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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

TS令嬢の断罪?

作者: キラ


「遅れちゃった」


ここは王国『ブリッタニア』の王城のダンスホール。

煌びやかな内装に、壁際にはシェフが腕によりをかけたご馳走が並んでいて超おいしそう。

中央では優雅な合奏団の演奏が聞きながら、紳士淑女が思い思いに楽しげに踊っている。


今日は王都学園の卒業ダンスパーティー。

本来は学園にあるダンスホールで開かれるけど、今回は卒業生にこの国の第一王子がいるので王城で開かれることになったっぽい。


第一王子タンスロット。

金髪の長い髪を後ろで束ね整った顔立ちのイケメン。

見た目がいいだけの基本おバカってボクは思ってる。

そのタンスがダンスホール中央を陣取り、ピンク髪の小柄な女の子と嬉しそうに踊っている。


アレがそうなのかな?

まぁ、もう遅いけどねぇ。

そんな事よりごっはんごっはん~。

目の前にある、果物の上に薄く切ったハムが乗っている物を一口。

おいしー。

まだ完熟しきっていない果物に、ハムの塩気がいいバランスでマッチしてお互いを引き立てている。


あ、これもおいしー。

クラッカーの上に白いクリーム状のチーズとプチプチした黒い粒が乗っている。

少量の粒なのに噛むと存在を主張するほど濃厚な味が口に広がる、もし粒のみだったら主張が強すぎるのかもしれないけど、それをチーズとクラッカーが見事に中和してくれている。

なんだろう、シャンパンが飲みたくなるなぁ。


そう思っているとスーッと執事服をきた男性がシャンパンを差し出してくれる。

ボクは無言で受け取り一口。

そしてサムズアップ!

執事服男はカイゼル髭も似合うしセバスチャン(仮)と名付けよう。

セバスチャン(仮)は嬉しそうに微笑むと一礼してスーッと消えていった。

あやつ出来る!


おぉ!あれは骨付きお肉!

最近家にいたせいで教育係がうるさいからできなかったけど、今日は手で持ち問答無用で噛り付く。

やっぱお肉はこう食べるのが1番美味しいよね。

口いっぱいに頬張りモキュモキュ食べていると、


「おい! パーシバル。よくこのパーティーに来れたものだな!」


さっきまで踊っていたタンスが怒声を上げながら後ろに来ていた。


「ン? ンンン ンンンンン?(ん? タンス どうしたの?)」

「食べながらしゃべるな!」

「ンンン。ンンン(ごめん。ごめん)」


片手をシュタッとあげて謝っているポーズを取ると、ピキッと青筋を浮かべてるや。


「ゴクンッ。っで、タンスどうしたの?」

「タンスと呼ぶな不敬だぞ」

「めんどくさいなぁ。タンスサマ、これでいい?」

「タンスロット様だ! タンスと略すなと毎回言っているだろ!」

「タンスロットサマー。っで?」

「ちっ! このベティ。ベティヴィヴィア嬢にあれほど酷いことをしておいて、よくパーティーに出席できたものだな!」


タンスの後ろには、先程踊っていたピンク髪の小柄な女の子が隠れながらこちらを睨みつけている。

柔らかそうなウェーブの髪がふんわりしている、身長は150cmくらいかな、女の子らしい体型をしてるね。

ボクの目線に気がついたのか、より強く睨みつけてくる。

おーこわっ。

可愛い顔が台無しだぞー。


「ベティちゃんっていうの? はじめましてかな? っで、ボクがこの子になにかしたの?」

「しらばっくれても無駄だ! 僕とベティの仲をやっかんだお前が、ベティの教科書を隠し、ドレスは破き捨て、あまつさえ先週階段から突き落とそうとしたではないか!」

「ううう。タンスロット様~」


あんなに睨みつけてたのに急に涙目になってタンスに抱きついてるベティちゃん。


「えー、なんでやっかむ必要があるのさー?」

「はぁあ? お前が僕の婚約者だからだろうが!」


そう、名目上はタンスの婚約者になっちゃってる。

公爵家長女パーシバル。

真っ黒で腰まであるストレートロングは艶々でさっらさら。

キューティクルは欠かせません。

つり目がちだけど整った顔立ちに、姫カットで可愛らしさをアピール。

よく育ったバストに、引き締まったウェスト、ほどよい大きさのヒップ。

ただ食事制限するだけでなく、よく食べ、よく運動して手に入れたこの身体。

紛うことなき美少女だよ。

美少女イエー!


