表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

5

「よお。あんた、ソロか?」


 再びログインして、テントから出ると唐突に声を掛けられた。


「ああ、確かにソロでここまで来たな」

「お、そりゃ良かった。俺はこのキャンプまでソロで来たやつを誘っててな。この時間にここまでソロで来れるってことはPS(プレイヤースキル)が高いってことだろ? 一緒にパーティ組まねぇか?」

「すまないが、ソロの方が好きなんだ」

「ま、そりゃそうだよな。それじゃあ、PvPして決めねぇか? 俺が勝ったら一時的なパーティを組む。あんたが勝ったら……何がいい?」


 なかなか強引なやつのようだが、同時に面白いやつでもあるな。


「オリジナルスキル、どんなの作ったか教えてくれ」

「いいぜぇ。最後まで(デスマッチ)でいいか?」

「それでいい」


 デスマッチというのは、どちらかのHPが0になるまで続く形式であり、デスペナもなくなるので遠慮せず戦うことができる。

 PvP申請が来たので受理する。こいつの名前はカイというらしい。

 システムにより一定距離離され、同時に円柱状の結界が張られる。この円から出ても負けなのだそうだ。


「武器は? 初期装備のナイフじゃないだろう」

「俺は魔術師だぞ」

「まじかよ」


 カウントが0になると同時にスパーク。


「避けるか」

「余裕だぜ」


 上段から振り下ろされる剣をナイフでそらし、もう一度スパーク。カイはなんとか避けるが、体勢を崩すことができた。


 今までほとんど使っていなかった土魔法の最初の魔法、ストーンウォールを使い、その持続の長さで動きを制限。すぐさまナイフを投げる。


「チッ」

「読めてるぞ」


 避けるだろう方向に放っていたスパークがヒットし、カイのHPゲージはなくなった。


「強ぇなあんた。なんもできなかったぜ」

「最初のスパークを無理に避けた時に、防御系に振ってないとわかっただけだ。スパークを耐えて近づかれたらこっちが終わってた」

「今の敵の強さじゃ防御系は振らねぇよなぁ。約束だ。オリジナルスキルについて教えるぜ。はぁ、これで勝つつもりだったんだがなぁ。俺のオリジナルスキルは予知だ」

「ほう」

「効果はそのままだな。自分に向かって放たれた攻撃がどういう軌道を辿るか見えるってやつだ。あんたの詰将棋みたいなのはどうしようもねぇ」

「面白いな」

「代償の部分が魔術師には向いてねぇと思うぜ。通常スキル剣術によって使える技全ての封印だ」

「それをPSで補うというわけか。確かに魔術師にはできないな」

「だろ? それじゃ俺は行くぜ。他のやつにも声かけんだ」

「いや、気が変わった。一時的にパーティに参加する」

「マジか!? 俺抜いてあんたで二人目だ。俺はあと一人探すから、もう一人と会っといてくれ。」

「わかった。どこに行けばいい?」

「キャンプの入口に行ってくれ」


 言われた通りに入口に行くと、人の良さそうな男がこちらに気づいて手を振ってきた。


「あなたがタクさん? 」

「そうだ」

「よかった。僕はハル。とりあえずフレンド登録しましょう」

「わかった」


 フレンド登録をすると、チャットが使えるようになる。さらにフレンド登録はどちらからでも解除できるので、基本やっておいて損はないそうだ。

 そういえばカイとはし忘れていたな。


「カイ、強引だったでしょう」

「まあ、そうだったな」

「あはは、すみません。でもいいやつではあるんで、仲良くしてやってください」


 リアルでの関係があるのだろうな。揃って第一陣に入れるとは運がいい。


「あ、僕とカイは幼馴染です。と言っても、ここまではソロで来ましたよ」

「なんでわざわざ……」

「カイの方はβテスターでして、ここで人を集めようって言ってたんです。それで、俺らだけソロじゃなかったらおかしいだろ、って」

「なるほど……」


 やはりカイはそういう性格らしい。


「将来的には最強のクランを作りたいそうですよ」

「すまないが、そこまでは付き合えないぞ」

「全然気にしないでいいですよ。一応第二陣でもう一人の幼馴染が入ってくる予定なんで。なのであなたかもう一人のどっちかが残ってくれたらいいな、程度です。二人でもなんとかなるでしょうしね」

「おーい。もう一人見つけて来たぞ〜」

「あ、きたきた」


 話している間にカイがもう一人を見つけてようだ。


「改めて自己紹介だ。俺はカイ。武器は片手剣」

「ムサシです。武器は刀を使う予定です」

「僕はハル。両手剣を使います」

「魔術師のタクだ。光と土の魔法を使う」

「よし。あと、フレンド登録してないやつらはしとけよ」

「カイとしてないぞ」

「あ、すまん」


 フレンド登録を終え、ついに森に入る。


「いや、俺いらなくないか?」


 敵という敵を全て前衛の三人が倒してしまう。


「いや十分サポートしてくれてるでしょ」

「ソロでやってるときより格段に楽だぞ」

「それは当たり前です」


 あっと言う間にボスのいるエリアまでやってきた。ボスは大きなゴリラだった。

 当たったら痛そうなパンチを放つが、こちらは初日にソロでキャンプまでやってきたメンバー。大振りな攻撃はかすりもしない。

 私はというと後ろに立ってひたすら魔法を使っていた。他3人の火力も高いため、ヘイトがこちらに向かないのだ。

 そうしてゴリラはなんの苦もなく沈められた。


「一時パーティはここで一旦終了だぜ。できればこのメンツでそのままやっていけたらと思うが、どうだ?」

「すまないが、抜けさせてもらう」

「ま、しゃあねぇよなぁ」

「僕はこのまま参加するです」

「頑張ってくださいね。タクさん」

「ああ、そちらも頑張ってくれ」

「じゃあな!」


 ……思っていたよりすっきり別れられたな。

 ここからはまたソロだ。とりあえずゴリラを一人で倒せるようになってから先に進もう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