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ログインして宿を出る。向かう先は昨日続き冒険者ギルド。今日は時間もあるので、限界まで依頼を受けようと思う。
板からDランクの依頼を十枚ほど剥がして窓口に持っていく。
それでも反応は淡々としたものだったため、案外一度にたくさん受ける人はいるのかもしれない。
依頼のほとんどは魔物を倒して、そのドロップアイテムを提出するものだが、今回は調査依頼というのがあったのでそれも受注してみた。
国が管理する森があるというのだが、最近その周辺でゴブリンが増えているらしい。
もしかしたらゴブリンの集落があるかもしれないということで、森を探索し、もし集落があれば報告するというのが今回の仕事だ。
とりあえず他の依頼を終わらせてからこの依頼に移ろう。
「ふう、これで終わりだ」
杖のおかげもあってか、午前中に調査依頼以外の依頼を終わらせることができた。
一度ギルドに戻り報酬金をもらい、すぐにその半分ほどを使って毒餌を買う。これでとうぶん自傷手段には困らないだろう。
そこそこ遠かったが件の森に着いた。ここからは慎重に行動しよう。
ゴブリンにはなんとなく弱いイメージがあるが、この世界ではそこそこ脅威度の高い魔物なのだそうだ。
群れで行動する他、そこそこ高い知能を持っているため、舐めて掛かってはいけないと念を押された。
「ゴブリンどころか、魔物一匹見つからないな」
そこそこの時間森を歩いているが収穫がない。だが目撃情報は複数あったそうだから、いないということはないはずなのだが……。
諦めて帰ろうとしたそのとき、二匹でイノシシを運んでいるゴブリンを見つけた。
気づかれていないので倒すこともできるが、ここは尾行してみよう。
気づかれないように距離を開けて後をつける。どうやら目的地についたらしいキョロキョロしたと思ったらいなく……なっていないな。
こんなところに洞穴があったのか。先程のゴブリンより大きく、屈強そうなゴブリンが見張りをしている。
これ以上は無理そうだな。深追いはせずに二つ目の街のギルドに戻ろう。
「それは……本当ですか!? いえ、本当ですよね。ギルドマスターを呼んできます」
報告したとたん騒がしくなった。何かのイベントの前兆だったりしたのだろうか。
「すまんが君、こっちに来てくれたまえ」
受付の横の扉を通され、そのまま一つの部屋に案内される。
「ギルドマスターのギルだ。早速本題に入るが……今回君が発見したのは十中八九ハイゴブリンだ。ゴブリンの進化したものだな。通常そういった個体は群れの長となるのだが、そこまで脅威ではない。しかしハイゴブリンが見張りをしていた、となると話は異なる」
「より強力な個体がいる?」
「そうだ。ゴブリンキングと呼ばれる個体で、むやみやたらに周囲を襲わず、群れを強化していく特性を持つから早期発見が大切になる。近く本格的な調査を行った後、討伐隊が編成されるだろう」
どうやら大事になる前に阻止することができそうであるらしい。
「君への報酬はその討伐の後となるが、おそらく金銭ではなくランクの昇格が主なものになるだろう。君はDランクの依頼もこなしているようだしな」
「なるほど。報酬はそれで十分だ。金銭はそこまで欲しているわけではない」
「助かる。正直な話、国はほとんど金を出してくれないからな。このギルドに金はあまりないんだ」
災害対策に充てる金が減らされるのはどこの世界でも同じらしい。
話をした後は特に何もなくギルドのフロントに戻された。
さて、そろそろこの街ですることもなくなってきたし、次のキャンプを目指そうと思う。
平原の次には小さな沼地がありその先にキャンプがあるそうだ。沼地は迂回することもでき、そのルートならほとんど危険ことはないらしい。
キャンプに到達することが目的なので、今回は迂回していこう。
「本当に平和だったな」
特筆すべきこともなくキャンプについた。一度ログアウトすることにしよう。
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VRをするためにつけていた機械を外し、目を開ける。
「すでに退屈になってきたな」
実際に中に入ってするゲームは新鮮だが、今のところやっていることは画面の中のゲームと同じだ。
突拍子もないことをする敵を出せとは言わないが、このままただ攻略するのもつまらない。
「何か面白い情報はないものか」
少し調べてみるか。