ついてくる
奴隷が神妙な顔で聞いてきた。
「殿下は奴隷の国に行って何をするおつもりですか?」
「何っていうか、もう始まっていましてね。僕は現地民をこちらに引き込みたいのだ。懐にね」
奴隷は何を言っているのだろうかと首をかしげた。
狼が人の言葉を話すのはそんなにおかしいだろうかと思う。
「いや、ちゃんと人の形でだよ?」
「お言葉ですが、殿下は彼らにあったことはございますか?」
「無いよ。会ったことはない。でもどういうことを考えていて、何が必要で何を欲しているのか分かっているつもりだ。……力だよ」
「協定を結ぶ現地民はここにはおりませんが」
「まだね」
彼らはここに来る。
何しろ、今、彼らの国に出刃って来る軍隊はいない。一夜にして、いや、わずか数時間のうちに兵隊は挽き肉になってしまった。現地民を人間とは思っていない人々だ。彼らは熱狂する。自分の側で戦ってくれるならばどんな犠牲でも払う。彼らはもう100年以上もの間、財産も家族も食い物にされているのだ。100年だ信じられるか。
食い物にしてきた敵が、虫けらのように蹴散らされたのを知った現地民は思ったはずだ。
いったい誰がやったのだと。
そして我らが戦艦の『貴婦人』は遠くからでもよく目立つ。俺は彼らがこの国に来るのではと思っている。それも近いうちに。
しかももう来た。実際についてきていた。海の上をだ。
「やはり戦士というのは素晴らしいな。ボートで海をわたってきたぞ!」
いやーびっくりだ!!転覆したらそれで終わりである。海というのは水深数百もある巨大な渓谷で、そこにはリバイアサンという魔物がすんでいるという話である。そこを木造の小舟で越えてくる度胸が彼らにはあった。
俺はすぐにオーロラをよびつけて耳元に口を近づけた。できれば他の人に聞かれたくはない。
「これから来る戦士は一人も帰さないでほしいのです。最初はしたっぱを送ってくるはず。丁重にもてなしてください。」
「もてなすというのはどのていどのことですか?」
「そうですね。家で一番いい酒を。それから、子牛を10頭ほど丸焼きにして、内蔵はハーブを使ったソーソージにしてほしい。それに勿論真水も」
なにしろ海を越えて来たんだ。
大きなパーティーになった。飲めや歌えやの大騒ぎだ。だが、戦士長、つまりは集団のリーダーはうまいかおをしなかった。なぜならば偵察に出したしたっぱが一人として帰ってこなかったのである。
ついに怒った彼が直々に来たとき、バニー服に身を包んだ最高の奴隷達が軽快なステップでダンスを疲労し、男達を魅了しているところだった。目を見開き口をあんぐり開いた顔なんて見せたかった。