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【旧】ファントムフリー《phantom.free》  作者: tekuto
【Ⅰ 《Fragment / 救世の絆》】
5/20

火の神殿

「ここ、って……」


 石造りの道。

 両方にそびえ立つ、門を守護する巨人兵の像。

 そして門には、燃え盛る炎をイメージした火のエンブレムが、刻まれていた。


 すると、後ろから誰かが応えた。


「魔法都市アルカナ、火の神殿ですよ」


 思わず振り向くと、アキラがそこにいた。

 アキラは、如何にも魔法使いを主張するかのような服装に、俺は気付くと、咄嗟に自身の装備を触り始めた。

 その装備がどのゲームで身に着けていた装備だと気付いても、原理が分からず、不思議そうにする俺にアキラは仕方なく話し掛けた。


「phantom.freeは、freeを拡張した世界です。そこまで不思議に思う事ではないですよ。この世界は、まだまだ開発途中。私達だってαテスターなので……」

「へぇ、そう言う事か。道理で見た事があると思ったら…………って、α!?」


 αテストとは、新たに開発されたハードウェアやソフトウェア、オンラインゲームなどが開発初期段階、試作版の段階の時に実施されるテストのこと。

 αテストの後は、良く耳にするβテスト、その後が正式サービスだ。


「何か問題でも?」

「だってfreeは7つの都市の内、まだ半分の4つだけだぞ」

「夏のイベントが終われば、次の都市は解禁されるですよ」

「嘘だろ」

「いえ、本当です。来年までには7つ全部…………。それとホムラさん。間違えているですよ。正確には、消滅都市があるので、合わせると現在8つ中、5つの都市があるです」


━ ━ ━ ━

 消滅都市アナザー。


 都市の大半が消滅され、進む場所はほとんどないが、隠された財宝が忘れられ、眠っている。

━ ━ ━ ━


 消滅都市アナザーは、出現条件が難しく、滅多に出現しない為、あえて俺は数には入れず、伏せていた。


「えっと、次は武器ですね。ホムラさんは、その感じからして剣士ですか?」


 アキラは、俺の通常装備を見て、なんとなく尋ねた。


「ああ、そうだよ。俺はfreeでは主に太刀を使ってたな」

「では、これをあげるです」


 アキラはメニューを開き、いくつか操作をしてから、武器を実体化させ、それを俺に渡した。


「良いのかよ、これ……」


 それはレアリティUR(ウルトラレア)の太刀で、既に所有者も俺に書き換えられていた。


「私には必要ないです。この世界では、レアリティのある武器やアイテムより、クラスアイテムの方が欲しい人多いので……」

「クラスアイテム??」

「これですよ」


 アキラは肩に掛けていたポシェットのようなマジックバックから、あるアイテムを取り出した。

 それは、何処かで見覚えのある黄金の聖剣だった。


 W エクスカリバー


「クラスアイテムは、レジェンドクラスとワールドクラスの2種類あるです。これは表記だとこんな感じですが、読み方は、WCIワールドクラスアイテム、エクスカリバー。その名の通り、かの有名な方の聖剣です。ただ鞘はないので、自己回復能力はないです」

「へぇー。そのクラスアイテムって、レアリティのある物と、どう違うんだ?」

「根本的に違うですよ。まずクラスアイテムは基本、頑丈なので中々壊れないです。それとレアリティのあるアイテムと比べれば、どれを取ってもクラスアイテムの方がほとんど上位です」


 するとアキラは、ポシェットからURのエクスカリバーを出し、俺にそれを渡した。

 さっそく見比べてみると、一目瞭然だった。


━ ━ ━ ━

 UR エクスカリバー


 攻撃力 2722 防御力 638


 能力


   HP・魔力回復(中)

