俺は世界で2パーセント
我が家の朝食は意外にも質素である。
朝御飯のメインは、トロトロになるまで煮込んだ野菜のスープで、色は茶色。上面にバジルのような葉っぱが散らされていて、白いお皿に入っていた。
皿が無駄に大きい。スープが入っている面積に対してその2倍を皿の縁の部分が占めていた。
スプーンでスープを掬うと、茶色い汁の中に細切れになった玉ねぎが入っていて、香ばしい薫りが鼻を擽る。味はオニオンスープだった。
スープよりも気がかりなのは、オーロラの元気が無い事だった。おはようと言っても小さく会釈するだけで壁際に立っている。なにか優しい言葉でもかけてあげられればよかったが、女性と話した経験の少ない自分にはそれも難しい。
いつものように完璧に仕事をこなす彼女の姿に、ふと安心してしまう自分がいた。
一方で、朝御飯のデザートを運ぶメイドに気がついた。見たことのない人だ。
そのメイドさんは頭に犬みたいな耳が生えていて、人間の耳の部分を髪の毛が覆っていた。おそらく、人の耳はないのではないか。オーロラと御揃いのメイド服を着ているがその中身は大分違うね。主に胸回りが。
犬耳メイドさんは小さなクリームケーキを机に置くと舌舐めずりをした。こう言うとき、オーロラは人の顔を見て舌を出したりしない。なぜなら仕事に忠実だから。お腹が空いていることなど表面に出さない。それに比べてこの人は少し経験が浅いようだった。
「メイドさんは、まだご飯食べてないのですか?」
「メイドはいつも食事は後でございます」
「では、このケーキを差し上げます」
「ありがとうございます! どうか私のことはアイーシャとお呼びください」
オーロラを見ると、俯いてなにかを我慢するような、そんなそぶりを見せた。
なんということはないケーキだ。
カリカリに焼いたパイ生地の上に白いクリームが乗っている。食べたかったのだろうか。言えばいいのに。
アイーシャは、となりの椅子を引いて座ろうとした。
「あの」
今いるところの近くの椅子に座ったらどうですか。俺はその言葉が喉まで出かかって飲み込んだ。
なぜこの広い机でわざわざ隣に座るのだ。はっきり言って犬が好きではない俺は、アイーシャの行動にただならぬ違和感を感じた。あるいは嫌悪感かもしれない。
まるで押し売りをしてくる訪問販売のお姉さんみたいな。だいっきらいなので、ケーキを半分に切って、片割れをオーロラに持っていく。残りをアイーシャさんに残してあげる。
その行為によほど驚いたのかアイーシャさんは目を見開いて俺を見ていた。