ティーレ様はカエル顔!
「ティーレ様! 怪しい奴がおりましたので捕まえてまいりました!」
俺が引き摺られていった先は、それはそれは豪華な装飾が施された部屋だった。
て、あれ?
この家ってこんなデカかったっけ?
シャンデリアとか蜘蛛の巣張ってたけど、今見たらメッチャ綺麗。
つーか。
何で人が住んでんだ?
そして、誰だ?
あの椅子にふんぞり返ってる、厚化粧の化け物は?
「んんふっふぅ。何かと思えば」
おぉ、化け物が喋った!
よく出来てるなー、着ぐるみにしちゃめちゃくちゃリアルだぞ!
「うわー……、なんか凄いの出てきたな」
思わずそう口走ると、その場にいた者たちの視線が一斉に俺に向けられる……
あれ? なんかマズイこと言いました?
「んふっ、お前。ちょっと口が過ぎないかしらん?」
化け物は、そのでっぷりした体を持ち上げてると、ノシノシと俺に近付いてきた。
んー、近くで見るとますます良くできた着ぐるみ、もしくはメイクだな。
ほんと、なんの集まりなんだろ、これ?
「おぉー、コスプレにしちゃよく出来てるー」
「コス、ん? 何かしら、それは?」
「しっかり演技しちゃってさぁ。あれだろ、これって何かの集まりなんだろ? えーっと、何だっけ? あー、思い出せないー!」
「この無礼者! ティーレ様に向かってなんてことを!」
「いやいやいや、あんたらだってなかなか、迫真の演技じゃない? ま、ほら。俺にかけた手錠だって、実はスルッと外せるやつでさー」
とガチャガチャ手を動かすんだが、これがなかなか外れないわけで……
「あれ? テレビとかだと割とすぐに外れんだけどなぁ」
俺はブツブツ言いながらガチャガチャ……
でも外れない。
あれ?
どうして?
「お前、バカなのか? 鍵がなければ外せんだろうが」
「え! これマジでハマってんの!? 冗談じゃねぇや、早く外してくれよ!」
「こ、こいつ……勝手に屋敷に侵入してきたくせに、手枷を外せだと? 怪しい上に図々しくないか?」
「ほらほら、あなたぁ。今すぐ目的を言えば許して差し上げるわよぉ〜。わたしの美貌が目的だったのでしょ? わたしの愛人希望とか? おっほっほっほ〜!」
「ふっざけんな、化け物! 誰がお前なんかと愛人契約結ぶんだよ! つーか、そのメイクはやりすぎだろ! テッカテカのカエルみてぇじゃねぇか!」
愛人とかほんと、冗談にも程がある!
それに、俺は仕事で来たんだよ!
お前らの遊びに付き合ってる暇はないっつーの!
「いいからもう離してくれよ! 俺は便座を交換してすぐに帰りたいんだよ!」
「こ、こいつ! ティーレ様になんと……」
「テ、ティーレ様!?」
「ゆ、許さぬ……、このわたしを侮辱しおってからにぃぃぃぃ……!」
なんか分からんが、このカエル。
凄く怒っていないか?
「こやつは憲兵団に引き渡してくれるわぁぁぁ!! そこで自分の罪を見直すがいいぃぃぃぃ!」
そしてまた、俺はずりずりと引き摺られて行くのでありました……