第3話 情報収集
さらにあれからしばらくたったが、母とはあれ以降会っていない。
というか、父は一度もあっていないので、母が言っていた忙しいというのは本当なのかもしれない。
こんだけ会わないと子供もぐれるぞ
と思うものの、まぁまだ産まれて1年も立っていないような子供に父が合わない程度では子供の成長に関係なんてないかと思い直す。
最近ようやく離乳食っぽいものを食べさせてもらえるようになった。
とはいえ、別においしいもんでもなんでもないんだが、ずっとミルクよりはましになったかなというのでちょっとうれしい。
とりあえず今は何もできないから、これから来るイベントをどう乗り越えていくかと、それに向けての情報収集かな。
俺の世話をしてくれているのは主に二人で、乳母のほうの名前はマリナ、メイドのほうの名前はレインというらしい。
乳母のマリナは良い家の出身なのか、礼儀作法がしっかりしてるようで、最近ではメイドのマリナの礼儀作法がなってないところを見ると軽く注意しているのを見る。
一方マリナは堅苦しいのが苦手なのか、結構お転婆でたまに俺相手でさえため口になることがある。
いや、さすがにまずいだろ。
仮にも伯爵家の息子なんだから。
まぁ俺自身元々日本に住んでたってのもあってそんなに身分に厳しくないし、良いけど。
というかまだ産まれて半年くらいなんで会話すらできないんで咎めようと思っても無理なんですけどね。
最近ではレインが俺に向けて話しかけてくるようになった。
最初のころはがらがらを持ってきて近くで鳴らされてたんだけど、いかんせんうるさくて気持ち悪かった。
一番初めに聞いてた時は転生したてで動転してたり、疲れもあってかそんなに気にならなかったんだけどなぁ。
とりあえず、適当にならしまくってるのだが、そのせいかほんとに聞くに堪えない気持ち悪い音を鳴らしてきやがる。
一種の才能だろと思うほどだったが、とりあえず気持ち悪かったから泣きまくったら、気づいてくれたのか、がらがらを鳴らすのをやめてくれた。
「いつもはこれでどんな赤ちゃんも喜ぶんだけどなぁ。」
そう言っていたが、この世界の赤ちゃん感性大丈夫か。
ちょっと心配になるクロンであった。
レインの話はほとんどがどうでもいいことである。
曰く、メイド長に彼氏ができたとか、メイド長が彼氏と別れたとか、町にできたカフェがおしゃれだったとか、メイド長が合コン行ったとか。
いや、メイド長の恋愛事情聞かされてどうしろと。
こんなオープンな情報なんか?
なんか、その、頑張れ……
メイド長の話以外にも、やれ今日のご飯がおいしかったとか大半はどうでもいいことである。
ごく稀に、最近王家に王女様が生まれたらしいとか、北の国アレルノルズルで妙な動きがあるらしいとかなんか重要そうなことをサラッと言ってたりする。
大半がどうでもいいこととはいえがらがら鳴らされるよりはましだし、情報収集してる身としてこの上なく助かるから喜んだふりをしているんだけど、それを見たマリナさんは微妙な目で見てくる。
まさか、俺の愛想笑いがばれたか!?
と身構えていたが、
「がらがらよりも、よくわからない話を聞くのが好きなんて変な子だねぇ」
とつぶやいているのを聞いた時には何とも言えない気持ちになった。
変な赤ちゃんというのは分かってますとも!
そうこうして楽しく過ごしていたある日
「クロン!会いに来たぞ!」
と、元気そうな声とともにある人がやってきた。