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第32話 シャルロット(3)

 何もかもがうまくいき、全てが手に入った。


 エルネストを丸め込んで、自分と婚約させた。

 初めのうちは難色を示していた王も、エルネストと婚約してもいいという令嬢がほかに一人もいないことがわかると、どこか投げやりな調子で婚約を認めた。

 シャルロットはフランシーヌの存在を警戒していたのだが、幸いなことに、フランシーヌは第三王子のクロードとの話がまとまりかけていた。


 運が向いてきた。


 この調子でいけば、父の爵位も上がるかもしれない。

 王族の結婚相手は侯爵家以上というのが暗黙の了解だ。

 ついにシャルロットも侯爵令嬢だ。


「後で陛下からもお話があると思うけど、私、エルネストと婚約することにしたわ」

「バカを言うな」

「どうして? そうなったら、お父様も侯爵に位が上がるかもよ?」


 父はなぜか苦虫を噛み潰したような表情になった。


「ねえ、第二王子と結婚するんだから、新しいお城くらい建ててくれるでしょ?」

「どこに、そんな金がある」

「どこにって……」


 侯爵家になって、王家とつながりもできるのだから、お金の心配なんかしなくもいいのに。

 

「もう、うちは貧乏子爵家じゃないのよ?」


 せっかくシャルロットが頑張ったのに、父はただ「おまえは本当にバカだ」と言っただけだった。


 父かエルネストがお城を用意するまでの間に、住んでみたいところがあった。

 アンジェリクのためにコルラード卿が用意したモンタン公爵家の離れだ。離れと言ってもちょっとした城と変わらない。はっきり言ってバラボー子爵家より広くて立派だ。

 

 あれを自分たちの住まいにしよう。

 王都の中心にあって、広々していて、内装は豪華だし、使用人は公爵家の者を好きなように使える。あんなにいいところはない。

 なんならずっと住んでもいい。


 ところが……。


 コルラード卿は、急に手のひらを返したようにシャルロットを突き放した。

 離れに住むことはおろか、これからは買い物の支払いも自分の父親に回すようにと言ってきた。店の者にもそう言っておくと。


「おまえは我が公爵家の娘ではないのだからね」


 コルラード卿の言葉に耳を疑った。


 なぜ、今さらそんなことを言うの?

 四人目の娘のようなものだと言ったのは、嘘だったの?


 恨みをこめて睨んでも、コルラード卿の態度は変わらなかった。


 仕方なく家に帰ると、王からの使いが来て婚約が正式に整ったことが知らされた。

 まだ運に見放されたわけではなかったと、ほっと胸を撫でおろしたのだが……。


「おまえ、エルネストなんか引き受けて、どうするつもりだ……」

「どうするって?」

「知らないのか? 王族との結婚なんて、名誉以外、何もないんだぞ。うちみたいな貧乏貴族に、無駄にでかい名誉なんか必要ないだろ。侯爵になんか引き上げられたら、国の祭礼のたびに今までの何倍も出費がかさむし、第一税率も上がる。領民から取る税は、今でも上限いっぱいの四割なのに、どこから金を工面すればいいんだ」

「だって、エルネストは王子なんだから、領地やお金がたくさんあるんじゃ……」

「だから、今、言っただろう。名誉だけなんだよ。エルネストは王子と言う名の一文無しだ」


 そんな……。


「だったら、これからどうなるの?」

「だから、こうして頭を抱えてるんだ。おまえが引いてきた貧乏くじなんだから、おまえがなんとかしろ」

 

 これなら行き遅れのカトリーヌのほうがまだましだと言って、父は部屋を出ていった。


 しばらく呆然としていたシャルロットだったが、ふとあることに気づいた。

 最初からわかっていたことだ。


 そもそもコルラード卿がいるから父は公爵家を継げなかったのではないか。

 そう気づいてしまうと、ひどく理不尽な気がしてきた。


「そうよ。伯父様がいなければ、お父様がモンタン公爵だったんだわ」


 父親がモンタン公爵ならば、第二王子との結婚はすばらしい名誉になる。

 すでに、エルネストとの婚約は整っているのだし、あとは父に公爵になってもらえばいいのではないか。


「伯父様には悪いけど……」


 だが、コルラード卿にも非がある。

 アンジェリクの離れを、素直にシャルロットに譲ってくれればよかったのだ。

 王都での買い物にも口うるさく言わないで……。


「自業自得よね」


 王都の店で買ったものをお金に換える時、闇の業者を使うことがあった。買ってすぐのものだと、正規の業者はモンタン家に確認などしてうるさいのだ。


 闇の業者はクリムという地区にあった。

 犯罪が多く、近づくなと言われていたが、行ってみればたいしたことはなかった。少し薄汚れた感じはするけれど、別に怖い目にも遭わなかった。


 釘やインクやそのほかの嫌がらせに使った品物は、あのあたりの者に売りに行かせた。

 あそこには、底辺令嬢にも頼めないことを頼める人間がいる。


「仕方ないわよ。私に冷たくするからいけないのよ。伯父様……」



たくさんの小説の中からこのお話をお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] なに?このバカ女。 めっちゃ不快ですね(笑) 色々見た中でも最低な部類ですね〜。 早く没落して欲しいものです(笑)
[一言] どうしようもねぇトウモロコシだな
[気になる点] しゃるろっと [一言] げ○以下の匂いがぷんぷんするぜぇ〜
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