だいたい、やっかむなんてありえないんだけどね。

ボクは前世の記憶持ちでその精神が強めに現れてるパターンだから、男であるタンスを好きになるはずない。

この世界の人はそこそこ前世の記憶持ちの人がいて、前世がこの世界の人もいれば、まったく違う世界の人もいる。

現世の性格が主な人もいれば、前世の性格が主な人もいる。

っで、ボクは異世界の地球という惑星の、日本という国の男性の記憶持ちだ。


前世はドルオタで、寝坊してライブに間に合わない!っと家を飛び出した瞬間、バナナの皮を踏んですっ転んで死んだっぽい。

そっから記憶がないから死因は確定だろうけど。

そして現世で3歳の時に家でバナナの皮を踏んで階段から落っこちて前世の記憶を思い出したのだ。

なんで公爵家の家にバナナの皮があったのかは今でも謎。

バナナコワイ。


そんな訳で男が恋愛相手になるはずがない。

え?男なのになんでそんな美少女なのかって?

ふふふ、ドルオタが最高の素材(じぶん)を無碍に扱えるわけがない。

これはボクが育てた! キリッ!


記憶が戻った時にいろいろはっちゃけたせいで家柄もあってタンスの婚約者にさせられたんだよね。

あの時はかなり抵抗したけど押し通されてしまった。

鳥肌を立てながらも「ボクはお父様と結婚するので婚約者なんて嫌です」攻撃もダメだった。

父には効果は抜群だったけど、母にはまったく効果がない攻撃だから、今思えばいろいろ愚策だったよ。

まぁ、後で父がこっそりお小遣いをくれたから鳥肌を我慢した甲斐はあったけど。


王妃なんていう世継ぎを生む為の職業になんて絶対なりたくなかったから、タンスに「名目上は婚約者にはなったけど、ボクは結婚はする気はないから王子が好きな人を自分で見つけて教えてね。そしたら婚約解消するから!」っと約束してタンスも了承してたはずなんだけどねぇ。

婚約後も年に数回会うくらいだったから基本放置してたからボクもアレだけど、これは覚えてないっぽいぞ。




「ふん、図星をつかれてだんまりか! ベティを陥れた罪は重い。よってその罪によりパーシバルとの結婚は破棄する! そしてベティヴィヴィア男爵令嬢と婚約する事をここに宣言する!」


私を指さしてポーズを決めてかっこつけてるけど、

ベティちゃんって男爵令嬢なんだ、王家が男爵家と婚約って無理じゃないっけ?


「たんすろっとさまー。いろいろツッコミたいところだけど、昔の約束覚えてる?」

「その婚約(やくそく)は今破棄しただろう!」

「あー、やっぱ覚えてないや。ほら、思い出して! 婚約した後に結婚する気がないから婚約解消する事の約束したでしょ」

「婚約……婚約解消……」

「……え!?」


なんかめっちゃベティちゃんが驚いてブツブツ言ってる。


「頑張って思い出して! Tancelot(タンスロット)サマーなら思い出せるよ!」

「えぇい、うるさいちょっと黙れ! 後さっきからタンスロット様の言い方がおかしくないか!?」

「キノセイデスヨー」


からかってるのがバレたー。


「クソッ! 昔……昔……あっ」

「思い出した?」

「僕に好きな者が出来たら婚約解消すると……」

「そうそう、それー」

「では何故ベティにひどい仕打ちを?」

「だからボクじゃないって、なんでボクがやったっていう事になってるのさ」

「学園での目撃情報がかなりあったんだぞ!」


目撃情報?


