれば服のサイズがどんどん変わっていくくらいに。


「そ、そんな訳ないだろう! アンジュは日に日に大きな男になっている!」

「正確に測った訳じゃないですが……」


 それでも、毎日必死に見て来た子だ。

 つい口をついて出て来たことだったが、1度気になると心配になってしまう。


「ま、毎日見ているからこそ気付かないこともある!」

「……お嬢様、どうか……」


 何か良くないことが起こっているんじゃないか……。

 もしも何か良くない病気だったら……。


 そう思うと途端に不安になってしまったセーラ。




「1度検査を受けさせてみてはどうか」


 そこに現れたのは、シルヴィアの父であり騎士団長のファルシスだった。


「ち、父上……どうしてここに……!」

「久しぶりの仕事とあってお前のことが心配になったからだが……アンジュ少年の話聞かせて貰った」

「なっ!?」

「それと、父上と呼ぶな」


 なぜ、どうして。

 突然やって来てアンジュの不調を疑うようなことを……!

 そう激高しかけたシルヴィアだったが――。


「大丈夫ですよ、お嬢様……アンジュ様を信じるからこそ検査をするのです」

「……」

「アンジュ様なら何も問題ない。健康的に育っている。そのための確認をして貰いましょう」

「……わかった」


 シルヴィアが必死に否定していたのは、思い当たる節があるからだった。

 伸びない身長、依然昏いままの眼。

 気付いていたが、きっといつか治ると……。


「んーっ!」

「わっ!」


 不安な表情を浮かべていたシルヴィアを気遣ったのは、当のアンジュだった。

 彼はその小さい体を目一杯使い、シルヴィアの足に抱き着いた。


「……!」

「――っ」


 抱き着いたのではなかった。

 まるで、彼がシルヴィアからされていたように優しく――。


「そうだな! 私が不安になってどうする! 私がお前を信じなくてどうする!」

「ん……」

「よしっ! せっかくだから隅々まで診て貰おう! どうすれば筋肉が付きやすくなるかとか! どうすれば可愛い顔がそのまま成長できるかとか!」


 空元気も元気。

 一家相伝の堂々とした振る舞いを取り戻すシルヴィア。


「ふふ、そうですよシルヴィアお嬢様」

「うむ、不本意だが……我が領地で最高の体制を整えると約束しよう!」


 眼を普段よりも一層光らせながら言うファルシス。

 彼が何を思いそう言っているのかはまだ誰にもわからない。


「ありがとう! 領主様!」

「……うむ。いや、領主さまと呼ぶな!」


 こうしてそれぞれ思いを抱えながら、アンジュの身体検査が決まったのだった。




 ◆◆◆




 ――数日後。


 先日、ファルシスが手配した医師たちに検査をされたアンジュだったが、結果は翌週に再検査というものだった。

 

 そうなると、やることは1つだけ。


「さぁ! 今日も元気に剣を振るぞ!」

「んっ!」


 城壁の周りを警備しながらの素振り、たまに走り込み。

 いつも通りのことをするのだった。




 しかし、訓練開始から数十分後の事。


「(……何か、気配を感じる)」


 シルヴィアが何者かの気配を感じた。


「(何者かわからない。こいつらが逃げるよう威圧のためにここにいるか、誘い出して斬り捨てるか……)」

「……?」


 どう対処するか迷っていたシルヴィア。

 アンジュを見つめ、答えを出す。


 即ち、アンジュや街の安全を脅かすものをそのままにしておくなどできる訳がない、と。


「……今日は一旦家に戻って休憩しよう」

「? ……うー!」




 そうしてアンジュを家にいるよう言いつけ、自身は外壁の外側に戻り適当な場所で身を隠す。


「(気配はまだある。私が隠れていることはバレていないはずだが……)」


 じっと待つこと十数分。

 遂に敵が動き出した。


「(……やはり魔物、か)」


 少し離れた草むらから出てきたのは3匹のゴブリンだった。


「(アンジュを家に置いてきた自分を褒めたたえてやりたい!)」


 かっこいい自分の姿を見せることと天秤にかけた結果だが、正解だったと思わず喜ぶシルヴィア。

 アンジュにとってゴブリンと対面するなど、もっての他だったと。


 人類にとって強大な存在である魔物ではあるが、ゴブリンは最底辺に位置する。

 3匹を確認したシルヴィアは速やかに力強く駆け出した。


「――っ!」


 せっかくの奇襲のチャンスを逃すまいとまずは1匹、綺麗に両断することに成功した。

 しかし残ったゴブリンの行動も素早かった。


「ぎっ!」

「ぐぎゃぎゃぎゃっ!」

「……ちっ!」


 急ぎ反転し、2手に分かれて草原の方へ走っていくゴブリン。

 明らかに通常のゴブリンの動きではないことを察しながら、今はとにかく追うシルヴィア。


「逃がさん!」


 巧みに逃げるゴブリンを猛烈な勢いで追いかけるシルヴィア。




 使命に燃えるあまり、壊れた城壁から彼女の大切な存在が出てくることに気付けなかった。


読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/

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