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二度目の人生はロリ女神とともに  作者: 楽観的な落花生
第3章 患い少女は祈らない
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第16話 『水卜唯乃莉』


 水卜みうら唯乃莉いのりという一人の女子高生について語ろうとすれば、まず真っ先に思い浮かぶ言葉は、何と言っても『病』の一言に他ならない。


 彼女のことをよく知る人間にも、またよく知らない人間にも、ただの一つだけ、「水卜唯乃莉と言えば?」と質問を投げかければ、ほぼ百パーセントの確率で、「病」という答えが確立することは確実だ。


 そう恥ずかしげもなく断言できるくらい、この女の子を的確に言い表す言葉は他に存在しない。


 病は気から、ならぬ、病は貴から。


 水卜唯乃莉は、自らが抱える病によって成り立っている。


 いや、しかし、そうは言っても、彼女もこの世で生まれ、この世で生きる人間。


 人間である以上、彼女を構成する要素がたったそれだけのはずがない。


 例えば、髪の長さとか、髪の色とか、髪型とか、髪質とか、眉毛の太さとか、睫毛の長さとか、瞳の大きさとか、瞳の色とか、耳や鼻の形とか、口の大きさとか、唇の艶とか、頬の柔らかさとか、肌のきめ細やかさとか、身長とか、体重とか、手の大きさとか、脚の長さとか、スリーサイズとか。


 微に入り細を穿って彼女の身体的特徴を記述しようとすれば、他にいくらでも言いようはあるし、またそれは良い様でもある。


 何も身体的特徴だけではない。


 例えば頭の出来だったり、運動神経だったり、もっと単純に、性格だったりも、彼女———水卜唯乃莉を構成する要素たり得る。


 彼女のキャラクター性を描写するのならば、それだけで事足りるように感じるかもしれない。


 だがしかし、さにあらず。


 それでは足りない。全然足りない。


 それら数多の特徴を並べ立ててなお、水卜唯乃莉の有する『病』には到底及ぶまい。


 彼女は患っている。


 煩わしいほどに———煩わしいことに。


 患っているのだ。


 もはやそれは、彼女のアイデンティティと言っても差し支えないだろう。


 アイデンティティ———彼女らしさ。


 水卜唯乃莉らしさ。


 こんなことを本人に言ったところで、あの愉快な女子高生は、


「それは違うぞ。これはボクらしさではない。ボクだ。ボク自身なんだ」


 なんて知ったようなことを、知ったような表情で、知った風に宣うのだろうが。


 確固たる意志を持って、そんなかっこいいことを平気で言えるのが水卜唯乃莉らしさ———否、水卜唯乃莉なのだ。


 彼女自身なのだ。


 ここで一つ注釈を加えておきたいのは、この言からも推察できる通り、彼女は『病』ではあっても、決して『病弱』ではないということだ。


 これがこの話のミソであり、また手前味噌でもあるのだけれど、彼女は弱くない。


 水卜唯乃莉は弱くない。


 むしろ強い———強靭なのだ。


 当然だろう。


 何たって彼女は———水卜唯乃莉は、こうしている今も、たった一人で闘い続けているのだから。

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