「それいつ頃の話だろう?」

「ベティが去年入学してから、この1年ずっとの話だぞ」


ベティちゃん1年生なんだ。ふむ、だからいろいろ乏しいわけだ。

いろいろ発育途中だねぇ。


「えー、ボク2年からほとんど学園には行ってなかったんだけど?」

「は? 行ってないってお前は何をしていたんだ」

「旅行」

「はぁあ!?」




前世の記憶のおかげで勉学の知識はバッチリだったから、元々学園にも行く気も通う必要もなかったけど、貴族は15歳になったら学園に入学しなければいけないとか言われて渋々入学はしたよ?

でも丸々3年間無駄にするのはもったいないから、学園長のお爺ちゃんを()()して、レポートでの単位の取得で授業を免除、節目の式には必ず出席するっていう条件を獲得できた。


式でお爺ちゃんに会う度に「こういうのは特例中の特例なんじゃよ!」っとグチグチ文句を言ってきて、期待するような眼差しを向けてくるんだよ。

()()が効きすぎちゃったみたい。 てへっ!


そんな訳で約1年で3年分の単位を取得、並行して冒険者登録してランク上げも頑張ったよ。

2年生になってからは各場所の名産品を目当てに長距離の依頼を受けてたから、学園どころかブリッタニアにすらいなかったんだよねー。

北の国の海の幸をふんだんに使った料理の数々、南の国の甘い果物をおしげもなく使ったデザートの数々!

今思い出してもヨダレが出てくるよ。


普通公爵家令嬢が気ままに旅行など出来ないんだろうけど、弟のカフェイン君が生まれて跡継ぎは確保できたのと、幼少の頃から剣や魔法とはっちゃけまくってたから、いろいろ諦めたっぽくてかなり自由にさせてもらってる。


元々の素質もあったんだろうけど、特に魔力面の育成に前世の知識が大いに役に立ったんだよね。

創作系の小説に異世界チート無双の話がゴロゴロあって、幼少の頃から~~をすると強くなるっという想像で書いたはずのものを片っ端に実験してみたら、どれもびっくりするほど成功して強化しまくり!

いやー、作家さん達の想像力はすごいね。尊敬だよ。




「テストや式がある時以外はほぼ他国にいたから、ボクが何か出来るはずもないんだけど」

「パーシバル様が直接やったわけではなく、きっと取り巻きに命じたんですわ」

「おぉー、さすがベティ。お前がやらなくても可能だぞ!」


どうだと言わんばかりに指を突きつけてるけど、


「いや、そもそもやっかむ必要がないんだからやる意味すらなくない?」

「うっ」

「大体取り巻きなんてボクにいないよ」

「……あっ。すまん」


ボクの周りを見て誰もいないことに、かわいそうな人でも見るような目線を送ってくる。

イヤイヤイヤイヤ。

卒業パーティーなのに1人で壁の花になってるこの状況は確かにそう見えるだろうけど、作れなかったんじゃなくて作らなかったんだよ!

入学当初は公爵家の権力に群がってくるゴミしかいなかったし、レポート作成などで忙しかったから、お茶会などは全部断ってたからね。

……友達とか出来ない子じゃないからね! ホントだよっ!?


「……」

「……」


なんか気まずい空気が流れてるよ。

王子(タンス)の騒動を遠巻きで見ていた他の卒業生や来賓も、こちらを見ながら「ほらアレが……」「あぁ、残念姫か」「お姉様好きです」「ママあれ~」「しっ!見ちゃいけません!」などなどヒソヒソと話してるし。


泣いていいかな?


