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【旧】ファントムフリー《phantom.free》  作者: tekuto
【Ⅰ 《Fragment / 救世の絆》】
8/20

ファントムリベレイト

 ……

 ………


 …………………。


『諦めるのは、まだ早いですよ。ホムラさん』


「アキラ……」


 咄嗟に目を開けると、目の前で魔女の姿へ様変わりしたアキラが、マジックシールドで白キ閃光に耐えていた。


「ホムラさんは、半分正解してるです。この白キ閃光は、プレイヤーの魔法や技を一時的に遮断し、超強力な閃光を放つ技。但し、完全に魔法や技を無効化した訳ではないので、1回分なくなった、と言う事です」


 そう説明したアキラに対して、ある疑問点に気付く。


「じゃあ何でアキラは、魔法が使えるんだ?」

「その質問をする前に。〝シャイン・チェーン〟」


 白キ閃光の威力が段々弱まり、やがて消滅する。

 そこでアキラは光の鎖を解き放ち、プロメテウスを縛り付ける。

 すると、アキラの魔女衣装が砕けるように解除され、元の魔法使いの姿へと戻った。


「そう言えば、白キ閃光を止める為になっただけでしたね」

「何を言って……」

「〝ファントムリベレイト マジシャン〟」


 アキラがそう言うと、さっきの魔女衣装へと姿が変わる。


「これは、ファントムリベレイト。phantom.freeから生み出された技の1つでして、リベレイト中は、様々な能力が付与されるです」


━ ━ ━ ━

 マジシャン 固有


 初心者の魔法使いが最初に使用する、あらゆる魔法に特化した能力が付与される。


 主に初級魔法攻撃、魔法防御、座標位置固定、転移(1回まで)など。

━ ━ ━ ━


「それとさっきの質問の回答ですが、リベレイト中は、プレイヤー以外の能力、又は効果を完全に無効化出来るです。なので、今の私は自由に魔法が使えるです」


 平然と振り返るアキラを見て、俺は苦笑した。


「チートかよ……」

「前言撤回するですよ。この技は、phantom.freeでは良く使われるです。…………これでも、強化外装のような代物なので」


 冷静に淡々と応えるアキラのその言葉に、俺は一度納得せざるを得なかった。

 それはまだ俺が、ファントムリベレイトという技を所持していなかったからだ。

 もしその技が、この世界について重要だとすれば、必然的に怒られても仕方がなかった。


(まぁそれは、俺がまだ初心者だったから免れた、って事か……。チートは言い過ぎたな……)


「アキラ。俺が悪かったよ。ごめん」


 俺は頭を下げた。

 アキラに対して、否、この世界に対して、侮辱してしまったから。


「頭を上げるですよ。まだ戦いは終わってないですから」

「ああ」


 向き直ると、アキラは何も言わず、杖で俺の頭を思いっきり叩いた。


「痛、ってぇぇ!!」


(許したと思ったら、不意打ちかよ)


「ホムラさんには罰として、ラストアタックを決めて来るです」


 アキラは下にいるプロメテウスに向けて、真っ直ぐ指を差す。

 プロメテウスの様子を見ると、アキラの放った光の鎖で、身動きが取れていないようだった。


「ラストアタックって何だ?」

「決め技のような物です。では」

「おいっ」


 アキラは俺の肩に手を置く。

 すると、一瞬にしてアキラが消え去ったと思うと、どうやら違ったらしい。

 それは、俺一人がプロメテウスのいる場所まで転移されていたからだ。




   ◇ ◇ ◇




「マジかよ……」


 額に手を当てると、俺はすぐに嘆く。

 散々逃げ回るのに必死だったプロメテウスが、今こうして目の前にいるって事に……。


(縛られているだけ、まだマシか……)


『忘れてたですよ』


 アキラの声と共に、プロメテウスは縛られていた光の鎖を引き千切った。


「鬼か!! 絶対に今、解除しただろ!!」

『…………』


(返事がないって事は、図星か……)


『その攻撃は避けるですよ』


 不意にアキラは言ったが、俺も気配に気付いてたので、背後から飛んでくる野球ボール程の大きさの火の玉を避ける。


(背後を向かせようとする陽動か……)


 すぐに太刀は抜かず、正面のプロメテウスを見れば、襲って来ているのが分かる。


(当たりだな……)