━ ━ ━ ━


━ ━ ━ ━

 W エクスカリバー


 攻撃力 2468 防御力 0


 能力


   HP・魔力回復(中) 邪神耐性 

━ ━ ━ ━


 クラスアイテムの方が、攻撃力は微妙に低い数値だが、能力が1つ多い。

 防御力がないのは、鞘が不足している為らしい。

 たとえURであっても、クラスアイテムの劣化という訳でもなさそうだ。


「それにクラスアイテムには、オリジナルのリベレイトが存在するらしいので、クラスアイテムを欲する者の気持ちは理解できるです」

「オリジナルの何だ?」

「それはボス戦の時にでも教えるです。着いて来るですよ」


 俺は聖剣をアキラに返すと、手招きするように、アキラは前方に見える火の神殿へ歩いて行く。


「おい。待てって」


 アキラを追うように俺は、火の神殿へ向かおうと思ったが、門の近くまで来ると、リアルに見えるその風景に、俺は足を止めてしまった。

 すると後ろから、俺の背中を押すように、少女の声が聞こえた。


『怖がらないで』


 その声が何処か、家族のような、仲間のような感じがして、現実でもない仮想世界に怖気づく自分に、俺は思わず軽く笑ってしまった。


「もう大丈夫。ありがとう」


 この声の主は妖精だと思い、俺は小声でそう告げた。

 そして、勇気を振り絞って、火の神殿へ向かった。




   ◇ ◇ ◇




「少し来るのが遅かったですよ」

「悪かった。ごめ」

「頭は下げなくても良いです。最初は、この火の神殿を恐れても、当然なので……」


 アキラにそう言われ、少し安心したが、これが二回目だという事実は変わらない。


(俺、どれだけビビリなんだ。アキラには内緒にしておくか……)


 俺は全体を見渡すと、辺りは灼熱地獄の世界が広がっていた。

 周囲にある火山は噴火し、ドロドロと溶岩が下へ下へと大地にまで流れ込み、プレイヤーの行く手を阻んでいた。

 phantom.freeは、freeを拡張した世界。

 アキラの言ったその言葉は、この火の神殿で大体理解できた。


「そう言えば、忘れてたですよ。〝コールド・ヒーリング〟」


 アキラは杖を構え、冷却魔法を唱えると、俺とアキラに冷却のアイコンが表示された。


「これで暑さに負けないです。それとこれもしないと」


 アキラはメニューを開いて、何か操作し始めた。


「そう言えば、メニューってどうやったら出るんだ?」

「メニューと念じながら、人差し指で横にして縦の十字を作れば、出るですよ」


 試しに俺もメニューを開いてみた。

 すると、装備やアイテム、メールなど色々な項目が表示された。

 最初は興奮したものの、すぐに俺はある事に気付いた。

 メニューを閉じるはあったが、ログアウトがどこにもなかった事に……。


「アキラ。ログアウトは、どこだよ?」

「ログアウトはまだ出来ないですよ」

「は? 何で?」

「ホムラさんは、火の神殿クリア後にログアウトが出来るようになるですが、アルカディアに着くまでログアウトはさせないです。死んでも、復活場所がここなので注意するですよ」


 さらりとアキラは恐い事を俺に話すと、冷や汗と共にプレッシャーが走る。


(それ。最初に説明しろよ)


「って、俺。現実世界で人待たせて……」

「この火の神殿をクリアするまでは、現実世界の時間は停止するですが、あとは仕方がないです。ごめんなさいです」


 アキラは頭を下げようとしたが、俺はそれを止めた。

 あの先生なら待ってくれるだろうと思ったからだ。


「別に良いって。大した用事じゃないし……」

「そうですか。では、パーティー申請したので、了承お願いするですよ」


 パーティー申請のアイコンが表示されると、俺は了承した。


「最短ルートで行くですよ。ホムラさんのそのレベルなら楽勝なので……」

「ああ」


(悪い予感しか、しないんだが……)


「では行くですよ。〝ストック魔法 ゲート・オープン〟」


 巨大な魔法陣が俺とアキラの足元に現れる。

 アキラはその魔法陣を杖で突いた瞬間。

 魔法陣は煌めき、俺達は魔法陣と共に何処かに消え去った。

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