悲しい気持ちになっていると、執事服男がスーッと横に現れハンカチを取り出してくれた。

セバスチャァァァァン(仮)。

本当に泣いている訳ではないけど、その場のノリでハンカチを受け取り涙を拭うふりをする。


「泣いてもごまかされないですわ! 先週、私を階段から突き落そうしとしたではないですか!」

「ベ、ベティ!?」


うわぁ、この子スゴイなぁ。

この空気の中続けるんだ。

タンスも狼狽えてるよ。


「私は見たのですわ。私を突き押した長い黒髪の女性の後ろ姿を!」


この国で黒髪は珍しいけど、それだけでボクと決めつけられてもねぇ。


「髪なんてウィッグでいくらでも変装出来ると思うけど、それに先週っていつ?」

「……先週の金曜日ですわ」

「あー、それこそボクじゃないよ。先週の金曜は王城にいたからね」

「え……」


ここ数ヶ月は勉強の為に実家で缶詰状態でいたけど、いろいろ目処が立ったから陛下に報告へ行ってたんだよね。


「そこで何を騒いでる!」


一同が声がした方を見ると、入り口に豪華な衣装をまといタンスをかなり渋くした感じの美丈夫がお供を連れ立っていた。


「陛下!」

「ち、父上!?」


男性は跪き、女性はカテーシーをする。

ボクは「よっ」っと小さく手を上げ、陛下が小さく頷くのを確認してからカテーシーをする。


「よい、皆楽にせよ。それでタンスよ。そこで何を騒いでおる」

「あ、はい。えっと、パーシバル嬢がこのベティヴィヴィア嬢を学園で数々の嫌がらせをしていたので咎めていました……」

「嫌がらせ……か、パーシバルよ。まことか?」

「いいえ。私には身に覚えがないことです」

「うむ、違うと言っているが?」

「陛下。嫌がらせの他にも私は階段から突き落とされそうになりました。タンスロット様は数々の罪によりパーシバル様との婚約を破棄して、私と婚約する事を宣言してくれましたわ!」

「ベ、ベティ!?」


婚約の所でタンスを見て顔を赤らめてるけど、逆にタンスは顔を真っ青にしてるぞ~?

王と王子の会話を遮るのもアウト、発言の許可もされてないのに喋りだしたのもアウトだっけかな。

王のお供達も「不敬だ」って騒ぎ出している。


「ベティヴィヴィアと言ったか?」

「はい! 陛下!」

「私はタンスに聞いておる。そなたは黙っておれ」

「ぴっ」


陛下の一睨みで震え上がるベティちゃん。

あー、あれ怖いんだよねぇ。


「それでどうなんだ?」

「えっと、あの……、その……」


しどろもどろのタンスくん。

はーっとため息を吐いて、陛下が右の手のひらを上げると、セバスチャン(仮)が現れ1枚の紙を乗せた。


「セバスチャン相変わらず早いな」

「勿体ないお言葉」


セバスチャンは陛下に一礼した後、下がっていった。

おぉー、セバスチャン(仮)はセバスチャンと言うんだ。

流石陛下わかってる!

皆に見えないように小さくサムズアップすると、陛下は小さく口角を上げた。


「ふむ、この者はケーワイ男爵家の令嬢か。盗難被害がある度にパーシバルのせいだと呟き。先週も1人で派手に転び、誰もいない方へ向かってパーシバルと叫んでいたと」

「ベ、ベティ?」

「タンスロット様。ち、違うの! こんなのおかしい……こんなシナリオ知らない! そもそもなんで悪役令嬢のパーシバルが学園にいないのよ! イベントを進める為にはこうするしかなかったのに……私はヒロインなのに、私がヒロインなのに!!」


髪を振り乱しベティちゃんが錯乱しててちょっと怖い。

でも、シナリオ、イベント、悪役令嬢、ヒロインなどの言葉で概ね理解できた。

陛下もちょっとビックリしてたみたいだけど、目を向ければコクンと頷いたから把握したみたい。


ベティちゃんは転生式ヒロイン症候群っぽい。

転生式ヒロイン症候群とは、前世の記憶と現世の記憶が混じってしまって、前世にあった小説やゲームなどの物語と、現世の世界が酷似していると思い込み、記憶を書き換え自分は物語のヒロインだと認識して行動してしまう。

この世界を現実だとは思っていない人が多く、結構無理な行動をしてやらかしちゃう人が多数いるんだよね。

転生者の間では有名な話。


そう、陛下も転生者なんだよね。

しかも前世でボクの親友だった。

世間って狭いね。




ボクが10歳の時、嫌々ながらもタンスに会いに王城へ行ったけど、お互いが無関心なので5分もしないで解散。

でもすぐに帰れるわけでもないのでプラプラと庭園を散歩してたら、茂みの奥から何やら声が聞こえて覗いてみると、2本の棒を持ち腕をぐるぐるまわしたりしながら「タイガー」やら「ファイヤー」など叫んでいた。

ヲタ芸だ!