 プロメテウスは溶岩で作られた巨大な左拳で殴ろうとしたが、俺は後ろに跳躍し、攻撃を避けた。

 次は、巨大な右拳が急接近している事に気付く。

 殴ろうとしてきたので、太刀を抜き、攻撃を受け流しつつ、刃先を向けて反撃する。


「〝魔王剣技 桜花一閃〟」


 刃先が一瞬輝きに満ちて、光が閃く。

 そして俺は、見様見真似に十字に斬る。

 すると、巨大な右拳は呆気なく破壊され、大地に無惨な状態で転がった。


『やるですね』

「まだだ。桜舞い散る、春の丘。風の音色に耳を傾け、我は問う」


 次、いつ来るか分からない白キ閃光に対して、俺は詠唱を始める。

 プロメテウスは、そんな俺の行動を見て、残った巨大な左拳を目にも止まらぬ速さで襲って来る。

 詠唱中の自動防御が発動し、太刀で防ぐ事は出来たが、予想外の威力に太刀の耐久値が半分以上削られた。


(くそっ!! もう防げない!!)


 それでも俺は詠唱を止めなかった。


「この世全てが永遠ならば、我は全ての平和を望み。この世全てが戦場ならば」


 するとプロメテウスは、下半身の球体から巨大な眼がギロリと開く。

 その巨大な眼は、俺を見て、不敵に微笑むと同時にあの技を放つ。


『〝白キ閃『させないですよ』』


 ガスッと巨大な眼に、鎖付き光の刃が刺さる。

 プロメテウスは驚愕し、巨大な眼を閉じようとするが、光の刃が邪魔で閉じられない。


(今の内に……)


「この世全てが戦場ならば、我は全てを無へと返す。桜の魔王、ここに有り。〝術式解放 桜花〟」


 詠唱を完了し、魔法を発動すると、足元から周囲へと電流が一瞬迸る。

 プロメテウスは巨大な眼に気を取られ、その電流に気付かないまま通り過ぎると、全身に麻痺状態が付与された。

 俺は透かさず、プロメテウスの懐に入ると、頭から流れるように女性の声が送られて来る。


《ラストアタックをしますか?》


 頷くと、ラストアタックの説明が表示された。


━ ━ ━ ━

 ラストアタック


 ボスや特別ステージのみ発生し、成功すれば大ダメージを与えられる。

 ただしチャンスは一度のみ。


 ボスの場合は、条件として瀕死状態まで追い込めば発生し、

 特別ステージでは条件はなく、プレイヤーが自由に使える。

━ ━ ━ ━


 プロメテウスのHPバーは、あと1本と半分があり、瀕死状態と言う訳でもなかった。


(って事は……、出来な)


《貴方のその技なら可能です。貴方自身がそう望めば、必ずやラストアタックが発動されます》


「ああ、わかった……。〝ラストアタック〟」


 俺は、もう終わったから、赤く染まった太刀を鞘に収め、この場を離脱した。

 するとプロメテウスは、俺の気配に気付き、自身が麻痺状態であっても、暴れ出そうとしてきた。


(だが、もう遅い)


 俺は小声で言ってやった。


「〝魔王乱舞 鬼牙オーガ一閃〟」


 何もない空間から突如出現した、いくつもの赤い斬撃が、プロメテウスの周囲を囲うように、巨大な眼に襲いかかる。

 プロメテウスは当然防ぐ事が出来ず、そのまま受け続けると、その傷跡から、ある術式が刻まれた。

 あれは、さっき術式解放した桜花の術式だ。

 その桜花の術式の中から赤い玉が現れると、蝋燭の火をふっと消すように消え失せた。

 すると同時に、プロメテウスは何も理解出来ずに、ポリゴン体となり、バラバラに崩壊しながら四散した。


「お見事です。ホムラさん」


 声の聞こえた方向を見ると、魔女姿のアキラがそこにいた。


「来てたのか」

「はい。もう終わる頃かと思ったので」


(終わる? 何でそんな事が分かるんだ?)


 魔王剣技を使った時点で、俺が魔王の後継者だと思うだろうが、それにしては早過ぎるのが、普通の答えだ。

 それなのにアキラは、あたかも知っていたような言い方をしている気がした。


「どうして分かるんだ?」

「魔王乱舞 鬼牙一閃……」


 それを聞いた瞬間。

 俺は得体の知れない恐怖を感じ、鞘から太刀を抜き、刃先をアキラへと向けた。

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