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多大な遅刻、申し訳ありませんでした…
◇セリナ
…何だか空気が重いような気がする。
私が踏み込んじゃいけない範囲だったのかな?
冒険者は訳アリが多いから、余計な詮索は控えろって言われてたのについ質問しちゃったけど…
「カルネ君?」
「…あっ、はい!なんです…どうかした?」
敬語に戻ったりしてるし、やっぱり様子がおかしいよね。
「体調悪いの?」
「え、違…うよ」
カルネ君は、少し困ったように笑う。
なら、やっぱり私は踏み込んではいけなかったんだろう。
「そっか、ごめんね…じゃあ行こっか!」
◇カルネ
ふたりとも黙ったまま、ダンジョンに付く。
セリナさんが黙ってるのは僕のせい…なのかな?
「ここで何するんで…かな?」
「…カルネ君の実力を見たいと思ってるの」
僕の実力?どういうことだろう…
「えっと、それは…」
「私はカルネ君の戦闘を見たことないでしょ?」
ああ、なるほど…
じゃあ本気じゃ駄目だな。
『力がバレたら利用される、気をつけて』
…うん、それはもう知ってるから大丈夫だよ。
だからもう少しだけこの人と旅をしてていいかな?
「わかった」
◇セリナ
私は後ろに控えながら、カルネくんの戦闘を見ていた。
敵はグリーン・ゴーレム
…早い、目で追うのがやっと…って、あれ?
遅く…なった…?
「カルネ君、大丈夫?」
「大丈夫…」
◇カルネ
やばい、早く動きすぎたかな?
変に思われ…
「もしかして、体力が切れてるの…?」
あ、遅くしたのをいい感じに誤解してくれた。
このままばれないでいられたらいいんだけど…
とりあえず、片付けるか…
「どうでし…どうだった?」
「すごく強かった、もしかしたら私よりも…」
どうだろう?僕は勝てるだろうか、彼女に…
「セリナさんには勝てないよ」
だって、どうしても刃を向けるのを躊躇してしまう…
だから僕はセリナさんに勝てない。
「私も、カルネ君には勝てないかも…」
「どうして…?」
思ったよりも、出た声が震えた。
それでも僕は無理に表情を取り繕った…そうでなければいけない気がしたから…
「カルネ君は優しいから…きっと君は理由が無ければ私を攻撃しないと思うんだ…だから、私も…躊躇してしまうと思う」
そうやって笑ったセリナさんに、より一層憧れて…
僕は…そんなに優しくないよ、なんて…そう言いそうになった。