そして妙なクセがあるけどキレッキレの動きに見覚えがある。


誰が踊ってるんだろうって顔を見たら「ブーーー」っと吹き出しちゃったのはしょうがない。

陛下なにしてんねんっ!


吹き出した声に気がついて、踊りをピタッて止めてこちらに振り返る。

ボクを見て一瞬かなり驚いた顔をしたけど、すっごい笑顔で近づいてくる。

笑顔なのに目の奥は笑ってないからあの時は超怖かったよ。


「君は確かパーシバルちゃんだったかな、どうしてここにいるのかな? 今は息子のタンスロットと会っているはずでは?」

「は、はい。先程お会いしてお別れしました」

「もうかい? 早いんだね」


ふむっと、手を顎に当て少し考えている様なポーズを取っている。


「ところで君はここで何か見たかい?」

「イイイ、イイエ。ナニモミテイマセン」

「うんうん。そうだね。何も見てないよね」

「ハ、ハイ」

「もし何かそういう噂を私が耳にしたら……」

「ナニモミテイマセン!!」

「よろしい」


10歳になんて笑顔向けてくるんだよ。

ちょっとチビリそうになっちゃったじゃん。


何も見ていない事にされたけど、見覚えがある妙なクセの踊りが気になってありえないと思いつつも陛下に質問したんだよね。


「陛下。……1つ質問よろしいでしょうか?」

「……いいよ。私に答えられることならね」

朝崎(あさざき)と言う名前はご存知ですか?」

「っ!? 何故君がその名前を!」


陛下がこれでもかってくらい目を見開いている。


(しば)と言う名前もわかりますか?」

「ま、まさか。柴くん?」

「です。久しぶり朝崎くん」

「マジかー!」


この場で話のもアレだからってことで王城に戻り、時間が許す限り話し合った。

どうやら朝崎くんもボクが死んでしまった日に亡くなったらしい。

ライブが終わり、目玉イベントの1つのアイドルとハイタッチをしてから帰宅するっという演目があったんだけど。

朝崎くんがハイタッチした後、後ろにいた人がナイフを取り出し奇声を上げながらアイドルに飛びかかってきて、咄嗟にアイドルに「危ないっ!」って抱きついて庇ったけど刺されてしまったみたい。

しかも刺されどころが悪かったみたいでその場で亡くなってしまったんだってさ。


朝崎くん曰く「推しメンの娘に抱きしめられながら逝けるなんて本望だったよ!」っと誇らしげに語ってた。


何それ格好いい。


「すっごい柔らかかったよ。しかもいいニオイだったなぁ」っとトランスしてた。


何それキモい。


朝崎くんの推しメンGカップだっけなぁ。


ボクなんてバナナの皮で死んだのに!って言ったら呼吸がおかしくなるほど笑われた。


解せぬ。




転生式ヒロイン症候群だとするとベティちゃんをどうしようか。

殺傷事件まで起こしちゃう人もいるなか、今のところ陛下への不敬と、ボクへの冤罪くらい。

陛下の方のは軽い罰になりえそうだけど、ボク本人の感覚としては正直実害はないに等しいからスルーでもいいんだけどねぇ。


ベティちゃんを見れば、目のハイライトが消え「愛しとタンスたんと両思いになれたのに……」「修道院エンドはイヤ……」「死にたくない……」などブツブツ呟いてる。

タンスたん、ワラタ。

ベティちゃんの中ではタンスはそんな扱いなんだね。

それでも本当に好きなんだろうなぁ。


そんなタンスたんはオロオロしてるだけ、なんか残念王子すぎるよ。

しょうがないボクが一肌脱ぎますか!


