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【旧】ファントムフリー《phantom.free》  作者: tekuto
【Ⅰ 《Fragment / 救世の絆》】
9/20

あの頃の記憶

「待つです。私はホムラさんの敵ではないです」


(敵? そんなの……)

「信用出来ると思うか?」


 出会って数時間しか経ってない相手に、信用なんて出来る筈がない。

 それに魔王乱舞を知っているなら、俺は正体をまた隠さなくてはならない。


「杖を捨てて、武装解除すれば、俺は聞かなかった事にする」


 そして、あとはアバターを変えれば良いだけだ。


「嫌ですよ。やっと会えたのですから……」


 アキラは静かにそう言った。


(会えた? 何を言って……)


「…………3ヶ月前。私は、ホムラさんに会っているです」


(3ヶ月前って……。あの頃の)


 あの頃を思い出そうと、一度その記憶に触れてみる。


 思い出せない……。

 否、思い出せない訳じゃない。

 何か強い力によって、一方的に阻害されただけだ。

 何度やっても、結果は同じ。

 俺はあの頃の記憶をうまく思い出せなかった。


「何、だよ……。これは……?」


 新手の嫌がらせかと思う程、あの頃の記憶が次第に断片的となり、消えていくのが実感できる。

 やがてそれが苦痛へと変わり果てていくのは、時間の問題だと、俺にも分かった。


「〝ファントムコマンド オール・リカバリー〟」


 アキラは苦しむ俺に向けて、何かを放つ。

 すると、消えた筈の記憶が段々修復され、断片的だった欠片が一つ一つ繋がっていくのが分かる。


「これは?」

「オール・リカバリー。対象者がファントムコマンドでの状態異常に掛かった時、それを全て治癒するです」


 何故それを使ったのか、俺は疑問に思ったが、その前にアキラには聞かなければいけない事が一つある。


「アキラは、気付いてたのか?」

「いいえ」


 アキラは首を横に振る。


 それもそうか。

 気付いてるなら、アキラは最初にやるだろう。


「私は記憶操作する類のファントムコマンドは元から使えないです。なので、私自身がホムラさんに妨害する事は、まず出来ないです」


(記憶操作……)


 じゃあ、あの中にアキラ以外にも、OGがいたって事か……。

 だったら、誰なんだ。


「じゃあ。もし同じ状況だったら、アキラは誰だと思う」

「私が今まで気付かなかった事を考慮して、術者はあの場にいた上位者にしか出来ない筈です。ただ、それだと可能性は低いですよ」

「どういう事だ?」

「あの頃にいたOGは、私以外いなかったですから。……ただ、信じて欲しいです。私ではない事を」


 アキラの真剣な眼差しに、俺は心を打たれる。

 それが正しいと思える自分を信じるしか、今の俺には出来ないからだ。

 あの頃にいたOGの魔法使いは、アキラ本人であり、俺は誰かに記憶を消された。

 理由は分からないが……。


「信じるも何も、アキラじゃないんだろ。だったら、俺は」


 太刀を鞘へとしまい、アキラへと歩み寄り、手を伸ばす。


「アキラを信じる。それとごめんな、待たせて」

「遅いですよ。ホムラさん」


 アキラは俺の手を握る。

 その手は、あの頃を思い出すかのような懐かしい温もりを感じた。




   ◇ ◇ ◇




 プロメテウスが四散した場所から宝箱が出現し、次へと進む奥の両扉が開かれた。


「こっちです。それは、ホムラさんにあげるです」


 アキラは宝箱に手を付けず、奥の両扉へと歩いて行く。

 俺は宝箱の方へ行き、中身を回収した。


 宝箱は、施錠や仕掛けはなく、誰でも簡単に開けれる程軽く、逆に脆そうだと思えたが、作りはしっかりしていて、頑丈だった。

 宝箱の中から、俺は鑑定の書と書かれた巻き物と、壊れた発信機のようなガラクタを手に入れた。


━ ━ ━ ━

【鑑定の書】


 ランク ☆☆☆☆


 一度でも使えば、鑑定スキルが取得できる。

 但し回数制限があり、過ぎると壊れる。


 回数制限1回。

━ ━ ━ ━


━ ━ ━ ━

【????】


 不明。

━ ━ ━ ━


(この【????】は、鑑定スキルさえあれば表示されるのか?)


 俺は鑑定の書を使用し、もう一度見てみる。


《鑑定スキルを取得しました》


━ ━ ━ ━

【壊れた発信機】


 ランク ?


 壊れている為、何に使えるか不明。

修復出来れば、使用可能。


 作成者、シャーロット。

━ ━ ━ ━


《作成者、シャーロットの権限により、特殊鑑定スキルを取得しました》


(何だよ、それ……)


「行くですよ」

「ああ、わかった!! 今行く!!」


 既にアキラの姿はなく、俺一人取り残されていた。

 抜け殻となった宝箱を後にして、俺は奥の両扉へと向かった。

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