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【旧】ファントムフリー《phantom.free》  作者: tekuto
【Ⅰ 《Fragment / 救世の絆》】
7/20

火を司る巨神

 アキラを先頭に、俺も暗闇の中へと静かに入って行く。

 何処かに灯りがあるのか、薄暗く感じるそこは、全体的に広く、そして戦闘に適した場所だった。


(あの頃と一緒だな……)


 後ろの両扉がゆっくりと閉まっていく音と共に、段々部屋が明るくなっていく。

 俺は部屋全体を見渡していると、突然アキラが何かに気付き、叫んだ。


「下がるです!!」

「え?」


 呆気にとられた俺は、アキラを見ると、目の前には、溶岩で作られた巨大な拳が、こちらに向かって来ているのが分かる。

 ほんの一瞬。俺は反応に遅れ、防御、回避、共に不可と表示された。

 アキラがそれに気付き、透かさずマジックシールドを前方に展開し、その攻撃を防ぐ。


 だが、次の瞬間。


 向こうの威力が強過ぎたのか、俺は身動きが取れないまま、後ろに吹き飛ばされた。

 何処かの壁にぶつかり、かすり傷を負ったが、その場から自力で起き上がり、俺は鞘から太刀を抜いた。

 すると目の前には、何とも特徴的な巨神が姿を現していた。


「何だよ。あいつは……」


 無骨な機械の鎧を身に纏い、ゴツゴツとした溶岩で作られた巨大な両腕。

 下半身は透明な球体で出来ており、球体の中では、力強い炎が燃え上がり、気球のように少し浮遊していた。

 その巨神は俺達を上から見下ろし、当然のように吠えた。


『オオオォォォォォォ』


 規格外の声に、思わず俺は耳を塞ぐ。

 やがて巨神は、その場にいる俺達を認識すると、長いHPバー3本と名称が同時に表示された。


 火を司る巨神 プロメテウス


「アレが火の神殿のボスです。私が足止めするので、ホムラさんは逃げるですよ」


「逃げるって……。あの巨神の攻撃からか。おいっ」


 俺にそれだけを伝えて、アキラは高く跳躍し、プロメテウスの背後へと周り込むように姿を消した。

 すると突然。

 ズウンッと重い音が聞こえたので、音の聞こえた方へ俺は振り向くと、プロメテウスの上空から黒く歪んだ空間が現れているのが見えた。


(重力魔法か)


 その重力がプロメテウスに触れると、まるで罠にかかったように、プロメテウスは大地に手を付き、跪くように倒れ込む。

 その時。重力魔法の威力が強力過ぎたのか、激しい衝撃波が生まれ、それが原因で大地震が発生する。

 徐々に地割れも発生し、以前の地形からかけ離れる程、変化し始めているのが分かる。


「おいおい。逃げてる場合じゃないだろ。〝魔王宝具 雷虎(ライコ)流星(リュウセイ)〟」


 雷虎流星とは、主に足に使用し、素早さと回避性能を底上げする能力。

 壁を跳躍して移動したり、足場を無視して無理矢理駆け抜けたり、忍者に似た移動手段として、出来る範囲、多種多様に使える技。


 地形変化で出来た崖のような道を跳躍し、 天井とは程遠いが、俺は頂上と呼べるべき場所まで辿り着いた。

 下を覗けば、プロメテウスは重力魔法の影響で、今もその場から動けず、跪いていた。


(今迂闊に攻撃しても、あの鎧で防がれるだろうし、重力魔法が解ける可能性もあるからな。どうしたら…………)


 俺はプロメテウスの攻略法が分からず、ただただ模索していた。


(確かfreeでのプロメテウスは、胸の中央にある水色に光る宝石を壊せば、弱体化し、止めを指すといったシンプルな倒し方だったような……)


 このプロメテウスもfreeと同じような宝石が胸に存在したが、姿まで酷似している訳ではない。

 だが、もしfreeのような弱体化ではなく、鎧を外せるといった方法だとしたら、戦況は大きく変わるだろう。


(まぁ、 試す価値はあるな……)


 周りにある小石を拾い、俺はプロメテウスの背中から胸にあった宝石の位置を予想する。

 魔王宝具、桜花一閃には貫通能力を付加させる効果がある。

 小石を太刀に例え、貫通能力を付加させてみる。


「〝魔王宝具 桜花一閃〟」


 成功。小石はダーツような形状に変化した。

 俺は狙いを定め、ダーツを放つ。

 数秒後。プロメテウスの背中の予想していた場所にパスッとダーツが刺さる。

 すると、ダーツは溶けるようにプロメテウスの体内に侵入したが、微妙にHPが削れただけで特に何も起こらなかった。


「失敗か……。気を取り直して、次だな」


 また小石を拾って、2本目のダーツを作り始める。

 物体があるから想像し易いのか、2本目の付与も簡単に成功した。

 次こそは外さないように、狙いを定めようとした、その時。

 パリンッ。

 微かだが、遠くからはっきりと宝石が砕け散る音が聞こえた。

 すると、プロメテウスが身に着けていた無骨な鎧が全て外れ、ポリゴン粒子となり、消滅した。

 さっきの攻撃では、微動だにしなかったプロメテウスのHPバーが、今の攻撃で、丸々1本分消し飛ぶ。


 上からプロメテウスの周囲を見ていると、今まで姿を見せなかったアキラが、プロメテウスより少し離れた場所で、何かを伝えようと口を動かしている。

 だが、あまりにも距離が遠過ぎて、俺には全く聞こえない。

 もし、アキラがまた逃げろと伝えようとしても、俺からして見れば、信憑性が見当たらない。

 それは、今、俺がいるこの場所は、プロメテウスよりもかなり距離が離れているし、まず狙われる心配はないに等しい。

 それに、どんな攻撃をされたとしても回避は出来るし、対策もある。


 プロメテウスは、下半身の球体から巨大な眼がギロリと開く。

 するとその眼は、俺の方向を睨みつけると、何の動作も見せずに、容赦なく放った。


『〝白キ閃光〟』


 まず俺は、対策として防御力を上げる焔神楽を使う。


「〝魔王宝具 焔〟」


 ズキンッ。

 頭に電流が走り、俺は倒れるように地面に手が付く。


(MP切れ……?)


 魔王剣技と魔王宝具には、回数制限はあるが、MP(魔力)消費など根本的に存在しない筈だ。


(なのに、何で?? どういう事だ)


「〝魔王宝具 焔〟」


 そう発した瞬間。突然、俺はダメージを受ける。

 これは、制限によるダメージ。

 だとしても、焔神楽が使えない理由は、どこにも見当たらなかった。


「まさか、あの白キ閃光。相手の魔法を封じる力でもあるんじゃ……」


(だから、逃げろ、か……)


 白キ閃光が近付くにつれて、俺は何も出来ない自分に対して、段々諦めかけた。


 これは、ゲームだ。

 デスゲームじゃないんだから、もう一度どこかで復活すれば良い。

 アキラには悪いけど……。

 それもゲームの醍醐味だろう。


 俺は、目を閉じた。

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