プロローグ
はじめまして。まずは前もって皆さんに知っておいてほしいことから。自分は日本人でもなければ日本語が母語でもありません。日本語の誤用そして相応しくない表現があれば手柔らかく言っていただけると自分としてもありがたいです。何より物語を楽しんでいただければ嬉しい限りです。
注意:本作品には一部刺激的な表現や残酷な描写が含まれます。十分ご注意ください。また、本作品はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
「ちゃんと生きないと後悔するぞ」と父はよく言っていた。
「しねぇよ。これが俺の人生なんだから。これがいいと俺は思う。俺は俺がいいと思うように生きるって決めたんだ」僕はいつもそう返す。
だって、後悔?知らないよそんな未来のこと。これからの人生を考える?これからの人生なんだからこれから考えればいいのだ。今こそ生きないと後悔をするのだ。
後悔後悔。そんなしたこともないことをするわけがないと僕は信じていた。
ところが、僕は間違っていて、父は正しかった。僕はひどく人生を後悔した。そして重ねに重ねて積み重ねた後悔が壁となって立ちはだかり、進む道を塞がれて、希望もなくしてしまった。一本道の人生は進む「この先」がなければどこにも行けない。左も右もない。後にも戻れない。立ち止まりながら、あるいは落とし穴のようなものに堕ちていきながら、後悔しか残らない。
後悔してから思うのだが、後悔はしてからではないと、人は「後悔」を恐れない。だがしかし後悔してからだと恐れてもしかたがない。だから後悔というのだ。「後となって、悔やむ」
そして後悔した人々だけに「後悔」という悔しさを理解する特権が与えられ、彼らの足跡を同じく辿らないように人々に「後悔するぞ」と警告する。
ところが後悔者の彼らを信じて後悔を回避できる人は極めて少なく、「後悔なんてしないよ」と後悔の恐ろしさを知らない彼らは言い、そして後悔ばかりする人だけが増えていく一方だ。
僕もその一人である。
父も後悔した、いや、しているだろう。しかし父は何かを悔しんでいるのかは僕にはわからない。わかるのは僕も父と同じく後悔している。
ああすればよかったのにこうすればよかったのにと考えながら、僕はロープを手に取る。
あーあー、こうなるはずではなかったのに。
こうなることを知っていたらもっともっと、ちゃんとできたのにと思いながら輪っかにしたロープを首を通した。
最後の一息を吸い、春の匂いを肺いっぱいにしながら輪っかを確かめる。うん、しっかりしている。
息を止め、最後の春の匂いを肺の中に閉じ込める。僕は春が好きだ。だから春にした。
鳥のさえずりが聞こえ、花びらの舞い落ちる音が聞こえ、緑を目に留め、川を目に留め、青空を目に留めて、春を全身全霊で感じ取りながら、僕は、足元の椅子を蹴り倒す。