「タンスた……ごほん、タンスロット様はベティちゃんが好き?」

「はぁ? お前は何を言っている」

「いいから答えて」

「……あぁ、好きだ。ボクはベティを愛してる!」


ボクの問に訝しげだったけど、本気の視線を向ければ力強く返答してくれた。


「そっか。でも王族と男爵令嬢だと身分的にいろいろ無理だと思うんだけど?」

「わかっている。こんな騒動を起こすような人物は、将来この国を動かすには相応しくないだろう? パーティーの後にそう父上に釈明するつもりだったんだよ」


流石に卒業パーティーで断罪イベントみたいな事をするのはおかしいって認識はあったんだねぇ。

タンスはタンスで考えてたわけなんだ。


「いろいろ考えてたんだ。ボクを出しにして……ねぇ」

「本当にお前がベティに嫌がらせをしていると思いこんでいたし、……ソレはすまなかった」

「さして被害があったわけじゃないし別にいいよ~。まぁ、覚悟があった割には陛下が来てから狼狽えまくってるけどね?」

「う、うるさい! 急に来られて驚いてしまっただけだ」

「あはは、そういう事にしておくね」


息子の卒業パーティーでしかも王城で行えば、親である陛下は来るのは当たり前なのに来ないと思ってたあたりどっか抜けてるよね。

ベティちゃんとの話をしているのに、当の本人は目の光を消して一転だけ見つめて微動だにしてない。

心すら閉ざしちゃってる……!?


「ベティちゃん、おーい」


目の前で手をふりふりしてみるけど反応なし。

パンパンと手を叩いてみても反応なし。


「うーん、反応なしか。よーし」

「お、おい。何をするつもりだ」


タンスを無視して、ボクは目の前で手を合わせ魔力を込めながらゆっくり手を開き、勢いよく手を打ち鳴らす。


BAN!!!


手を打ち鳴らしたとは思えない大きな音がダンスホールに響き渡り、窓ガラスがビリビリと震えている。

こちらを窺っていた人達も音の大きさにビックリして耳を抑えているね。

そして音の大きさにボクもビックリしている……。

ごめん、力加減間違えたっ!


「耳痛いっ! え? な、なに?」


爆音のおかげでベティちゃんの意識が戻ってくれた。


「ベティちゃんにも質問するね」

「……なによ!」


あれ?「ですわ」口調じゃない。まさかキャラ付けでもしてたのかな。


「ベティちゃんはタンスロット様の事は好き?」

「好きだよ! タンスたんは『コイコイ』が出てからずっとアタシの押しキャラだったんだから!」


アタシとか言い出しちゃったし、こっちが素なんだろうなぁ。

でもタンスたんとか、押しキャラだったとかタンスに聞かせるのはまずくない?ってタンスを見れば、さっきの爆音のせいでまだ耳を抑えて呻いている。

あ、これは聞かれてない。 ナイスボク!

あまり大きな声で話すのも周りに聞かれちゃうしベティちゃんに近づいて内緒話だ。


「な、なによ」

「冷静になって聞いてね。ここはベティちゃんが言う『コイコイ』?の世界じゃないんだよ」

「え?」

「ベティちゃん前世の記憶があるでしょ?」

「なんでソレを……。まさかパシィーちゃんも!?」

「!」


パシィー呼びしてくる人は1人しかいないからビックルした~。


「あ、ごめんなさい。パーシバル様」

「あはは、別にいいよ~。そ、ボクも前世の記憶持ち。ベティちゃんは『コイコイ』っという世界に転生したっていう認識でいるよね」

「はい。違うのですか?」


敬語になった。

ちょっと落ち着いてきたのかな。


「その『コイコイ』がゲームか小説なのかはわからないけど、ここは夢物語の世界じゃなく現実なんだよ」

「現実……」

「この世界には結構前世の記憶持ちがいるんだけどね。その中に変に記憶が混じり合って前世の夢物語と、この世界での記憶を混同してしまって、同じ国や名前を知っていると錯覚を起こして『夢物語の世界に転生してしまった』と勘違いをしちゃう人がいるんだよね」

