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◇カルネ
あ…そういえばレーの回収もしなきゃだった…
「あの、門から出たらレーを探してもいいですか?」
「うん、全然構わないわよ?
そのレーって、使役妖精の?」
「あ、はい…多分そうです」
「ん?多分…?」
多分使役妖精なんだと思う…
言うこと聞かないけど…
「多分…」
「まぁ良いか…じゃあ行きましょう?」
「はい!」
あんまり深く考えないでくれてよかった…
◇セリナ
そういえば、どんな妖精なんだろ…
見るのが楽しみ…
「レー!レー?どこにいるんだよ!!」
《なに…?》
「もうここを離れるから、回収に来たんだよ…」
《わかった…でも、そのひと、だれ…?》
「私のこと…かしら?」
「ああ、この人はセリナさんで…」
《かるねが、こいびとをつれてきた…?》
恋人…?えっ…
「は?いや、ちが…」
カルネ君は焦ったように妖精さんを制止しようとする。
《…いいにおいのまりょく…もしかして、えるふ?》
「そうだけれど…?」
すごい…さすがは妖精…
《えるふはいいこがおおい…こうさいをみとめる…》
「へ…?」
交際を認めるって…え…?
「だからー!違うって言ってるだろ!!」
《そう?なら、かるねはゆうりょうぶっけん…そんはない…おすすめする…》
「へぇ…妖精によく好かれているのね…」
こんなに主人を褒める妖精もなかなかいないわ…
「いや、これは多分…セレナさんのことを気に入っただけだと思う」
《…ばれた…?》
え…
「レー?何やってんの…」
《あっ…これはほんきでおこってる…にげる…》
「あ!レー!!」
《ばいばい、たびにはついてくからさきにいっておいて…》
「くそっ…レーのやつ…」
「ふふ…」
「あ…セレナさん…」
少し恥ずかしそうにしてる…
それにしても…良く良く顔を見てると、本当に女の子みたい…
って、そんなこと思ってたら失礼だよね!!
「仲良しなのね」
「いや、僕ばっかりが振り回されているような気が…」
そんなことはないとも言い切れないよね…
だって…
「妖精なんてそんなものよ…
自由で、気まぐれで、偶に力を少しだけ貸してくれるような、そんな存在」
「…」
カルネくんは黙り込んで、考え込んでしまう…
「力を貸してもらえることなんて…
妖精に好かれる魔力を持つエルフでもなかなかないのよ?」
「えっ…」
「あなたは、どうして妖精に出会ったの?」
そうして、私は問う…何故、あなたは妖精に出会うことができたのか…
それが私達エルフの使命だから、私はその使命に沿って、あなたが妖精を悪用しないか見極めなければいけない。
◇カルネ
ふわりと微笑んで問う姿は、美しくて、儚くて…
ふとすると消えてしまいそうだった…
でも、その儚さの中に力強い意志を感じる…
僕は、この問いに答えなければならない。
そう言われた気がした。
「僕がレーと出会ったのは、10歳の頃です…僕はまだ子供で、無邪気に森の中を走っていました…」
◇回想〜
「ふふふ!こっちには何があるのかなぁ…」
僕が森を探索しているときでした。
森の奥から、不思議な声が聞こえたんです。
《ねぇ、こっちにおいで!いっしょにあそぼう!》
あ、この声はレーじゃなくて、別の妖精だったらしいんですけど…
「あそぶ!!」
無邪気だった僕は森の奥に走っていったわけですね。
そして、その奥にあった泉が、妖精の憩いの場だったんです。
僕はそこでレーと仲良くなって、契約したんです…
◇回想終了〜
「…なかなか迂闊な子供ね…?」
「無邪気だったので?」
「ふふっ…それじゃあ、そろそろ行きましょう」
セリナさんは可愛らしく笑う。
なんだろう…本来の笑み…って感じがする。
なにコレ、何だこれ、僕の知らない感情が渦巻いてる。
「あ、そうでしたね…」
「あなたのこと、私…好きになれそうね」
ぁ…他意はない、他意はないはずだ…
ここで照れたらだめだ…
ああ、今前をセリナさんが歩いていてよかった…
この真っ赤に染まった顔を見られない…
◇セリナ
うわ…思い返すと恥ずかしいこと言ってない?
好きになれそうねって…うわぁあ!!
なにこれ、恥ずかしいこと言ってるじゃん!!
「じゃあ、レーとも仲良くしてくださいね…
レーが、セリナさんの事を気に入っているようなので…」
「ふふ…わかったわ」
あぁもう!
でも…こんな真っ赤に染まった顔、見られなくてよかった。