神の盾
「ま、まじか……!」
俺は口をあんぐり開けていた。
と言うよりも、驚きを隠せなかった。
何もなかったところに……
もとい。
便器しかなかったところに、水道パイプが現れたのだ。
魔法のように。いや、魔法なのかもしれないが……
俺の目の前に浮かび上がったメニューを読み上げただけなのに、現れた!
「おぉ……!」
「ま、魔法を使うのか?」
だが、驚いていたのは俺だけじゃない。
俺を取り囲むコスプレ軍団の反応も似たようなものだった。
「し、しかし奇怪な魔法だな」
「攻撃魔法か? いや、それにしては……」
「おい、貴様! これはどういう魔法だ? 説明しろ!」
いや、説明しろって。
むしろ、俺が聞きたいくらいだわ……
「え、えーと……、これは……」
俺が説明に戸惑っていると、騎士らしい格好をした、金髪野郎が、
「説明しろと言っている!」
と偉そうに高圧的な態度で迫ってきた。
「い、いいい、いやいや! 俺だって訳分かんないんだけど!?」
俺は思ったことを素直にそう口にした。
だが、騎士はそれを聞いて目をカッと見開き、
「己れ、魔法使いめ! 一体何を企んでいるのだ!!」
そっちこそ、一体何がしたいんだよ!
もう! 俺は早く仕事を終わらせて、次の現場に行きたいのに!
どうしてこう、邪魔ばっかするんだよ!
「とにかく、仕事させてくれよ! 俺はこのウォシュレットを取り付けたいだけなんだ!」
と騎士たちにふたを閉めた状態のウォシュレットを向けると……
「ぬぉぉぉ!?」
「そ、それはぁぁぁぁぁぁ!」
と何故かウォシュレットを見て驚いている。
「あ、あれ?」
そして騎士たちはその場に跪き、どっかの宗教の礼拝みたいに拝み始めたではないか!
「「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」」
「うぇぇぇぇぇぇ!? な、何の真似だよ!?」
正直言って、気味が悪い。
て言うか、すげー演技だな。
こいつら、コスプレして演技もしてってどんな集団なんだよ?
動画投稿したらめっちゃ再生されんじゃね?
っと!
そんなこと考えてる場合じゃない!
さっさと済ませないと!
「とにかく、邪魔しないでくれ! 俺は仕事をサッサと済ませたいんだ!」
と、便器の上にウォシュレットを乗せようとした時!
「こ、この罰当たりがぁぁぁぁぁぁ!」
「神の盾を、そのような汚れたところに置くなー!」
と後ろから飛びかかられて、取り押さえられてしまった!
な、なんなんだ一体!!
「な、何だ!? 俺は仕事をーー!」
仕事を済ませたいのに、どうしてこうなる!?
カミのタテって、何の話だよ!
これはウォシュレットだろ!?、そして俺はその場からズルズルと引き摺られて行く……
……一体、何なのよ?