「そんな……うそ!?」

「それを転生式ヒロイン症候群って呼ばれてるんだけど、ベティちゃんも自分はヒロインだから何をしても大丈夫って思ってたんじゃない?」

「! ……はい。そう思ってました。じ、じゃー、アタシがした事って……」


過去いろいろやらかしちゃった事を思い出したのか青ざめちゃって泣きそうだ。

ボクはベティちゃんの頭を撫でながら。


「恥ずかしいことをしたって思うかも知れないけど、(やまい)みたいなものだから気にしない方がいいよ」

「あっ……」

「おい! パーシバル。それは僕のだぞ!」


ボクがニカッて笑った事で顔を赤くしたベティちゃんを見て、いつの間にか復活したタンスが抗議を上げてくるけど、撫で心地がいいのでスルーして頭を撫で続けていたらバーンとダンスホールホールの扉が開いた。


「パシィーーーー!!!」


闖入者をボクの名前を叫んだ後キョロキョロと周りを探している。


「ケイ!?」

「あ、いた!」


ボクを見つけると満面の笑みで駆け寄ってきたけど、ボクの手元を見て笑顔が消えた。

あ、ヤバイ。

さっと手を引っ込めると、ベティちゃんが「あっ」っと名残惜しそうに見つめてくる。

ヤメテ!


「ケ、ケイ。どうしたの? 今は国にいるんじゃないっけ?」

「パシィーが卒業するからお祝いにきたんだけど、パシィー ハ ナニシテタノ? ウワキ?」


ひぃ

ケイの尻尾がこれでもかってくらい逆立ってる。


「ウ、ウワキじゃないよ。ちょっと慰めていただけだよ!」

「フーン。鼻の下がかなり伸びてたよ?」

「伸びてないよ!?」


伸びてないよね?


「お、おい。パーシバル、この人は?」

「彼女はね。獣人国の第3王女のケイ。ボクの婚約者だよ」

「え? 婚約者!? あれ? 彼女は女性じゃ……」

「うん。女性だよ。獣人国って性別とかいろいろ寛容だからねぇ」

「寛容とかそういう問題!?」


彼女――ケイは。

真っ白な髪をボブカットにして頭には犬耳が生えている。

今は逆立っているけど、彼女自慢の尻尾はモフモフふかふかで触り心地は抜群!

プロポーションもボクに負けず劣らずのナイスバディで触り心地は……ゲフンゲフン。

彼女も超美少女!


旅行(いらい)で獣人国行った時に魔物に襲われているところを助けてから、懐かれて一緒に行動することが増えたんだよね。

一緒に行動していれば、あんな事やこんな事が起きるじゃない?

っで3ヶ月前に告白してOKをもらったんだよね。

それで彼女は一旦いろいろ準備の為に帰国して、ボクも獣人国の知識で抜けている部分もあったから実家で缶詰になって勉強してたって訳。

嫁ぐ感じで獣人国へ行くので、先週王城に行ってたのも陛下への報告だった。




でも、今いろいろピンチです!

誰か助けて!

あ、セバスチャンと目があった。

彼ならいい案が……、目を逸らされた。

セバスチャァァァァァァン!?


「3ヶ月も会えなくて、あたしは寂しかったのに……」

「ケイ……。ゴメンね。でも、浮気な訳ないじゃない。ボクが好きなのはケイだけだよ?」

「ウソ! 信じられない!」

「どうしたら信じてくれる?」

「……キスして欲しいなぁ」


そんな潤んだ瞳で見つめられては我慢なんて無理!

ボクはガバって抱きつき濃厚なキスをする。


「……ッ、ァン! ……ゥッ……。……ダメッ! ……アッ!」


キスをしながら尻尾の付け根をワシャワシャと撫で回すと、ケイから艶めかしい声が漏れちゃってる。

チラッと周りを見ると男子諸君が前屈みになっていたり、手で顔を覆いながらもちゃっかり指の隙間から凝視している女子も多数いる。

「ママー見えないよ」「み、見ちゃいけません!」ってやり取りも聞こえてきた。

あー、子供もいたんだった。

ゴメンね! でもママさん貴女は凝視してますね!


1分以上は続いたキスを終えると、ケイは腰に力が入らないのかボクにもたれかかっている。


「……しゅき」


目ハートにして尻尾をブンブン降っている。

よし! 危機回避。


「おおおお、お前はこんな所で何をしているんだ! 破廉恥だぞ!」


前屈みになりながら抗議してくるから格好がつかないね。

その傍らでベティちゃんが顔を真っ赤にしながら「いいなぁ」って言いながらタンスの腕を抓ってる。


「はぁ、本当にお前は何をしている」


あ、陛下だ。


「あー、アハハハ」

「まぁ、よい。獣人国第三王女ケイよ。よく参られた」

「しゅきしゅき」

「…………」

「ケーイ! おーい」


手をふりふりするけど目はハートマークのまま。

ダメだ。

まだ骨抜き状態だ。


「ま、まぁ、よい。気がついたら、ゆっくりしていってくれと伝えてくれ」

「わかりました」

「タンスロットよ」

「はい」

「獣人国からパーシバルを王女が嫁に欲しいという打診があってな、お前の婚約者ではあったが私の独断で解消したが問題はないな?」

「!? はい、ありません」

「本来ならお前に確認してからが筋だろうが、学園での行動を耳にして言う気も失せた」

「……っ」


チラリとベティちゃんを見てため息を吐いている陛下。


「先程の宣言は本心か?」

「……はい。僕の様な者が国を動かしてはいけないでしょう。僕より弟のドリフスタンの方が相応しいかと思います」

「その者の為に地位もいらないと?」

「はい!」

「……タンスロット様?」


陛下の問に力強く返事をしているけど、話の内容に困惑気味なベティちゃん。

さっき話聞いてなかったもんね。


「分かった。お前の処遇は追って伝える。皆の者騒がせたな、このまま卒業パーティーを楽しんでくれ」


そう陛下は言うとダンスホールを後にした。


「ベティ。僕は多分王子ですらなくなると思うけど、僕についてきてくれないか?」

「はい。王子とか関係ないです。私はタンスロット様が好きなのですから」

「ベティ!」

「タンスロット様!」


2人は抱き合い口付けを交わしてる。

そんな2人を見て、わぁっと会場が湧いた。


「いろいろ不甲斐ないと思うけど、これからも僕が君を守るから!」

「うふふ。タンスたんとキスしちゃった。タンスたんどっかぬけてる所あるからアタシがしっかりしないとね!」

「ベティ!?」

「あっ、タンスロット様!?」


あはは、気が抜けてポーっとしながら素が出ちゃってるベティちゃんの一言でタンスが崩れ落ちちゃってるや。


「あの女狐本当にパシィーの浮気相手じゃなかったんだね」

「ケイ!?」


表情や尻尾も普通だし何気ない一言だろうけど心臓に悪いよ。


「さっき陛下がゆっくりしていってだってさ」

「へ? 何時!? どうしようあたし挨拶してない」

「大丈夫だよ。後で会わせてあげるから」

「うん? うん、わかった」


ニヘラ~って笑うケイが可愛すぎる。

ボクの嫁が可愛すぎる件について!

きっと今日は王城に泊まる事になるだろうし、この後めちゃめちゃモフモフしちゃう。


今日はなんだかんだでいろいろあったけど、タンスとベティちゃんは結ばれたし。

ボクも後数ヶ月には嫁入りだし、ハッピーエンドかな?


え?結婚という人生の墓場へようこそだって?

あはは、こんなに幸せな気持ちなのにそんな事あるわけないじゃないかぁ。









……そんな事ないよね?



お読み頂いてありがとうございました。

もし良かったら感想や評価などしてもらえると喜びます。


流行りの断罪を書くつもりだったのですが、思った以上に断罪が難しくてこうなりました。

ギャグ調になっていったので名前も円卓の騎士からちょっとモジッて使いました。


ブリタニア → ブリッタニア

アーサー → アーザー

ランスロット → タンスロット

ガウェイン → カフェイン

トリスタン → ドリフスタン

ベディヴィア → ベティヴィヴィア

パーシバル → 変化なし

ケイ → 変化なし


18/06/08 誤字脱字が多すぎるのでいろいろ修正しています。

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